英語教育関連本・教材レビュー
注目の英語教育関連本・教材のレビューを毎月掲載。
萩野俊哉 著
四六判 248pp.
本体1,800円
大修館書店
英語教師魂が生んだ実践の書
近年、学習指導要領が改訂されるたびに必ず「コミュニケーション」という言葉が盛り込まれる。英語教育も言語教育の一つである以上、それは当然のことではある。
しかし、文法指導が片隅に追いやられてしまっているような感覚を持っているのは、私だけだろうか。「文法は、どこかで誰かが教えてくれている」という幻想のもとで、コミュニケーション能力育成のための英語教育が論じられている傾向はないだろうか。
私は、4技能(「聞く・話す」の2技能だけではない)にわたるコミュニケーション能力の基礎となる文法指導をやりきることこそ高校英語教師の最大の責務だと思っている。
このように言えば、膝をたたいて同意してくださる同志の先生は多いと思うが、ここで我々に立ちはだかる大きな問題がある。それは「4技能のコミュニケーション能力育成のための文法指導はいかにあるべきか」ということである。
この問いに対する明確な指針が本書にはある。著者の主張は次の諸点にまとめることができるだろう。
【その1】学習英文法の再構築に資する言語学の新知見を吸収すること。「昔教えられたように教えて」いてはいけないのである。
(例1)二重目的語構文について(pp.15-16)
(例2)受動態の教え方(pp.48-51)
(例3)疑問文の持つ「発語内行為」について(pp.139-141)
【その2】各文法項目の指導においては、パッチワーク的な細切れの知識を教え込むのではなく、できるだけ全体を統合する概念に気づかせること。
(例1)現在時制の用法について(pp.31-32)
(例2)不定詞3用法の区別の必要性(pp.55-58)
(例3)時制の一致(pp.142-144)
【その3】丸暗記を強いず、理屈を解きほぐす。
(例1)may [might] wellとmay [might] as well (pp.40-42)
(例2)比較級に否定語が付く表現(pp.88-90)
(例3)thatの働き(pp.156-158)
【その4】十分な量の意味のある練習を行わせること。
(例1)原級比較の伝える意味(pp.93-96)
(例2)仮定法の表現に慣れさせる方法(pp.120-122)
学習指導要領がどれだけ変わろうとも、コミュニケーション能力育成のための文法指導の必要性は絶対譲れない、守らなければならない、という信念を持ち続けて「日々己の魂の炎を燃や(著者のまえがきの中の表現)して」おられる先生方にとって、本書は心強い味方だ。私自身、本書を手にし、さらに調べてみたいことがいくつも出てきた。巻末の「参考書目」を頼りにまた忙しくなりそうである。
(京都府立嵯峨野高等学校教諭 加藤治之)
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出典:「英語教育」2009年2月号(大修館)
From "The English Teacher's Magazine"
February 2009 Vol. 57 No. 12 (Taishukan)
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