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英語教育関連本・教材レビュー

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最新語用論入門12章

2010年3月01日


最新語用論入門12章
今井邦彦 編
ディアドリ・ウィルスン/ティム・ウォートン 著
井門 亮/岡田聡宏/松崎由貴/古牧久典/新井恭子 訳


A5判 242pp.
本体 1,800円
大修館書店

関連性理論の名講義!

本書には、通常の翻訳書なら標題紙の裏にある原著の書誌情報がない。編者のまえがきによれば、本書は原著者のロンドン大学での「内部用教科書」がもとになっており、この分野の最新の修正や発展も盛り込まれた、最先端の語用論の議論を知ることができる内容になっている。

邦題のように『入門』でありつつも、特に関連性理論の近年の発展が、この理論が乗り越えてきた様々な理論との対比とそれらへの批判という構成でわかりやすく(関連性理論の難解さそのものは措くとして)論じられている。原著者は、スペルベル(Dan Sperber)と共に関連性理論を創始したウィルスン(Deirdre Wilson)とその弟子ウォートン(Tim Wharton)で、Wilson, “Pragmatic Theory”、“Issues in Pragmatics”、Wharton, “Logic and Meaning”という3つの授業の記録とのことである。公刊されていないものであることも本書の魅力だ。

とはいっても本書を構成する12章には、講義録の断片の寄せ集めという印象はない。もっとも原初的なコミュニケーションのレベルから説き起こし(第1章の「動物のコミュニケーションと人間のコミュニケーション」など)、語用論の問いの本質(第2章「語用論の本質と目的」)、長く語用論の基盤とされてきたグライス(Paul Grice)の語用論(第3章)などを経て、柔軟性と一般性を旨とする関連性理論の基本的な考え方が示されていく。問いに対する解決の提案、さらにそれへの問い、そして解決案と繰り返される流れは、一つ筋の糸をたどっていくようでもあり、またそれが小気味よい。第4章「認知的関連性の原理」、第5章「伝達的関連性の原理」、第7章「明示的意味と非明示的意味」などと、交通整理された語り口は、そのまま原著者らの講義の様子をうかがわせるようだ。

第8章以降は、本書の特徴の一つと言える「語彙語用論」が展開されている(第8章「語彙意味論へのアプローチ」、第9章「概念とカテゴリ化」、第10章「語彙的縮小」、第11章「語彙的拡張」、第12章「概念の転嫁的用法」)。語のレベルで意味論と語用論の区別が体系的に研究され始めたのはせいぜい2000年頃からだというから、まさに最新の分野である。語の意味の古典的な見解への批判から、プロトタイプ効果の問題点の指摘まで、認知言語学に関心の向きにも興味深いものだろう。

議論は一貫してグライスとの対比、その批判という形で展開しているので、協調の原理を知るものには、それと関連性理論との相違点が明確で、より興味を引かれるにちがいない。あとがきに、さらに最新の理論にふれられるように、原著者ほかのウェブサイトがあげられているのも役に立つ。

(慶應義塾大学教授 井上逸兵)


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出典:「英語教育」2010年3月号(大修館)
From "The English Teacher's Magazine" March 2010 Vol.58 No.13 (Taishukan)



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