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英語教師に求められる力
―「行動計画」から「免許更新制」へ

田園調布学園大学教授
久村 研
Hisamura Ken
早稲田大学教授
神保尚武
Jimbo Hisatake

   
「英語教育」2008年7月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" July 2008 Vol. 57 No. 4 (Taishukan)

20〜21世紀の変わり目の数年間は、教育問題が政治の重要な争点の1つになった時期である。首相、文科大臣、文科省の公的審議会や私的懇談会、例えば、「中央教育審議会」「大学審議会」「教育職員養成審議会」「教育課程審議会」等の他に、「教育改革国民会議」「21世紀日本の構想懇談会」「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会」(以降「英語改善懇」)「教育再生会議」等が次々に設立された。

同時に、「教育改革」「教育基本法」「ゆとり教育」「学力低下」「学級崩壊」「少人数学級」「教員評価」「総合的な学習の時間」「小学校英語」「英語教育改革」「英語公用化」「教員免許更新制」等々の話題がマスコミをにぎわした。

この流れの中で、「英語」と「英語教育」は主要な論点の1つであり、「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(2003、以降「行動計画」)となって政策化された。また、教育改革に向けた動きの中で、「教育基本法」の改正と、いわゆる改正教育3法が成立し、2009年度から「教員免許更新制の導入」が決定された。

「公的に」求められている力

英語教育改革の論旨は、これまでの英語教育ではグローバル化した国際社会で働くことのできる有為な英語の使い手は育てられない、従って、各学校段階において、今後の国際社会で生きていく上で求められる英語によるコミュニケーション能力の指導を推進する(「英語改善懇」2001)、ということである。

この考え方に沿って、「行動計画」の中で初めて英語教員の英語力が、「概ね全ての英語教員が、英語を使用する活動を積み重ねながらコミュニケーション能力の育成を図る授業を行うことのできる英語力(英検準1級、TOEFL 550点、TOEIC 730点程度以上)及び教授力を備える」と明記された。つまり、英語力に関しては、英検準1級程度以上で、英語で授業を行える力を国として初めて求めたことになる。

一方、教授力に関しては、「英語改善懇」の報告書(2001)に「21世紀に生きる日本人に求められる英語力」を育成するための指導の指針が記述されている。恐らく、「行動計画」にある教授力はこれをベースとしていると考えられる。「英語改善懇」の報告書の中では文章化されているため、それを要約するのは危険を伴うが、あえて項目化すると次のようになる。
  • 英語学習のモティベーション(動機付け)を高める
  • 学校段階に応じた適切な教材及び指導方法を工夫する
  • 国際社会で日本及び日本人が果たすべき役割について認識させる
  • 学習指導要領に示された内容に習熟させる
  • 積極的に英語を使って意思疎通を図ろうとする意欲を生み出す
  • コミュニケーションの技術としての英語力を育成する
  • 生徒や授業のねらいなどに応じて様々な指導が行えるような総合的実践力を備える
  • IT 機器などを利用して、生徒が表現力を高める機会を増やす

「専門家」が求めている力

金谷(1995)によると、英語教育についての実証的研究は少なく、英語教師についての実証的研究はなおさら少ない。その原因は、実証的研究軽視の風潮(伝統?)、研究の難しさ、研究方法についての訓練不足、教師を研究対象とすることへのタブー視があげられるという。つまり、これまで英語科教育法のテキストや英語教育誌などで語られてきた英語教師像は、欧米の文献、個人的な経験や信念(ビリーフ)、個別の事例などに基づき、実証的な研究に裏付けられているものはほとんどないということである。

例えば、聞く力は、「BBC、ABC、CNN、NBC などのテレビのニュース放送番組が90%以上わかり、日本語のニュース放送番組と同じように情報源として十分に使うことができる」、読む力は、「Timeとか Newsweekとかの英文週刊誌を定期的に1部購読し、興味を持つものを中心に毎週記事の1/2以上は読み、必要な情報を受け取ることができる。時事問題の記事であれば、未知語については推測で読み進めることができて、辞書を使うことはまずない」(国吉、1995)などの指摘は特にめずらしいものではない。国吉はこれらの指摘に加えて、「TOEFLでいえば600点以上の力でないと無理ではないかと思う。このような力を持った英語教員でないと勤まらない時代が目の前にやってきている」と述べている。

