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いま、4技能を統合的に教える必要性
――そして、さらなる技能も!

東京国際大学教授
新里眞男
Niisato Masao
   
「英語教育」2008年4月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" April 2008 Vol. 57 No. 1 (Taishukan)

「総合的な英語力」とは

4技能が総合された英語力とは、一見自明のことのように思われるが、実態はつかみにくい。ネイティブ・スピーカーだって、4技能が総合的に身についているのだろうか。そもそも4技能の総合とかバランスとかは何を意味するのだろう。英語力テストの中には、4技能のそれぞれに同じ点数が配分され、その総和を総合的な英語力としているものもある。しかし、4技能が全く量的にも質的にも同じ重さをもつということが実際にあるだろうか。例えば、語彙力に絞っても、受容語彙と発表語彙では量的にも質的にも違いがある。つまり、「聞くこと」と「話すこと」には質的・量的な違いがあり、単純に両者の「総合」や「バランス」の議論はできない。まして「読むこと」「書くこと」を含めた4技能の総合とかバランスなどは、とうてい明確に定義できない。

今回の学習指導要領改訂で、英語の「4技能の総合的な育成」をキー・コンセプトとするのであれば、それが何を意味するか明確にする必要がある。例えば、4技能それぞれにおける具体的かつ明確な到達目標(can-do listでもよい)を示してほしい。そうでなければ、「4技能の総合的な育成」が、単なるかけ声だけになってしまう。

4技能を総合的に活用した指導に向けて

むしろ、「4技能の総合的な育成」の第2番目のメッセージである4技能を総合的に活用した指導方法のあり方こそ、今回の答申の核心かもしれない。しかし、これも、実はなかなか理解と実行が難しいコンセプトである。

総合というのは、もちろん、ただ50分の授業の中に機械的に4技能を押し込めればよいというものではない。仮に、1つひとつの活動はおもしろく一見有意義に見えても、結局、授業全体としては「総合的」ではなくなる。

4技能の総合的な指導とは、普通は、指導すべき語彙、文型・文法事項などの言語材料やあるテーマに関する英語を、聞き、話し、読み、書くという4技能を相互に関連づけた活動を行って、取り入れ、整理し、内在化し、表現することを指すのであろう。4技能を連携させつつ活用することで定着のスピードと深さが増し、結果として総合的な英語力につながると想定されているのである。

では、そのような4技能の総合的な指導のためには、どのような工夫をすればよいのであろうか。ここでは、以下の7点を提案することにする。

(1) 基本的に英語を使って授業を行う。
(2) 語彙、文型・文法の導入に関して、L→S→R→Wの順序を基本的に守るとともに、それぞれに費やす時間を意識的に確保する。
(3) 教科書本文の内容を扱う中で、4技能を意識する。
(4) 現実の言語使用をもとに、authentic な活動の連携を考える。
(5) スピーチやディスカッション、ディベートなど、4技能の総合的な活用を前提とした活動を取り入れる。
(6) プロジェクトワークなどを取り入れる。
(7) 4技能の総合的な活用そのものを評価活動として取り入れる。

(1)の授業における英語使用は、LとSを日常化するための必須事項である。挨拶、指示、ほめ言葉などの教室英語だけではなく、教師と生徒が日常的なやりとりを英語で行うことが大切である。英語で生徒の健康状態を聞いたり、ニュースや行事、試験の結果などについて話し合ったりすることも授業内容である。それを意識したい。

もちろん、文法の複雑な説明は日本語でやるべきだが、1回の説明は3秒程度に限り、"Little by little, but again and again."の精神で少しずつ理解を深め、習熟を図ることが大切となる。

(2)は、言語材料の導入や習熟、定着を図るドリル的な練習活動においても、4技能のそれぞれを意識することである。例えば、新語の導入の際に、いきなりフラッシュカードで単語のスペリングを見せるのではなく、絵やイラスト、対話の中で音声と意味の結合を図ることから導入し、それから意味のある対話をさせて練習させるのである。これなどはぜひ守ってほしい順序であるが、多くの授業では、いきなり単語のスペリングを見せてしまい、意味も教師が与えることが多い。

新出の文型・文法の導入に関しても同じである。いきなり「今日は現在完了形の勉強をします」とか「仮定法の勉強をします」などと説明から入るようでは、たいがい4技能の総合のことは考えていない。新しい項目をどのような場面の中で紹介しようかとか、どのように生徒に「現在完了形」や「仮定法」の本質的な機能を体得させようかなどを考える教師にとって、4技能の総合的な活動はある意味で当然のことなのである。指導項目を含んだoral introductionを聞かせ、それについての Q&Aをし、次に文字で示したものを説明し、その後repeatさせ、さらに生徒自身の情報や気持ちをその文型・文法を使って書かせ、最後にはそれを口頭で発表させるのである。ここまで読んできて、「ああ、あの当たり前の手順のことだな」と感じた人にとって、以上のことは"preaching to the converted"であろう。

