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電子辞書指導の視点:
必要は「使用」の母・「使用」は継続の友



埼玉県立皆野高等学校教諭 中畝 繁
Nakaune Shigeru
   
「英語教育」2006年3月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" March 2006 Vol. 54 No. 13(Taishukan)


手持ちの学習資産を活用しよう・させよう

1)土台の日本語が段々小さくなっている
3年の担任として6月の面談で、ある生徒に進路の確認をした。「君は就職希望だったね。学校斡旋? それとも縁故かい?」「アッセン? エンコ? 何それ」「斡旋は学校紹介かな、縁故は家の人のコネで就職できるってことかな」と説明した。これらの漢語はこの生徒の人生で初めて接した語。日頃生徒と接していて気になることは、生徒の日本語語彙の小ささだ。更なる苦境に遭遇するのは、初任で困難校に配属された同業の後輩たちだ。その悲鳴は「先輩、大変っす。日本語が通じません」だ。

arrogant を紙の英和で引けて語義にたどり着けても、それにふりがなが付いていない場合が多いので読みもそしてもちろん意味も分からないという生徒は意外に多い。「横柄な」はヨコエ?、ヨコガラ? 電子なら英和から国語にすぐ飛んで読みと意味を確認できる。こんなふうに日本語が弱い生徒にとって電子は頼りになる存在だったのだ。

教授法として高校で以前ほど文法訳読法が批判の矢面に立たなくなったのは、授業のコミュニカティブ化が進んだというより、一般の生徒が持つ訳読の際の英文法力も母語力も衰退したため、この古典的な教授法自体が現場で展開しづらくなったということが案外真相に近いのではないか。文法訳読法はもともと学習者の高い語学力に支えられて初めて可能なものなのだから。

2)英英は怖くない
ある進学校の公開授業(読解)を参観した時は驚いた。そのクラスの40人のうち38人が電子を使い、2人が紙だったのだ。私が教えているクラスだと多くて割合は6:4でまだ紙が優勢だからだ。さらにこの上級学習者である生徒たちは教員の指示が無くても机上のgadgetを適宜使っている。だが、大胆に机間に入り込んで子細に観察して見ると英英を参照する生徒はまずいなかった。できる高校生でも、英英は読解に際して依然敷居が高いのだ。つまり優秀な彼らにも専門家の我々の手ほどきが必要なのだ。

電子辞書の良さの1つは、英語の基礎が分かっている学習者が英英を気軽に使えるということだ。紙の英英だと定義の英語が分からない場合、また別の英和をひっくり返さなくてはならない。これでは英英初心者はめげる。高校生用の電子辞書に搭載されている英英はEFL-ESL系なのだから、出会った英語が分からなければ引いて語義や例文を読めばよいのだ。定義文の中に分からないものがあれば、英和に飛ぶか、更に英英で該当の語へ飛べばよい。英英を中心に読解作業をすると、引く行為自体が本人の英文への露出時間増となる。その結果読みの総量を増やすことに繋がる。分からなければすぐ引くか類推してから引くかも指導上あまり気にしなくてよいと思う。手持ちの認識語彙が増えていけば、以前引いた語は引かなくなる。直近に引いた記憶が残っていれば履歴から該当語に行くことになり、それが自分にとって憶えにくい語だということもわかる。更に自分の類推が正しいかどうかの判定は電子の場合引いてその場で確認できる。辞書を相棒にひとりでも学べる生徒は卒業後の継続学習が成立しやすいはずだ。

教師の役割は患者に対する医師みたいなものだろう。生徒の症状に合わせ、学習段階を見て「この教材は辞書は使わず速読・多読」「この教材はきっちり辞書を引いて精読」のようなギアチェンジを助言していく必要がある。大切な視点は、紙ではいくつかしか出ていない英英和辞典の仕様が電子では常態なのだ、ということだ。

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「英語教育」2006年3月号



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【特集】「辞書」の使い方・使わせ方

紙の辞書、電子辞書、コーパスなど様々な「辞書」のある時代、溢れる情報の中で、すぐ答を知りたがる生徒にどう指導するか。教師自身はどう活用できるか。“使える”辞書の最新ガイド。

<生徒にどう使わせる?>  
中学校での辞書指導:ハジメの一歩 関 典明
高校での辞書指導 工藤洋路
電子辞書指導の視点:
必要は「使用」の母・「使用」は継続の友
中畝 繁
<教師も使いこなそう!>  
英語教師をめざす人のための辞書活用ガイド 村野井 仁
ネット辞書、コーパス、新しいレファレンスの使い方 西納春雄
文法・語法を調べたいときのお奨めは 西澤正幸
<辞書を読む・辞書を楽しむ>  
語義のあり方について 国広哲弥
翻訳者の事典の読み方 若島 正
引用句辞典の楽しみ方 豊田昌倫
[コラム]  
最初に教えておきたい辞書の読み方 池田真澄
辞書のレーベルを読もう 井上永幸
子どもと英語辞書で遊ぶ 久埜百合

■英語教育時評
■菅先生に聞こう! 授業の悩みQ&A
■大学の英語の授業をデザインする
■英語の辞書を考える(最終回)
■ゆかいな仲間たちの「授業見学」(最終回)
■新しい教室英文法

◆英国の中世神話・伝説の世界
◆〈巻頭エッセイ〉英語ダイアリー(最終回)
◆本当はコワイ! イギリスホラー(最終回)
◆アメリカ都市物語(最終回)
◆柴田元幸の洋書びっくり箱
◆使ってみよう、ネイティヴの表現(最終回)

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中島平三 著(なかじまへいぞう)
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はじめに
第1章  文――英文全体を概観する
第2章  主語
第3章  助動詞
第4章  動詞
第5章  目的語
第6章  補部
第7章  付加部
第8章  従属節
主要参考文献
索 引

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