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富山南高等学校(富山県立)
自由英作文への取り組み
ライティング能力向上を目指して


富山南高校教諭 仲井美喜子
Nakai Mikiko
   
「英語教育」2006年8月別冊(大修館)→ 目次はこちら
From "The English Teachers' Magazine" August 2006 Vol. 55 No.6 (Taishukan)

授業実践

学校独自のライティング能力評価

SELHi 校として本格的に研究課題開発に取りかかるにあたり、大きな軌道修正をした。そして全校生徒を対象に、音読を基礎として英語で授業を行い、生徒の英語コミュニケーション能力を高める指導を目指すこととした。また4技能の伸長度を測るのに英検や GTEC などの外部評価だけに頼らず、独自の評価方法の開発を大きなテーマとした。特に、ライティングやスピーキングなど、客観評価の難しい技能を検討する中で、ライティング能力評価について、英語科内での話し合いが進んだ。

「自由英作文」に取り組ませてそれを採点・評価することでライティング能力の伸長度を測ることは直ちに教科内で意見が一致し、その実施方法や評価規準について修正を重ねながら検討していった【巻末資料4‐1(省略)】。一方で、ライティング能力は英語の文構造(文法)理解が伴わなければならないとする考えから、文法テストも同時に実施するべきだという意見も強かった。教科部会で意見交換を重ねた末、本校で精選した30の構文についての「30構文テスト」【巻末資料4‐2(省略)】を、指定した課題について意見を書く「自由英作文」と2本立てにして、全校生徒を対象に年間3回実施することを決めた。

初年度には1、2年生対象に試行テストを行い、2年目で1、2年生対象に年3回実施、3年目は全校生徒対象に年3回実施した。ライティングテスト実施経過で見ると、回を重ねる毎に生徒が制限時間内に書く語数が増え、内容が充実してきている。また、外部評価テスト(GTEC など)の成績推移や過年度比較でも、ライティング分野を中心に大きく伸びている。SELHi 初年度から授業中心に「書くこと」の習慣づけを図り、書く機会を多く与えていることは、ライティング能力の伸長と強く関連していると思われる。特に、2年生「ライティング」の授業での取り組みが顕著な成果となっている。

「ライティング」の授業

平成15年度まで2年生の文系・国際コースの「ライティング」の授業では、2単位のうち1時間は T‐T の形態で自由英作文を指導していたが、1単位しかない理系では、自由英作文の指導はなかった。15年度 GTEC 受験結果を見ると、他の分野であまり差がないのに、ライティング分野で理系生徒の平均点が文系・国際コースより13点下回っていた。折しも16年度から2年生ライティングが1単位増となり、理系でも自由英作文の指導をすることを決めた。T‐T の授業では、前年同様に ALT の与えるテーマに沿って毎週1回英作文を宿題としたが、JTE だけの授業でも新たに教科書の Lesson に合わせた英作文を課して、週1回取り組ませることにした。したがって生徒は毎週2回のペースで英作文(最低100語、なるべく120語以上)を書くことになった。文系・国際コースも1単位増で計3単位、理系は2単位で依然単位差はあるが、英作文の課題数は同一とした。


1)ティーム・ティーチング(T‐T)

T‐T の授業は ALT が主にプランを立てたが、全担当者の意見で修正・追加・変更を加えながら授業案を作った。学年5クラスに対して指導に当たる ALT2名、JTE は3〜4名なので、議論も対立もありのレッスン作りだったが、結果的には内容の充実につながった。平成16年度、17年度の2年間でプランはほぼ形になった【巻末資料4‐3(省略)】。毎回単発のテーマが多いが、Story Making Project(グループでの物語作り)や Dear Abby(人生相談の手紙交換)など、数回にわたるプロジェクトもある。いずれにしても、毎時必ず英作文の宿題を課す。ALT はすべて添削して10点満点の評価をつける。毎回100語以上書くことは労力を要するが、習慣化すると150語以上書く生徒も増えた。テーマに興味を持つと200語を超えることもある。毎回の提出については、個人作品なので人まねができないため、負担は大きいが、次のような罰則の導入によって、提出状況は良好となった。

授業のはじめに、ALT と JTE の机間巡視で宿題を確認する。忘れたり未完成の生徒は起立させ、教壇で ALT と1分間会話または1分間スピーチをさせる。本校でスピーキング能力評価の一環として実施している「音読テスト」では、後半に質問に対して1分間話すテストがあるが、なかなか英語が口をついて出ないのは実証済みである。ALT と約40人の生徒を前にした教室での1分間は、さらに長く緊張度も高い。この罰則制導入で、未提出は激減(ほぼ消失)した。

毎回異なるテーマがあるとは言え、英作文の解説と宿題指示だけではコミュニケーション活動に乏しい。もちろん Q&A やペアワーク(missing information、 word game などの acitivities)は工夫したが、平成17年2学期はリスニング練習も兼ねて ”Newspaper Article Listening Activity“ を授業のはじめに導入した。まず T‐T で新聞記事に関する会話を聞かせて、メモを取らせる。次に5W1Hに関する6つの質問をして答を書かせる。最後に必ず ”What do you think about the article?“ と質問して自分の意見を書かせる。Q&A で正解を板書してから、ペアで練習させる。ジャンケンで負けた方がオピニオンを述べるなどのルールで、生徒は乗りよく取り組む。聞く、書く、話す、と3技能にわたる活動ができる。この activity は3学期の ”Newspaper Making Project“ への橋渡しともなった。

