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英語教師に求められる力
―「行動計画」から「免許更新制」へ

田園調布学園大学教授
久村 研
Hisamura Ken
早稲田大学教授
神保尚武
Jimbo Hisatake

   
「英語教育」2008年7月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" July 2008 Vol. 57 No. 4 (Taishukan)

「英語力の基準」で見えてきたこと

免許更新制は、一種の教員評価制度と言える。評価制度ならば、必然的に評価基準を伴う。基準のない評価などは考えられない。この意味で、基準化を求める英語教師の声は当然の帰結である。逆に言えば、現実にはほとんど基準がないことを物語っている。英語力と授業力の基準についての調査結果は、明確な基準のないことがかなり反映したと考えられる。

英語力、授業力に関する質問項目に対する回答形式は、「判断できない」「適切ではない」「初任者の基準」「中堅教員の基準」「指導教員の基準」の5段階とした。英語力基準の10項目は、英検などの能力試験による基準3項目、授業内における英語運用力の基準3項目、授業外で必要とされる英語力の基準4項目の3つの観点に分類される。

まず、「行動計画」の英語力の目標値(英検準1級程度)に対しては、32.7%の教員が中堅教員の基準と答えたが、「判断できない」「適切ではない」との回答は40%を超えた。また、英検1級程度については、39.2%が指導教員の基準としたのに対し47.4%が「判断できない」「適切ではない」とした。この結果を要約すると、
  • 経験を積むにつれ、より高い英語力を備えているべきである
  • 指導年数によって英語力の基準を設定するのは、妥当ではない
  • 能力試験で、英語教員が必要とする英語力を測るのは難しい
と考えている教員がそれぞれ1/3程度からそれ以上いることがわかった。

授業内における英語運用力の基準については、次の観点が妥当と考える傾向にある。
  • 中堅教員の基準として、「コミュニケーション中心の授業を単独で英語を用いてできる」
  • 初任者の基準として、「教科書などの英語を適切な発音で読める」および「ALT と協同して英語で授業ができる」
しかし、上記3項目に関しても20%〜30%程度「判断できない」「適切でない」という回答があった。追調査結果によると、これらは英語教員ならできて当たり前で英語力の基準にするほど「難しくない」上に、「適切な発音」や「協同して英語で授業」という表現は基準として「わかりにくい」と考えている教員も多いようである。

一方、授業外で必要とされる英語力の基準では、以下が妥当であると考える傾向にある。
  • 中堅教員の基準として、「ALT を柔軟に指導・活用する英語運用力がある」および「『指導要領』にある言語活動の定着度を判断できる」
  • 指導教員の基準として、「他の教員の授業での英語力を正しく判断できる」
「英語力」と「授業力」に関する自由記述の中には、「英語力より授業力の方が重要である」、「英語力があるからといって授業力があるとは言えない」という意見が多く見られた。しかし、これらの指摘は事実であろうか。英語能力試験の結果と、授業力は本当に相関関係がないのか。今後も実証的な研究が必要であろう。

「授業力の基準」でわかってきたこと

英語力と比べ、回答結果は比較的明確に出た。初任者と中堅、中堅と指導教員それぞれの間に10ポイント程度の差しか現れない項目も含まれるが、概ね20〜30ポイント以上のギャップがあり、40%以上が妥当と答えた項目を整理すると次のような結果となる。

[中堅教員の基準]
  • 生徒のニーズを分析し、授業の計画に役立てることができる
  • 学習者に応じて適切に教材を選定したり、補助教材を作成できる
  • 授業全体を客観的に評価し、改善できる
  • 学習者の英語学習に対する動機づけを喚起し、維持するのに有効な方法(ストラテジー)について知識があり、実践することができる
  • 学習者が教室外でも自主的に学ぶために手助けできる方法を知っており、自律性を促進することができる
  • 授業をいつでも公開できる
[初任者の基準]
  • 授業の目的を適切に定めることができる
  • 授業に必要な補助教材やタスクを適切に準備できる
以上の結果について、追調査で確認できたことは、中堅教員と初任者との差は、経験年数の違いによる柔軟性であること。指導教員の基準が明確に示されなかったのは、概念に馴染みがなく、その職務や資質能力について明確な判断ができなかったためであろうということである。

おわりに

今回の調査で明らかになったことを整理すると、次のようになる。
  • 免許更新制導入に際し、教員教育全般の基準化が求められている
  • 免許更新制導入に伴い、現場の実情に即した柔軟な研修システムの構築と運用が求められている
  • 「英語力の基準」については、今回の調査項目で基準は設定できるだろうと判断する教員は全国に30%程度いる
  • 「授業力の基準」で、中堅教員の基準はできつつあるが、初任者および指導教員の基準は今後策定する必要がある。さらに、授業観察によって基準項目を追加できる可能性がある
  • 「英語教員の採用基準」は特定できる可能性が大きい
教員全般の資質能力は、免許更新制導入との絡みで、基準化は避けられないだろう。同時に、「英語教師に求められる力」も基準化の方向に向かうだろう。更新の認定は、一定の基準をクリアしていることの証明であり、それによって教員の質が確保され、保証されるということになるはずだからである。これは国、教育委員会、認定大学の説明責任(accountability)に通じるものである。

最後に、2007年の教問研の全国調査に協力いただいた先生方には本誌上をお借りし、厚く感謝申し上げます。また、その報告書をご希望の方はまで問い合わせてください。


◆参考文献
金谷憲編著(1995)『英語教師論』、河源社
国吉丈夫(1995)「21世紀にむけて期待される英語運用力」『現代英語教育』8月号、研究社

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英語教師に求められる力 ―「行動計画」から「免許更新制」へ
久村 研/神保尚武
雑談力
真野 泰
世界水準の発音力を習得させる「訓練力」
靜 哲人
中1の1学期の授業を運営する力:さまざまな英語学習歴の生徒にどう対応するか
大内由香里
学生に自主的に活動させる授業プロデュース力:英字新聞をつくる
根岸 裕
生徒の英語の悩みを聞き、的確な処方箋を出せる力
滝澤 武
生徒を授業に引き込む術:変わったところ、変わらぬところ
北原延晃
教育メディアの活用力をつけよう!
竹内 理

■英語教育時評
■アノ先生・ヒロ先生の日々の授業にひと工夫
■Multi-competenceでいこう!:元気がでる実践英語のススメ
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はしがき

第1章 動詞句の分類と意味――「スル」と「ナル」からのアプローチ
1.動詞句の意味特性「スル」と「ナル」
2.意味特性「スル」「ナル」と動詞句の分類
3.動詞句分類の実際

第2章 あいまい性と意味
1.語、句、および文のあいまい性
2.数量詞によるあいまい性
3.前置詞句によるあいまい性
4.被影響名詞のあいまい性
5.名詞句のあいまい性
6.完了形のあいまい性
7.副詞句のあいまい性
8.分配・集合読みのあいまい性
9.省略によるあいまい性
10.法助動詞のあいまい性
11.慣用表現のあいまい性
12.to-不定詞のあいまい性

第3章 類似表現と意味
1.名詞
2.代名詞と再帰代名詞
3.注意すべき所有格表現
4.冠詞
5.形容詞の限定用法と叙述用法
6.副詞
7.動詞
8.法助動詞と準助動詞
9.前置詞
10.関係詞構文
11.接続詞構文
12.IT 構文、THERE 構文
13.否定構文
14.比較構文
15.その他の類似表現

参考文献
索引

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