英語教育関連本・教材レビュー
注目の英語教育関連本・教材のレビューを毎月掲載。
田中武夫/田中知聡 著
A5判 272pp.
本体 2,200円
大修館書店
意味の潜在性を探る発問の意義
国語教育における読みの実践で支配的な役割を果たしているのは、二読法(通読→精読)と三読法(通読→精読→味読)であるが、英語教育では、精読(段落を中心に文章を分析的または総合的に読む)までは意図していても、味読(筆者の意図との対話・対決を図る)までは、通常、及んでいない。その主因は、学習者側の(1)(2)と、指導者側の(3)にある。
| (1) |
テクストを読む内発的な目的や関心が希薄である。 |
| (2) |
意味の手がかりを認識する言語知識やその背景にある社会文化的知識が脆弱である。 |
| (3) |
テクストの言語形式の指導に主力を注いで、文脈における意味の評価と交渉を付随的にした結果、語用論的真義(pragmatic value in context)を推論する認知的活動を促す発問が貧弱である。 |
英語教育において「発問」に期待されることは、(3)の活性化で、それにより味読の域に迫ると同時に、(1)(2)の欠陥を埋め、内発的動機づけを高め、正確な言語知識の習得に資することである。
本書の傑出した特徴は、ア)「生徒が違えば授業も異なる」ことを踏まえた上で、イ)「どのような指導をすれば、生徒は教材に興味を持ち、正しく理解し、深く思考し、自らの考えを豊かに表現しようとするか」という指導上の悩みに応えることを意図し、ウ)発問を「生徒が主体的に教材に向き合うように、授業目標の達成に向けて計画的に行う教師の働きかけ」と定義し、エ)「発問」を中心にすれば授業が変わることを、100に余る適切な例題を主として高校教科書から選び、問題提起と解説を行い、オ)種々の指導モデルとテクニックによって、特に、情報を深く処理するために必要な、①読みの指導の展開ごとのポイント、②主体的な関わりを生み出す発問作りのポイント、③導入、理解[1、2]、思考、表現の5段階による指導のモデルについて、懇切丁寧に解説している点である。
近来の英語教育は、「役に立つ英語」という言語の外的機能を強調し、その基底に必要な思考・認識という本来的機能を軽視してきた。この時流に警鐘を鳴らすかのように、上記(3)の推論とその根拠・理由の説明というコミュニケーション活動を促す発問が、言語形式への意識的気づきやその背後に伏在する意味の潜在性の探求だけでなく、結果的に、テクストの入念な推考と反復精読、記憶保持や価値表明を促し、(2)や(1)の改善に繋がる見通しがあることを力説する信念や熱意に感嘆せざるをえない。
老婆心ながら、発問はテクストと読者間の相互作用によって生まれる解釈を求めるものであるから、一方向的な送信型を表す Nuttall の図の引用(p.34)は適切でないことだけを付記しておきたい。
(兵庫教育大学名誉教授 青木昭六)
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出典:「英語教育」2009年10月号(大修館)
From "The English Teacher's Magazine" October 2009 Vol. 58 No. 7 (Taishukan)
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