英作文課題のテーマは、生徒の興味を引くと思われるものを中心に工夫して選び、形式の多様化にも留意した。個人のエッセイ(好きなものなど)のほか、手紙、新聞記事、物語、映画批評や書評、料理レシピなど、課題作品は多種多様である。T‐T 授業で特に目指したのは、書く内容の正確さよりは、書くことへの動機づけや創造性である。生徒が興味を持って「自分でも書きたい!」と意欲が喚起された時、英語力にかかわらずライティング能力は高まる。成功例をいくつか紹介する。

(1)マッピングでオリジナルストーリー:まず T‐T で人物や状況を提案して、生徒に質問しながら黒板にマッピングしていく(A=ALT、J=JTE、S=Students)

A:Let's see... There was an old couple on the mountain...
J:The old woman's name was Kimiko. And her husband... What was his name?
S:His name was Tetsuya.
A:They were very old and poor.
J:Kimiko was 70 years old, and...
S:Tetsuya was 80.
J:They had 2 children; a boy and a girl. How old were they?
S:The boy was 25 and worked in Tokyo.(etc.)

質問は次々と別の生徒に当てるので珍妙な解答もあるが、全員が参加できるし、マッピングのやり方を指導・確認もできる。逆に生徒に質問させるパターンでの展開もある。

A:There was an old couple on the mountain.
S:Where did they live?
J:In Tateyama. They made straw hats and sold them.
S:How old were they?(etc.)

どちらの方法でも、マッピングは四方八方に広がり、時には収拾がつかないが、ほとんどの生徒が参加したところで、ALT か JTE がつながりのあるストーリーにまとめてみせる。


   
(例)There was an old couple in Tateyama Mountain. Their names were Kimiko and Tetsuya. Kimiko was 70 years old and Tetsuya was 80. They made straw hats and... sold them in town. They were very poor and... there was no electricity; no TV, no telephone, no washing machine.... They had two children; a boy and a girl. The boy was very smart and... went to Tokyo University.... he got a scholarship so... the parents didn't need to pay for his education. Now the boy was 25 and... he workd in Tokyo... as a policeman. The girl was 18 and... she ran away from her parents because... they were poor and... she got bored... without TV or telephone...

宿題として、生徒は同様のマッピングをしてオリジナルな物語を創作する。柔軟な発想でおもしろいストーリーを作る生徒が多くいる。また、このマッピング手法はエッセイやオピニオンライティングにも応用できる。3年生ライティングの授業では毎回の Lesson 内容について、マッピングしてから感想をまとめることを課題にしており、ほとんどの生徒は20分で120語以上のエッセイが書けるようになった。

(2)映画のストーリーを完結:”Blair Witch Project“ という映画のラストを5分程度見せて、ストーリーの続きを考えさせる。不気味な映画で、結末が不明なため、アイディア次第でどのような展開も可能である。授業「3人の男女に何が起こったのか」等では5W1HのQ&Aで生徒に内容を想像させてから、各自の宿題としてストーリーを完結させた。ルールは一つ:”Don't give it a happy ending. Make it really scary!!“ 生徒の通例として、多くの場合”... and they were very happy.“ と安易に締めくくるので、一工夫を要求した。原作よりも恐い話や奇想天外な内容も見られた。

このように、T‐T ライティングでは、複数の担当者がアイディアを出して、さまざまな英作文指導を試みた。生徒の側からは、毎週の課題は負担だったが、「興味深いテーマで楽しめた」「英作文に慣れた」という感想が多かった。


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「英語教育」2006年8月別冊



月刊「英語教育」について

英語教育2006年8月別冊

1,400円(B5判・128頁)


SELHiはこんな授業をしている
SELHiの指定を受けたふつうの公立高校で、どんな目標のもと、どんな試みがなされたか? これなら真似したい、これなら真似できる、魅力的な授業の実践集。

[巻頭言]よりよいSELHi研究を目指して
(松本茂)

■SELHi紹介と授業実践

1 入門期という黄金の時期:
自立的学習者を育てるには
(尾道東)
2 多量のインプットから良質のアウトプットへ:和訳先渡しのリーディング授業
(高知西)
3 速読から要約へ:
読むことと書くことを関連づけて
(岡山城東)
4 自由英作文への取り組み:
ライティング能力向上を目指して
(富山南)
5 「道具としての英語」力を:
段階的ライティング指導
(横浜商業)
6 オールイングリッシュの授業を目指して:一人ひとりの発信力を高めるために
(浜松湖南)
7 通常授業にスピーキング活動を取り入れる
(札幌国際情報)
8 ディベート・ディスカッションでスピーキング技能を
(米原)
8+ コミュニケーションの基礎はまず発音訓練から
(米原)
9 継続は力なり:リスニング指導開花
(千里)
10 日本人だけのイマージョン授業
(成田国際)
11 IT活用と学校間連携で「ヴァーチャル・ハイスクール」作り
(第一、熊本北、東稜)
12 こんな語彙・文法指導を
(尾道東高等学校)
13 シラバスの開発:
コミュニケーション能力を育てるために
(岡山城東)
14 生徒の伸びを知りたい!:
リスニング・スピーキング診断テストの開発・実施・検証報告
(千里)
15 独自のスピーキングテストで「話す」力と意欲を伸ばす
(米原)
16 地球市民育成プログラム:
テーマ学習を「学校設定科目」として
(高知西)

【本音トーク座談会】今こそSELHiについて語ろう

[調査報告]SELHiの実態調査:中間報告(小池生夫・椎名紀久子・緑川日出子・村野井仁・若林茂則)

<資料>SELHi指定校一覧

本号収録の授業実践校一覧

■巻末付録・授業実践資料集

(1)-(32) 授業実践1〜16の資料一覧
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