この指摘の10年後、「行動計画」4年目の2006年に文科省が行った中学と高校の英語教師の語学力に関する調査では、英検準1級や英語能力測定テストの「TOEIC」で730点以上、「TOEFL」で550点以上を取ったことがある英語教師の割合は、中学で全体の24.8%、高校で48.4%という結果であった。

だからといって、英語や英語教育の専門家の述べてきたことが的外れであるということではない。「行動計画」や「英語改善懇」が求めている力にしても、現実とのギャップは大きいが、いずれも期待値あるいは到達目標値と考えれば、肯ける内容も多い。英語力ばかりでなく、授業力、教授力、指導力などと言われる力についても同様である。重要なのは、どのように理想あるいはビリーフと現実との橋渡しを行うか。どうしたら英語教師の質的水準を総合的に向上させることができるかを模索することである。英語教師の力を特定する、つまり、基準化するには、いかに困難であるとしても、実証的な研究方法をとる以外に今のところ考えられない。

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「英語教育」2008年7月号


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【特集】英語教師にいま求められる力

世の中のニーズの変化や生徒の多様性に柔軟に応える対応力が、教師に求められている。「新しい力」を探るとともに、教師が本来持つべき「基本的な力」を振り返り、この困難な時代に魅力的な英語教師像を考える。

英語教師に求められる力 ―「行動計画」から「免許更新制」へ
久村 研/神保尚武
雑談力
真野 泰
世界水準の発音力を習得させる「訓練力」
靜 哲人
中1の1学期の授業を運営する力:さまざまな英語学習歴の生徒にどう対応するか
大内由香里
学生に自主的に活動させる授業プロデュース力:英字新聞をつくる
根岸 裕
生徒の英語の悩みを聞き、的確な処方箋を出せる力
滝澤 武
生徒を授業に引き込む術:変わったところ、変わらぬところ
北原延晃
教育メディアの活用力をつけよう!
竹内 理

■英語教育時評
■アノ先生・ヒロ先生の日々の授業にひと工夫
■Multi-competenceでいこう!:元気がでる実践英語のススメ
■木綿子先生の小学校・英語活動のお悩みQ&A
■<リレー連載>進化する学習者コーパス
■英語教育 ここだけの話

◆ワシントンDCで活躍するプロフェッショナルたち
◆Notes from a Small Island
◆ミュージカルを深読みする
◆映画で英語
◆イギリスのしたたかな女たち
◆アングロ・サクソン文明落穂集
◆今月の時事英語[若者ことば編]


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入門講座 英語の意味とニュアンス

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はしがき

第1章 動詞句の分類と意味――「スル」と「ナル」からのアプローチ
1.動詞句の意味特性「スル」と「ナル」
2.意味特性「スル」「ナル」と動詞句の分類
3.動詞句分類の実際

第2章 あいまい性と意味
1.語、句、および文のあいまい性
2.数量詞によるあいまい性
3.前置詞句によるあいまい性
4.被影響名詞のあいまい性
5.名詞句のあいまい性
6.完了形のあいまい性
7.副詞句のあいまい性
8.分配・集合読みのあいまい性
9.省略によるあいまい性
10.法助動詞のあいまい性
11.慣用表現のあいまい性
12.to-不定詞のあいまい性

第3章 類似表現と意味
1.名詞
2.代名詞と再帰代名詞
3.注意すべき所有格表現
4.冠詞
5.形容詞の限定用法と叙述用法
6.副詞
7.動詞
8.法助動詞と準助動詞
9.前置詞
10.関係詞構文
11.接続詞構文
12.IT 構文、THERE 構文
13.否定構文
14.比較構文
15.その他の類似表現

参考文献
索引

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