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本当に効果的なライティング指導とは
指導を行うために留意すること

日本女子大学附属高等学校教諭
工藤洋路
Kudo Yoji
   
「英語教育」2007年9月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" September 2007 Vol. 56 No. 6 (Taishukan)

高等学校「ライティング」教科書が文法シラバスだが…

高等学校の「ライティング」の教科書のほとんどが文法シラバスを採用しているが、その目的はどこにあるのだろうか。ライティングに文法が必要なことは当然だが、ライティングにおける文法とはどのようなものだろうか。

まずは、grammar for writingなのかwriting for grammarなのかを議論してみたい。前者の意味は「ライティングに必要な文法」ということである。例えば、「昨日の出来事について書きたい」ので「過去のことを表現する方法が知りたい」という場面がある。すると、「動詞の過去形の指導」が必要となる。また、「物の説明をしたい」ので「名詞の説明をする方法が知りたい」という場面では、「『〜な名詞』はどう書き表すか」と考えると、「名詞の後置修飾(前置詞、to 不定詞、分詞、関係詞など)の指導」が必要であると分かる。つまり、書く際にどのように書けばよいのかを、文法の観点で整理することが、grammar for writingの意味である。

一方、writing for grammarの意味は、指導のポイントとなっている文法事項を定着させる手段として、書く活動を行うということである。「過去形」が指導のポイントになっていれば、例えば、「日記を書く」という活動を行うことができる。

grammar for writingにせよ、writing for grammarにせよ、書くというカテゴリーに属するものであるので、ライティングの教科書で扱うべき項目には違いない。しかしながら、両者ともにライティングの諸要素の全てをカバーしているわけではない。前者であれば、vocabulary for writingやorganization for writingなど他の様々な観点と並列に並べられることによって初めて、どの観点でシラバス構成を行うべきかが見えてくる。後者であれば、listening for grammar、speaking for grammar、reading for grammarのように、他の技能との並列関係の中で議論されて初めて、ライティングという手段を用いることが、最も定着に効果がある文法事項が見えてくるのではないか。もし、リーディングという手段を借りた方が、その文法の定着が高まるのであれば、その文法事項はreading for grammarの視点で指導されるべきである。高等学校の「ライティング」の教科書を以上のような視点で分析をした上で使用すると、効果的な指導方法が見出せるのではないか。

paragraph writingで「型」を指導しているが…

高等学校の「ライティング」の教科書の多くは、paragraph writingを取り入れ、topic sentenceやsupporting sentenceを用いたパラグラフの構成の方法を説明している。paragraph writingを高校生に教えることで、作文の構成力が高まると同時に論理的な文章を読む力も養成することが可能である。しかしながら、いわゆるparagraph writingで指導する作文の「型」は万能薬ではない。なぜなら作文の活動や試験では様々な文章スタイルを書くことが求められているからである。ELEC同友会英語教育学会ライティング研究部会(2007)によれば、2001年度から2005年度の大学入試におけるライティングの問題(いわゆる自由作文の形式)の約50%は、paragraph writingで学習する「型」が通用するであろう「意見陳述型(persuasive型)」の問題で、残りの約半分は、narrative 型やdescriptive型、あるいはsummary型、または複数のスタイルの融合が求められている問題であった。従って、常に決められた「型」を利用するのではなく、活動や問題によって、柔軟に対応する力が必要となる。

次に、paragraph writingを学習するタイミングについても考慮すべきである。金谷(1999)によると、英作文指導は、和文英訳とparagraph writingに二極化されているが、paragraph writingの指導を行う場合でも、まずはある程度の量が書ける段階に到達していることが前提となるとしている。大した量が書けないのに、「型」を追求した場合は、以下のような文章ができ上がってしまう。

I like dogs very much. Firstly, they are cute. Secondly, they make us relaxed. This is why I like dogs very much.

この文章では、確かに「型」は整ってはいるが、量的にも少なく、内容的にも薄い。まずは、「型」を整えるために必要な内容量が必要となる。従って、paragraph writingの指導を導入する時期については、再考の余地があろう。

読み手を設定したライティング活動を行っているが…

作文を書くときは読み手を意識して書かせる方が効果的であると言われている。現実のコミュニケーション場面では、目的や読み手の想定がない中で何かを書くことはまずありえないからである。その結果、今では数多くのライティングの活動や試験において、読み手が設定されている。しかしながら、指導という観点から議論をすれば、ただ1人の読み手を設定するだけでは、なかなか生徒の能力を向上させることには貢献しないのではないか。生徒の作文のプロセスとして、課題が出された時には、読み手の設定があれば、その場で一通り確認するであろう。ただ、ひとたび、内容を英語で作り上げる作業に入ってしまうと、作業記憶は、読み手を考慮して内容を作成することにまでなかなか及ばない。よほどそれが簡単な活動か、あるいは生徒の能力が高くない限り、最初に確認した読み手の存在は消えてしまう。

そこで、ここでの提案として、立場や親密度が異なる複数の読み手を設定して、それぞれに対して同じトピックで作文を書かせてみてはどうか。同じトピックだが読み手が異なれば、何かを変えることになるであろう。それは、使うべき語彙や表現といった言語材料的なものかもしれないし、共有している情報から判断して書くべき内容かもしれない。このように意図や理由を伴って書いた英語に関しては、より正確にそして短時間で定着する可能性が高い。

例えば、自己紹介を書くとしても、クラスの友人に書くのか、ホストファミリーに書くのか、留学先の入学課に向けて書くのかで使うべき言語材料や、書くべき内容が異なる。指導のポイントとしては、例えば、留学先の入学課に対しては、客観的な書き方が求められるので、「"I"という主語をあまり使わずに書く」ということなどが設定できるだろう。このように、同じトピックではあるが、読み手の違いにより、複数の異なる作文を書かせることによって、指導ポイントを効果的に指導できることとなる。

◆参考文献
ELEC 同友会英語教育学会ライティング研究部会(2007)「大学入試ライティング問題をどう料理するか?」『ELEC 同友会英語教育学会第12回研究大会発表要綱』(p.33)
金谷憲(1999)「和文英訳と paragraph writing の狭間」『英語教育研究』Vol.15(pp.7‐10)語学教育研究所
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