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英語学習におけるトレーニングの重要性

広島修道大学教授
山田雄一郎
Yamada Yuichiro
   
「英語教育」2008年10月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" October 2008 Vol. 57 No. 7 (Taishukan)

トレーニングの重要性

トレーニング(なかでもドリル、すなわち反復練習)は、言語学習の基本である。言語は、発音、語彙、構文法のルールを理解した上で、個々の項目について何度も繰り返して練習しなければならない。同じ単語を書き、発音し、辞書を引き、テキストを読み、聞いたものを書き取るといった地道な作業をのべつ繰り返す必要がある。

もちろん、教師はそのようなことはよく承知している。学習者も、たいていは感づいているはずだ。ただ、どんな練習をどこまで続ければよいのかとなると、誰も正確な答えを知らない。そして、それが迷路への一歩となる。なぜか。それは、誰でも手早く成果を手に入れたいからだ。目標ははっきりしている。その善し悪しは問わない。曰く、入試に合格したい、会話ができるようになりたいと。

このように、目標がはっきりしているがそれに至る道筋が見えない場合、手段は直接的、短絡的になりやすい。「出る単」式の勉強や受験問題集を「解く」ことに精を出すのがそれだ。会話本を片手に定型表現を覚えるのもその1つだ。それでは心許ないと会話学校に行き、さらに高じてアメリカやイギリスへ語学留学に出かけるのも同類だ。どれも、迷路の出口を探して懸命なのだ。

ただし、目的と手段を混同したこのような方法が功を奏することは少ない。それは、手段の短絡性と関係がある。この項の最初に述べた通り、言語の学習はドリルによって支えられる。そして、目的あるいは結果に直接結ぼうとする上述の方法は、残念ながらトレーニング、とくにドリル型訓練の軽視につながりやすい。それは、このような手段に頼ろうとする学習者の多くが、即効的な方法として「暗記」を選ぶからである。

暗記はドリルの対極にある。ドリルは理解を前提とした反復練習である。暗記は反復練習ではない。一度で覚えてしまうのが理想である。一度では無理でも、できるだけ早く呑み込んでしまうのが暗記上手というものだ。ドリルは結果に至る無数の過程をつなぐ作業である。暗記は結果に直接手を伸ばし、あわよくばすぐにもそれをもぎ取ろうとするものだ。だから、過程に手間暇かけるのを嫌う。

このあたりまで来ると、英語は覚えなければどうにもならないではないか、という反論が現れても不思議ではない。単語は覚えるしかない、英語は覚えて使うのが一番だというのは、その通りである。問題は、どうやって覚えるかである。

結論を言おう。覚えるのは結果であればよい。優先されるべきは、4技能を中心にした反復練習である。ルールを理解した上で十分に訓練すれば、記憶は結果として生まれる。それは身体で引き受けた記憶だから、定着は本物だ。

もう一度、繰り返す。記憶は訓練の結果であればよい。対象を覚えることに腐心すれば、暗記型の学習になりやすい。それで取りあえずの結果は得られるかもしれないが、訓練を軽んじた学習はどこまでも付け焼き刃である。実際のコミュニケーションに必要な応用力や判断力、瞬発力は期待できない。それに、記憶はやがて薄れていく。その維持エネルギーが膨大でやがて支えきれなくなることは、われわれの経験に照らすまでもない。

どんなドリルがよいのか

ドリルが重要だとして、ではどんなドリルがよいのかとなると、意見は分かれる。ドリルの形式や中味は、何を目標にするかによっても変わってくる。だから、英語力を育てるためのドリルはこうあるべきだと述べたところであまり意味がない。しかし、話は具体的でなければわかりにくいので、私自身が開発中のドリルの特徴を紹介し、みなさんの判断の参考にしていただこうと思う。

私が考えているのは、「英語力を育てるための完成型ドリル教材」である。完成型とは、全体として基礎的な知識や技能が次第に積み上げられていくように作られた教材という意味である。英語の知識の全くない人でも、これを順次消化すれば、必要な英語技能があらかた身につくようになっている。だから、言語材料の中身と配列は、例えば中学校の検定教科書の内容とは直接関係がない。私の教材では、現在の中学校では扱われない仮定法や分詞構文も取り上げている。英語の出入力チャンネルを育てるために必要だと私が判断したものはすべて組み込まれている。それらを細かく述べる余裕がないので、以下(1)〜(5)の特徴記述でおおよそを想像していただきたい。ドリルの実例(部分)も1つ示しておく。
完成型ドリルの例(1)

(1) 形式:ディクテーション
(2) 導入語数:約5000(組み合わせて利用するため、実質は約7000〜8000)
(3) ドリルの配列:文字→単語→単語の組み合わせ→文→文の組み合わせ
(4) レッスンの総数:280余
(5) 各レッスンの所要時間:10〜15分

以上は、英語力を育てるためのドリルの話である。繰り返すようだが、学校英語教育はあくまで基礎教育だ。それは、より高いものを目指して飛び立つための土台作りの場でもある。その点からすると、われわれのまずなすべきは、「基礎の何であるか」を見極めることである。開発中の教材は、そのための小さな試みにすぎない。

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「英語教育」2008年10月号


英語教育の最新版
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【特集】授業で鍛える英語の「基礎体力」

