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コーパスと語法
用例を位置づける視点

英語語法研究家
滝沢秀男
Takizawa Hideo
   
「英語教育」2007年7月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" July 2007 Vol. 56 No. 4 (Taishukan)

コーパスが役立った例

1999年、本誌で文法に関する連載をしたとき、someとanyに関して、「肯定文ではsomeを使い、疑問文、否定文ではanyを使う」という説明は、そのまま正しいわけではないことを指摘し、assertion、non-assertion の概念と強勢を考慮すると、例外を設けることなく説明がつくことを述べた。ちなみに、「肯定文ではsomeを使い、疑問文、否定文ではanyを使う」のような説明は、日本だけのものではない。英語を母語とする著者による学習文法書の多くにも用いられているし、英語を母語とする(外国語としての)英語教師の多くがこの説明を用いている。したがって、この文法領域は日本人に限らず多くの外国人にとって理解が難しいのである。この件に関して以前、フランス人とも話をしたことがあり、彼らにとっても難しい項目であることを確認したことがある。

この説明がどの程度妥当なものなのかを考えるために、次の4つの命題に置き換えてみることができる。それぞれの命題に関して、以前、数冊の本を言語資料とし調査したところ、[  ]で示した数字が出た(それらの言語資料の中に出てくるすべてのsomeとanyの用例を調査した数字である。もちろん、言語資料の種類や大きさにより、結果は多少異なるであろうが、自分には納得のいく結果であった)。

(1)someは(否定文や疑問文よりも)肯定文で用いられる。[約90パーセント]
(2)someは(anyよりも)肯定文で用いられる。[約80パーセント]
(3)anyは(肯定文よりも)否定文、疑問文で用いられる。[約60パーセント]
(4)anyは(someよりも)否定文、疑問文で用いられる。[約80パーセント]

この結果から、それぞれの命題の有効性の関係を示すと、次のようになる。

 (1)>(2)、(4)>(3)

だが、統計的には(3)の命題を除けば、およそ80パーセント以上の使用は上記の説明に当てはまると言える。それゆえ、肯定文のanyは頻繁に用いられるにもかかわらず、多くの学習文法書や教師がそれを例外的に扱うことも理解はできる。

では、それでいいかというとそうではない。「肯定文ではsomeを使い、疑問文、否定文ではanyを使うことが多い」のように、規則ではなく、傾向性であることを示した方がよい。このように説明することで、学習段階が進んだ分だけ、用法の全体像に近づいていけるのではないだろうか。

コーパスの落とし穴と用例を位置づける目

次の例は、ネットで検索した際に、検索結果の解釈に注意が必要だと思った1例である。それは、不定冠詞と数詞oneの違いを如実に示す用例に関するものである。

不定冠詞は、数詞one(1つの)が原義である。だが、次のような場合、oneとaは交換できない。

(1)There is only one man living in the village.
(2)*There is only a man living in the village.

不定冠詞aはoneほど強く「1つの」という概念を表出しない。むしろ、不定の概念の方が強い感じがする。だから、onlyと共起するのは不自然なわけである。

このことに関して、数年前、ネット検索をしてみたら次のような数字が出た。

(3)There is only one man ...6900件
(4)There is only a man ...140件
(約2パーセント)
(5)There is only one man living ...13件
(6)There is only a man living ...1件
(約7パーセント)

面白いことに、livingを加えると用例が極端に減るので、(6)のように1件しかなくても、約7パーセントも占めてしまう。これは、サイコロなどを振ったときの出る目の確率と同じで、母集団が多くないと正確なものにならない場合が多いので、扱いに気をつけなければならない。

また、ネット検索の場合は、ネイティブスピーカーのものでない例が多く混じっているので、その点を心得ておかなければならない。

昔よく「ゴキブリを1匹見つけたら、数十匹は隠れている」ということを聞いた。しかし、ドアを開けておいたら、たまたま1匹だけ入ってきたものを目にしたということもあると思う。

ある現象を見たとき、それが突発的な、その場かぎりのものなのか、氷山の一角あるいは1つの流れとなっていくものなのかを考えることが大切である。そういう意味で、頻度を調べられるコーパスは役に立つ。

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