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中国の英語教育から見えてくるもの


明治大学教授 尾関直子
Ozeki Naoko
   
「英語教育」2006年2月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" February 2006 Vol. 54 No. 12(Taishukan)


学習量の違いがものを言う!

中国では、英語教育が一般的には小学校3年から始まり、高校3年までの10年間、小中高一貫教育が行われている。小学校3・4年生では、20分授業が週4回、5・6年生では、20分授業が週2回、40分授業が週2回ある。中学、高校の6年間では、45分授業が週4回ある。しかしながら、これはあくまでも国が定めたカリキュラムであり、実際には、3つのカリキュラムが中国に存在する。1990年代から地方の教育行政機関や学校にカリキュラムを独自編成する権利が与えられた結果、地方が独自編成したローカル・カリキュラムもある。さらに、学校が独自編成したスクール・カリキュラムも存在する(王、2004)。

従って、英語教育が盛んな北京や上海の小学校では、2001年より、国が定めた授業時間数より多い授業時間数を実施し、また、国が定めた到達目標以上の目標を設置してきた。例えば、北京東四九条小学校では、小学1年生から英語を学び、小学校卒業時点で1600語の習得(理解できる単語ではなく、話したり、書いたりすることもできる単語)を目指している。1600語といえば、中国の中学校の卒業時に身につけていなければいけない単語数に匹敵する。

学校によってもカリキュラムは違う。中国では政府や地方行政機関から指定された重点中学や重点高校、また、モデル校などの優秀校があり、これらの学校では、英語教育に重点を置いている。例えば、北京師範大学第2附属高校はモデル校であるが、高校1・2年では、45分の英語の授業が週5回、高校3年では週6回ある。

このように、英語の授業時間数が日本とは比べものにならないぐらい多いのが中国の中学と高校の実状であり、今回は触れなかったが、その授業時間の多さに比例して、中高の英語の教科書も前期100頁以上、後期100頁以上あり、中身も濃いものになっている。

終わりに

中国の英語教育は地域差があり、今回視察した学校が優秀な学校であることは、よく理解している。しかし、日本人で、留学を経験せず、非常に優秀といわれる学校機関のみで英語を学習し、中国の生徒のようにネイティブ・スピーカーのような発音で流暢な英語を話す生徒に私は会ったことがない。今回視察した学校をみるかぎり、中国の英語教育は、日本の英語教育と比べて、そのシステム、理念、目標設定の高さと内容、授業時間数のどれにおいても明らかに優れていたし、進んでいた。日本は、学習者が言語運用能力を身につけられるように、どうしてもっと早く英語教育を改革しなかったのか悔やまれるが、今からでも決して遅くない。学習指導要領や授業時間数の抜本的改革を早く推し進めて頂きたい(この中国視察は、平成15・16年度日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)(1)課題番号1602010(研究代表者小池生夫)の交付を受けて実施されたものである)。


◆参考文献

王智新(2004)『現代中国の教育』明石書店.
緑川日出子、笹島茂(2003)「中国の英語課程標準
 (監訳)」『平成14年度科学研究費補助金基盤研究(B)
  研究成果報告書 現職英語教員の教育研修の実態
  と将来像に関する総合的研究』英語教員研修研究会. 150-203

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