英語を身に付けるためにまず大事なのは、基礎的な訓練を「体で覚える」まで行うことである。学校教育の現場において、限られた時間の中で、個々の生徒の学習意欲を持続させつつ、継続的な訓練を習慣づけるにはどのように指導すればよいのか。入門段階を中心に、中級以上の学び直しも含めて、「英語の基礎体力」の訓練法を提案。

英語学習におけるトレーニングの重要性
山田雄一郎
楽しく、たくさん、自分のことを書いてみよう ―自主的な学習につなげる工夫
柏村みね子
ふうけもん流「話すための基礎体力作り」
大坪久子
音読指導のバリエーション ―「考える音読」と「虫食い音読」で知識を技能に
久保野雅史
動作や作業を利用したTPRによる語彙学習
清水一郎
「聞く力」を高めるための毎日のトレーニング
小林美代子
読書力は総合力 ―「英語を読むこと」への抵抗をなくすために
高瀬敦子
リーディング・ストラテジーを意識した読解の訓練
藤田 賢

[コラム]
基礎体力増強のための「サーキット・トレーニング」
原田康也
心も体もはずむ気持ちで、業間エクササイズを取り入れよう!
鞠子佳香

■英語教育時評
■アノ先生・ヒロ先生の日々の授業にひと工夫
■日本の英語教育200年<新連載>
■木綿子先生の小学校・英語活動のお悩みQ&A
■<リレー連載>進化する学習者コーパス
■英語教育 ここだけの話

◆ワシントンDCで活躍するプロフェッショナルたち
◆Notes from a Small Island
◆ミュージカルを深読みする
◆映画で英語
◆イギリスのしたたかな女たち
◆アングロ・サクソン文明落穂集
◆今月の時事英語


大修館よりオススメの新刊

英語教育2008年10月増刊号 ―授業に役立つ英語教師のツールボックス

英語教育2008年10月増刊号
―授業に役立つ英語教師のツールボックス

1,500円(B5判・128頁)
英語教師が授業で、HRで、課外活動で、さらには日常の生活で直面するさまざまなテーマについて、役立つデータや知識をすぐに使える形で提供。先生方がいつも手元に置いて、ぱらぱらめくれば何かしらヒントが見つかり効率よく仕事を進められる……そんな頼りになる「道具箱」のような一冊。


【特集I】授業に役立つ英語教師のツールボックス

<教室の活動に役立つツール集>
身近な道具を授業に活かしたい
(阿野幸一/
太田 洋)
「生徒が燃えるディベート」を授業でやりたい ―決まった表現を使えば誰でもディベートができる
(梁川寿美子)
英語の発問で授業に生徒を引き込みたい
(田中武夫)
生徒に英文をたくさん読ませたい
(神田みなみ)
英語の綴りと音の関係を知りたい
(川越いつえ)
英語で口慣らしをしたい ―5分でできる活動集(1)
(加藤京子/
松永淳子/
松下信之)
授業を活性化したい ―5分でできる活動集(2)
(加藤京子/
松永淳子/
松下信之)
教室を落ち着かせたい ―5分でできる活動集(3)
(加藤京子/
松永淳子/
松下信之)

<役立つ英語のフレーズ集>
いろいろな英語で生徒をほめたい・諭したい
(田口 徹)
英語で生徒に指示を出したい
(田口 徹)
英語レター、Eメールを書きたい
(阿部 一)
英語教師としてこの諺・名言は知っておきたい
(真野 泰)
海外旅行前にこのフレーズを生徒に覚えさせておきたい
(粂原京美)
クイズで身近な英語表現を身につけたい
(小山内 大)
若者ことばを英語で言いたい
(金子 靖)

<英語教師として知っておきたいツール集>
教材に使える画像・資料をみつけたい
(野澤和典)
教材に使える音声・動画・スクリプトを探したい
(朝尾幸次郎)
文法・語法の疑問を解決したい
(西澤正幸)
英語教師としてこの本は読んでおきたい ―プロ英語教師のための英語学習の活力源
(田邉祐司)
エクセルの関数を使って成績処理をしたい
(濱岡美郎)
エクセルを使って実験データの処理をしたい
(濱岡美郎)
メディアを英語の授業に役立てたい
(野澤和典)
『英語教育』を読むための基礎用語を知りたい(1)英語教育一般
(村野井 仁)
『英語教育』を読むための基礎用語を知りたい(2)英語の授業関連
(村野井 仁)

<コラム:リスト作成のためのテクニック>
オリジナル「英語基本例文集」を作成したい
(明石達彦)
オリジナルWord Listを作成したい
(武井 修)


【特集II】2008年度の英語教育 総括と展望
英語教育日誌[2007年4月〜2008年3月]
(伊村元道)
英語教師のマルチメディア教材活用法 ―ネットワークを活用した外国語学習の現状と小学校英語教育におけるマルチメディア
(柳 善和)
2008年度入試の特徴とその対策
(鈴木貴之)
英語教育図書 ―今年の収穫・厳選12冊
(柳瀬陽介)


■特別記事・英語教育への提言
小学校英語学習者の追跡調査と小・中英語教育への示唆(日本児童英語教育学会(JASTEC)関西支部プロジェクト・チーム)


■資料
『学習指導要領(案)』への要望書 (日本外国語教育改善協議会)
英語教育関係刊行図書一覧
英語教育関係学会・研究会案内
英語関係書・教育書発行所一覧



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