英語教育関連本・教材レビュー
注目の英語教育関連本・教材のレビューを毎月掲載。
金谷 憲 編集代表
青野 保/太田 洋/馬場哲生/柳瀬陽介 編集
A5判 386pp.+DVD
本体3,800円
大修館書店
授業に特化した待望のハンドブック!
英語教育において重要なことは、理論と実践の融合である。「何故?」に対する答えのない実践は信頼に乏しい。かと言って、理論の追求だけでは教育現場の抱える問題に答えることはできない。評子の恩師である田中正道先生(広島大学名誉教授)は嘗て、「理論を教育現場に当てはめるのではなく、教育現場の抱える諸問題を解決するために理論を応用するのです。本当の研究課題はあなたの職場の中にある」と仰って、子どもの存在を忘れそうになって理論に走る私を諭された。本書を一読して思ったこと。それは、提案する実践例のひとつひとつの背景に子どもの存在が感じられること。そして子どもが発達上、あるいは環境上陥るであろう問題を知った上で、なおその問題を解決するために行われてきた数々の実践の裏付けがあること。さらに最新の理論研究の成果と情報にも言及していること、などである。執筆された方たちは、実際は恐らくこの数倍の実践例をお持ちのはずである。
本書は、授業に直接役立つことに焦点をあて、なお英語教育に関するさまざまな情報をも読者に提供する「英語授業ハンドブック」であり、なんでも網羅する「英語教育ハンドブック」ではない。構成は、第1章「入門期の指導」、第2章「基本の授業パターン」(I1レッスンを1時間で扱う授業、II文法導入を中心にした授業、IIIリーディングを中心にした授業、IV活動を中心にした授業)、第3章「指導技術」(I全般、II発音/文字、III文法、IV語彙、Vリスニング、VIリーディング、VIIスピーキング、VIIIライティング)、第4章「文法指導のアプローチ」(文法解説の役割、限界、工夫は秀逸!)、第5章「評価」、第6章「教材・教具」、第7章「クラスルーム・マネージメント」、そして、第8章「自立的学習者に育てるための工夫」の全8章からなる。
さらに、収録時間2時間7分に及ぶ附属DVDがついていて本書の大きな特色のひとつになっている。「授業は生き物である。言葉による説明だけでは授業はどうしてもわかりにくい。教師のちょっとした仕草や、言葉の間などで同じ指導案に基づく授業でも、教える人によって、実際に受ける印象は天と地ほどの違いが生じてしまう。」(まえがき)このギャップを埋めるため、特に第3章「指導技術」の内容をふくらませた収録が行われているが、その狙いと願いは見事に映像に結実していると思われる。読者は、改めて中学の英語の授業はいかなるものであるべきかを、本書を読むことで、また DVD を視聴することで理解し得るであろう。本書を読了した読者がこんどは自分自身の授業を創造されんことを祈りたい。
(青山学院大学大学院教授 木村松雄)
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出典:「英語教育」2009年6月号(大修館)
From "The English Teacher's Magazine" June 2009 Vol. 58 No. 3 (Taishukan)
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