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ネイティブ教師向け
英語学習におけるトレーニングの重要性
広島修道大学教授
山田雄一郎
Yamada Yuichiro
「英語教育」 2008年10月号(大修館)→
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From "The English Teachers' Magazine" October 2008 Vol.
57 No. 7 (Taishukan)
人は、自分の母語については無意識にこれに対処する。誰もそれをどのようにして身に付けたかを説明できない。母語は、人から教わるものではない。音韻規則も構文規則も、一つひとつの単語の使い方や組み合わせも、全て自ら発見するのだ。
比べて、第二の言語の場合はどうだろうか。母語と同じようにとはいかないまでも、母語に次ぐ環境に置かれ、いつのまにか2つめの言語を習得する子どもたちもいる。もちろん、それがその社会の通用言語であることが前提だ。
では、自分たちの社会で用いられていない言語を学ぶ場合はどうだろうか。言うまでもなく、われわれの英語学習はこれにあたる。そしてそれが簡単な作業でないことは、たいていの人が経験を通して知っている。
言語能力の獲得と維持
かつて拙著『英語力とは何か』(大修館書店、2006)で、平均的な日本人が上級レベルの英語力を獲得するには、毎日5時間、週あたり30時間の勉強を44週続けなければならないという話を紹介した。それも、専門的な指導者、テキスト、指導法、学習意欲などの条件がそろってのことである。
もちろん、これを学校での英語教育と比べるつもりはない。ただ、この話は示唆的である。その内容が学校英語教育の限界を示していることは明らかだが、同時にそれは、学校英語教育のあるべき姿について考える手がかりにもなっている。
もう3年も前のことである。ダラム大学(イギリス)のM.バイラム教授がある講演で、「学校だけで全てがまかなえるわけではない」という主旨のことを述べられた。言語学習は、教室で教師と生徒が向き合う時間だけでは完結しない、社会の後押しがなければならない、という意味だ。
当然ながら、日本にはその環境がない。それでも近頃は、「日本人の英語力云々」と国民総動員的な議論が喧しい。バイラム教授は、日本人全体に期待できる英語力は、ヨーロッパの共通参照枠(CEFR)にあてはめてA2くらいと予想した。A2とは、「ごく身近な事柄についての文章や使用頻度の高い表現であれば理解できる」程度の力である。世界と渡り合うには、いささか心許ない能力である。これが、日本との比較で取り上げられたデンマークの場合だとC1、つまり「かなり複雑な話題について、自分の意見を言葉に詰まることなく述べることができる」ようになるとも言われた。
この話を聞いて、「A2で十分だ、どうしていけないのだ」といぶかる読者もいるかもしれない。しかし、よく考えてほしい。仮にわれわれが必死の努力でA2レベルの英語力を手に入れたとしても、使う機会がなければそれを維持することができない。言語能力は相手の存在、すなわち環境によって保証されるもので、それを欠いては獲得も維持も難しいのだ。
学校でできることは何か?
教室はあくまで人工的な英語環境にすぎない。教室を一歩離れた外の世界には、その人工的な環境すらない。巷には「英語らしき物体」が散在してはいるが、ちょいと捕まえて「英語です」と差し出せるような代物ではない。
もう1つ、平均的な学習者が、学校教育の3年や5年で「英語ペラペラ」になることは決してない。言語の学習は、そのような半端な時間をはるかに超える長丁場なのだ。だから、たいていの学習者は、学べど進歩の見えぬ学習高原のただ中で道を失い意欲をなくし、やがては撤退する羽目に陥る。
さて、ここまで述べたことを前提にすれば、教師も学習者もおよそ次のような覚悟を持って事に当たる必要がある。
(1)
英語の習得には、膨大な時間がかかる。
(2)
学習者は、その時間を意欲と努力でつながなければならない。
(3)
日本の社会が英語を必要としない以上、英語を使う環境は学習者自身が作り出さなければならない。
このように考えたとき、われわれ英語教師には何ができるだろうか。教師は、何をし、何をすべきでないのか。教師一人ひとりの立場や言語観が違う以上、一様の答えを期待することはできない。私の場合だと、次の点を心に置いて教壇に立つだろう。
(1)
学校英語教育は本質的に基礎教育であり、テスト中心主義や会話学校のまねごとになってはいけない。
(2)
基礎教育では、発音・語彙・構文法などをていねいに指導し、その定着を図り、もって将来の英語学習の土台を作ることを目指す。
(3)
指導は、常に学習者の発見を促すよう配慮する。
(4)
学習の定着は、暗記ではなく、トレーニングによってもたらされる。
いずれも目新しいものではない。基本に返ろうと言っているだけだ。しかし、現在の英語教育では、その基本の訓練がうまくできていないのではないか。
例えば、中学校の検定教科書では繰り返しと応用練習が意外なほど少ない。各レッスンは、新しい文法項目の導入で忙しく、既習の項目が何度も取り上げられることはない。しかも会話教材が多いから、同じページですら同一構文の繰り返しは少なくなる。
結果、教師は忙しい。時間内で所定の教材を理解させて一通りの練習をさせたかと思えば、次の時間にはまったく別の文法項目が現れる。発音や読み書きをていねいに指導する余裕は、まずない。学習者にしてみれば、毎時間完結を求められているようなものだから、定着どころか理解すら不十分なまま次のレッスンを迎えることにもなりかねない。教室という場所で何ができるか、何をすべきか。教師の覚悟と方針は、ますます重要になってくる。
「英語教育」2008年10月号
月刊「英語教育」について
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【特集】授業で鍛える英語の「基礎体力」
英語を身に付けるためにまず大事なのは、基礎的な訓練を「体で覚える」まで行うことである。学校教育の現場において、限られた時間の中で、個々の生徒の学習意欲を持続させつつ、継続的な訓練を習慣づけるにはどのように指導すればよいのか。入門段階を中心に、中級以上の学び直しも含めて、「英語の基礎体力」の訓練法を提案。
英語学習におけるトレーニングの重要性
山田雄一郎
楽しく、たくさん、自分のことを書いてみよう ―自主的な学習につなげる工夫
柏村みね子
ふうけもん流「話すための基礎体力作り」
大坪久子
音読指導のバリエーション ―「考える音読」と「虫食い音読」で知識を技能に
久保野雅史
動作や作業を利用したTPRによる語彙学習
清水一郎
「聞く力」を高めるための毎日のトレーニング
小林美代子
読書力は総合力 ―「英語を読むこと」への抵抗をなくすために
高瀬敦子
リーディング・ストラテジーを意識した読解の訓練
藤田 賢
[コラム]
基礎体力増強のための「サーキット・トレーニング」
原田康也
心も体もはずむ気持ちで、業間エクササイズを取り入れよう!
