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英語教育関連本・教材レビュー

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多民族社会の言語政治学英語をモノにしたシンガポール人のゆらぐアイデンティティ

2007年5月15日


多民族社会の言語政治学 英語をモノにしたシンガポール人のゆらぐアイデンティティ
奥村みさ/郭俊海/江田優子ペギー 著
A5判 180pp.
本体2,200円
ひつじ書房

シンガポールの悩み


国際社会学、アジア英語圏文化研究、日本語教育、バイリンガル教育、社会言語学、言語政策、そして英語教育を専門とする3名の研究者が多様な視点から著したシンガポールのバイリンガル政策と人々のアイデンティティに関する著作である。建国40年余りのシンガポールの経済発展に大きく寄与してきた英語教育を通じた人づくり政策(光)を賞賛するのみならず、バイリンガル政策がシンガポール人にもたらした文化的アイデンティティの不安定化と不明瞭化(影)にも焦点を当て、悩めるシンガポールをも浮き彫りにしている。

本書は2部構成で、第1部「シンガポールのバイリンガル政策」では、まず公用語のうちの英語と華語(マンダリン)の教育を中心に、シンガポールの教育システムを解説している。さらにその言語政策との関連において、シンガポールの英語史をなぞり、英語と華語の競合、シングリッシュの是非、"Speak Good English Movement" など、今日のシンガポールでの英語の位置づけを知るのに不可欠なトピックを紹介している。

第2部「言語とアイデンティティ」では、シンガポール人の民族的・言語的背景、英語とアイデンティティ、そして華語とアイデンティティという3つの観点から、シンガポール人とは誰であり、どのような言語を話す人々であるかを探る。まず、大学生へのインタビューを中心に、彼らの家庭内の言語使用状況や言語使用観を追究する。続いて、シンガポール国立大学の大学生に対する英語使用の姿勢に関するアンケート調査から、英語使用がもたらした若者の西洋化とシンガポールへの帰属意識の希薄化を指摘する。さらに、シンガポール華人の方言の犠牲の上に普及した華語であったが、現在、華人家庭におけるその地位が低下していることを通じ、若者の西洋化を再度、特記している。エリート教育、功利主義や実用主義などの前に、華人の保護者は華語を犠牲にしても子どもたちに英語を選択する傾向が強いのである。

シンガポールはESL国であるから、英語教育が成功しても当然のこと、日本のモデルにはならないという考え方があるが、本書はシンガポールから英語教育を学ぼうと呼びかけているわけではない。日本の英語教育が改善され、英語に堪能な日本人が多く生み出されることになれば、文化的アイデンティティにも変化が生じるのではないかという懸念の意味で、日本人も無関心ではいられないと呼びかけているのである。

読み終えて1つ残念に思ったことは、シンガポール人の多言語使用を語る際に、何か国語話す、という表現を用いていることである。1つの国と1つの言語を結び付けられるなら、本書は成立しなかったはずであるから。

(東洋英和女学院大学教授 竹下裕子)

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出典:「英語教育」2007年5月号(大修館)
From "The English Teacher's Magazine" April 2007 Vol. 56 No. 2 (Taishukan)




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