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英語との格闘
私の英語学習遍歴

明海大学教授
投野由紀夫
Tono Yukio
   
「英語教育」2007年3月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" March 2007 Vol. 55 No. 14 (Taishukan)

使える力への転換

大学1年後半から自分は英語学習の戦法を変えた。今までの辞書首っ引きのねちっこく英文を読むばかりだったのから、英語の独立系回路を頭に作るような練習に切り替えた。まず辞書を引きまくりたい衝動を抑えて、英字新聞の社説を辞書無しで速読する習慣をつけた。自宅から大学までの電車の停車駅間の時間計算をして、タイム誌のカバーストーリーを読みきる、という目標を立てたり、山手線の新宿から五反田までの15分間でNew York Timesの社説3本を読みきったりした。またこの頃から梅棹忠夫の『知的生産の技術』(岩波新書)に触発され、京大式カードを使って気に入った英語表現の用例カードを作り始め、それを1日10個くらい使って自由英作文を書いてトピックごとにカードで整理する、というようなことをやり始めた。

つまりこの時期に大量に読み、大量に書く、という作業を相当量こなしたのである。これを1年くらい続けると、受験英語一辺倒だった自分の英語の力が一つの言葉として独立して機能し始めるのがわかった。読んだものが日本語を介さず一直線に頭に入るようになった。FEN(米軍のラジオ放送)の英語が突然くっきりと聞こえるようになったのもこの頃である。英語集中合宿でもめきめき上達し、人前でのスピーチやディベートもかなりうまくなった。そうこうしているうちに大学3年で英検1級をとり、TOEFLも610点くらいとって国費派遣留学生として1年間米国留学をすることになる。1年間アメリカにいて帰国した直後に、国連英検特A級に合格したから、この頃には英語力はかなりのレベルになっていたと言えよう。

教員なりたての10年

私の英語学習が最も劇的な変化をとげたのは大学時代だったと思うが、教員になってからの10年は逆にいかにその力をメンテナンスするか、ということが課題だった。最初に勤めた高専では英語がやさしくなった分、自分でも手抜きになってしまい自分自身の英語力が極端に落ちていくのを感じた。その後、学芸大に戻ってからは、自分へのチャレンジとして一般英語や教科教育の一部は英語だけで教えた。また大学院を出てからは、研究論文は原則すべて英文で書く、ということを自身への課題とした。それでも増えていく公務、出版社の原稿、さまざまな雑用で、徐々に自分の英語力を鍛える時間が減っていくのを感じた。同時に、研究の面でも新しい潮流(それが「コーパス」であった)への興味と、博士論文を書きたい、という気持ちが強くなっていき、仕事と勉強のジレンマに襲われた。

再留学そして今

私はその後、お世話になった東京学芸大学を辞し、英国ランカスター大学博士課程でコーパス言語学を勉強するために渡英する。30代半ばであった。家族は無職になった私のおかげで1年間生活保護を受け、3年間貯金だけで食いつなぐという傍から見たら無謀な生活をした。その際、2年目からは家内と子ども5人をイギリスに呼んで、極貧の勉強生活をしながら博士課程を終えた。留学から帰ってきた時には、我が家の全財産は100万円を切っていた。ただただ家族に感謝するしかない。

しかしこの3年間は私に新たな自信を与えてくれた。イギリスにいる間に英語のキレは戻ってきて、論文を書くのも国際学会で発表するのもそれほど苦ではなくなった。以前は参加できなかった第一線の研究者との質疑応答も丁々発止とやることができるようになった。アメリカ英語からイギリス英語(気味)で話すようにもなった。多くの研究者が私の論文を読んでくれ、交流の輪が広がっていった。3年間はそれ以上の価値ある時間だった。

帰国してから6年。NHKも3年間やったが、まだバイリンガル・タレントさんほどペラペラではないかもしれない。しかし、自分の中には普通の日本人が普通に英語を習って、それを言葉として使えるような工夫と努力をすればこうなる、という自信ができた。「天才とは1%の才能、99%が努力」と言った人がいるが、私はそういうタイプだったと思う。

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「英語教育」2007年3月号


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【特集】私の英語学習法

英語の達人と言われる先生たちは、どんなやり方で英語を勉強してきたか? 学生時代は? 教師になってからは? 教える立場になってからどんな変化があったか?…それぞれの学習歴から浮かびあがる効果的な「学習方略」とは?

効果的な学び方というものはあるのか:
学習方略と英語習得
竹内 理
背伸びしてチャレンジ:
同時通訳者の学習方略
鳥飼玖美子
決め手はインプットとアウトプットの往復
太田 洋
檜を目指して:
「アスナロ」学習法
吉田健三
捨てること、 拾うこと
大西泰斗
「習うより慣れろ」感覚で学び続けて
靜 哲人
英語との格闘:
私の英語学習遍歴
投野由紀夫
状況にふさわしいやり方を:
時間と根気の学習法
米山朝二

■英語教育時評
■国際英語の視点を授業に
■イギリスで見た日本人児童の英語習得(最終回)
■菅先生に聞こう! 授業の悩みQ&A
■授業のここにフォーカス
■わかりやすい名詞の〈数〉と冠詞の指導

◆<巻頭エッセイ>American Sports Diary(最終回)
◆Table Talk on ELT(最終回)
◆中世英国の神話伝説の世界(最終回)
◆映画から読み解くアメリカ(最終回)
◆今月の時事英語[若者ことば編]
◆テーマ別ネイティヴの表現(最終回)


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