鞠子佳香
■英語教育時評
■アノ先生・ヒロ先生の日々の授業にひと工夫
■日本の英語教育200年<新連載>
■木綿子先生の小学校・英語活動のお悩みQ&A
■<リレー連載>進化する学習者コーパス
■英語教育 ここだけの話
◆ワシントンDCで活躍するプロフェッショナルたち
◆Notes from a Small Island
◆ミュージカルを深読みする
◆映画で英語
◆イギリスのしたたかな女たち
◆アングロ・サクソン文明落穂集
◆今月の時事英語
大修館よりオススメの新刊
英語教育2008年10月増刊号
―授業に役立つ英語教師のツールボックス
1,500円(B5判・128頁)
英語教師が授業で、HRで、課外活動で、さらには日常の生活で直面するさまざまなテーマについて、役立つデータや知識をすぐに使える形で提供。先生方がいつも手元に置いて、ぱらぱらめくれば何かしらヒントが見つかり効率よく仕事を進められる……そんな頼りになる「道具箱」のような一冊。
【特集I】授業に役立つ英語教師のツールボックス
<教室の活動に役立つツール集>
身近な道具を授業に活かしたい
(阿野幸一/
太田 洋)
「生徒が燃えるディベート」を授業でやりたい ―決まった表現を使えば誰でもディベートができる
(梁川寿美子)
英語の発問で授業に生徒を引き込みたい
(田中武夫)
生徒に英文をたくさん読ませたい
(神田みなみ)
英語の綴りと音の関係を知りたい
(川越いつえ)
英語で口慣らしをしたい ―5分でできる活動集(1)
(加藤京子/
松永淳子/
松下信之)
授業を活性化したい ―5分でできる活動集(2)
(加藤京子/
松永淳子/
松下信之)
教室を落ち着かせたい ―5分でできる活動集(3)
(加藤京子/
松永淳子/
松下信之)
<役立つ英語のフレーズ集>
いろいろな英語で生徒をほめたい・諭したい
(田口 徹)
英語で生徒に指示を出したい
(田口 徹)
英語レター、Eメールを書きたい
(阿部 一)
英語教師としてこの諺・名言は知っておきたい
(真野 泰)
海外旅行前にこのフレーズを生徒に覚えさせておきたい
(粂原京美)
クイズで身近な英語表現を身につけたい
(小山内 大)
若者ことばを英語で言いたい
(金子 靖)
<英語教師として知っておきたいツール集>
教材に使える画像・資料をみつけたい
(野澤和典)
教材に使える音声・動画・スクリプトを探したい
(朝尾幸次郎)
文法・語法の疑問を解決したい
(西澤正幸)
英語教師としてこの本は読んでおきたい ―プロ英語教師のための英語学習の活力源
(田邉祐司)
エクセルの関数を使って成績処理をしたい
(濱岡美郎)
エクセルを使って実験データの処理をしたい
(濱岡美郎)
メディアを英語の授業に役立てたい
(野澤和典)
『英語教育』を読むための基礎用語を知りたい(1)英語教育一般
(村野井 仁)
『英語教育』を読むための基礎用語を知りたい(2)英語の授業関連
(村野井 仁)
<コラム:リスト作成のためのテクニック>
オリジナル「英語基本例文集」を作成したい
(明石達彦)
オリジナルWord Listを作成したい
(武井 修)
【特集II】2008年度の英語教育 総括と展望
英語教育日誌[2007年4月〜2008年3月]
(伊村元道)
英語教師のマルチメディア教材活用法 ―ネットワークを活用した外国語学習の現状と小学校英語教育におけるマルチメディア
(柳 善和)
2008年度入試の特徴とその対策
(鈴木貴之)
英語教育図書 ―今年の収穫・厳選12冊
(柳瀬陽介)
■特別記事・英語教育への提言
小学校英語学習者の追跡調査と小・中英語教育への示唆(日本児童英語教育学会(JASTEC)関西支部プロジェクト・チーム)
■資料
『学習指導要領(案)』への要望書 (日本外国語教育改善協議会)
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