(3)の教科書の本文を扱う際に4技能の総合を考える点も、それほど目新しいことではない。悪い例は、ロクにoral introductionの形でLを行わず、いきなり教師のあとについて音読させてしまうものである。そして意味の確認は日本語に訳させるだけ。これでは、LもRも行われていない。少なくとも、本文のoral introductionを聞かせるとか、CDで聞かせた内容の理解を確認するとかのLの作業は欲しい。また、訳をさせることは、本来のRとは言えず、日本語に訳させることと本当に理解することとは別物であることは、英語教師自身がよく知っていることであろう。さらに、本文理解の後、音読は欠かせないが、その音読後、その成果をQ&Aで確認したり、サマリーを書かせたり、reproductionをさせることもできる。本文を批判的に読ませるために、選択肢を与えてその中から自分の賛成する意見を選ばせたり、本文の内容に関する例を考えて述べさせたり、生徒の立場に置き換えて「自分だったらどうするか」を考えさせたりするなどもできる。

上のように教科書を活用するためには、徹底的な教材研究が必要である。本文の1つの英文について2〜3個の英文質問文を事前に考えられるような徹底的な読み込みが必要である。

(4)のように、現実の言語使用を踏まえてauthenticな4技能の連携を考えることも工夫の1つである。ニュースを聞き、その内容を簡単に1文で相手に伝え、自分の感想を付け加えるというのは母語でも日常的に行っていることである。これを英語の授業でやるだけでもLとSの活動は確保できる。また、自分のこれからの予定を置き手紙のように英文で書き、それを読んだ人が返事のメッセージを書き加えるという活動では、RとWが保証される。このように、現実的な場面を想定してコミュニケーション活動を組み立てようとすれば、自然と4技能のうちの複数の技能をカバーできる。

(5)に挙げられている活動では、下準備としてLとRを通して情報と英文そのもののinputが行われ、次に、発表活動の準備としてWが行われ、さらに、書いたものを音読などで自分の表現にし、最後に実際にL、Sを行い、完成させる活動である。特に、これらスピーチやディベートなどの活動を小グループやペアで行うような工夫をすれば、多くの生徒を同時にinvolveでき、効果的である。

(6)プロジェクトワークも基本的に(5)と同じであるが、比較的長期間にわたるものなので、4技能の総合という側面をより充実させることができる。しかし、調査や考察の段階で母語に頼ることが多くなる傾向もあり、教師の側の制御が重要になる。

(7)では、まず、4技能の総合的な活動を日常的に実施しながら、その中で個々の生徒を観察評価することがある。次に、テストなどで客観評価する際には、評価のための活動そのものが4技能を総合したものになっていることが大事になる。ふだん4技能の総合的な育成を目指しながら、評価の段階では単一技能の活動しか用意しなければ、生徒はすぐネガティブな反応をするようになる。

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【特集】授業にプラスαの要素を! ―「5技能」組み合わせのすすめ

生徒に基礎力も応用力も身につけさせなくては…。日々、時間に追われるなかで、従来の授業に、どんなプラスαを入れられるだろう? 同じ授業でも、2倍3倍の効果をあげる、そんなヒントを探る。

いま、4技能を統合的に教える必要性:
――そして、さらなる技能も!
新里眞男
「5技能」のバランスがよい授業の流れ
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文法指導を説明だけで終わらせない
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英語ライティングを通じて、思考力、論述力を身につけよう!
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統合学習で高める自己表現力:
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「異文化交流力」をつける授業
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■<新連載>英語教育 ここだけの話
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◆ワシントンDCで活躍するプロフェッショナルたち
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◆<新連載>ミュージカルを深読みする
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はじめに
本書について
本書の利用の仕方
付属CD内容一覧

序章 通訳の現場から
 1 通訳の現場から
 ★ 通訳外史

第1章 通訳の世界
 1 歴史と現状、将来展望
 2 通訳の種類と特徴
 3 通訳業界の仕組み
 4 通訳の仕事への取り組み方
 5 通訳者倫理綱領・Interpreters'Code of Ethics
 ★ 翻訳と通訳

第2章 通訳への基礎訓練
 1 通訳とは何か
 2 基礎訓練を始める前に
 3 日英音声構造の再認識
 4 知識と語彙の増強
 5 クイック・レスポンス
 6 トランスクリプション
 7 シャドーイング
 8 スラッシュ・リーディング
 9 スラッシュ・リスニング
 10 リプロダクション/パラフレージング
 11 メモ取り
 12 サマライジング
 13 DLS(Dynamic Listening & Speaking)
 14 資料:教材のトランスクリプトと対訳
 ★ 美しい日本語への道

第3章 通訳技術の訓練
 1 通訳技術の訓練
 2 英日逐次通訳
 3 日英逐次通訳
 4 英日同時通訳
 5 日英同時通訳
 6 英日ニュース時差通訳
 7 英日放送生同時通訳
 8 日英多重ニュース同時通訳
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終章 More Helpful Information
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 2 通訳関連の書籍
 3 通訳技能検定試験/日本通訳協会
 4 電子辞書・串刺し検索ソフト
 5 発音記号対照表

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