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中国の英語教育から見えてくるもの


明治大学教授 尾関直子
Ozeki Naoko
   
「英語教育」2006年2月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" February 2006 Vol. 54 No. 12(Taishukan)


私が担当している上級の英語クラス(大学2年生)では、15人の学生のうち4人は中国からの留学生でTOEICでは600点から840点のスコアを持っている。ほかのスピーチ・プレゼンテーションの英語クラスでも、流暢な英語を話し、堂々とスピーチやプレゼンをこなすのは、中国人留学生である。彼らのような英語の実力のある学生を中国はどうして育てることができるのか、かねてから興味があったが、今回の北京、上海における視察でその理由がよく理解できた。中国の英語教育は、確実にその目標を達成すべく機能しており、優秀な学生を生み出していた。

中国での英語教育が日本と明らかに違う点は、以下の3つに集約できる。

1. 学習者の英語を習得しようとするモチベーションが非常に高い。
2. 英語教育が質的に優れている。課程基準(中国の学習指導要領)の目標が明確であり、授業内容もそれを実現するものとなっている。
3. 英語の学習量が多い。英語の授業時間数は課程基準に基づき多くなっている。

学習者の高いモチベーションはどうして?

私が訪れた北京東四九条小学校の英語の授業では、教師の指示に従って、小学3年生の児童がディスカッションをしていた。4人グループで4コマ漫画に沿って物語を作るためである。“I think he says, I will eat you.”と1人の生徒が言うと、“Yes! Then he runs away.”や“No, no. He won't run away.”と別の生徒が言う。子どもたちは、非常に活発に意見を言い合う。先生がグループごとに物語を発表するように指示すると、あちこちで生徒の手が上がる。前から練習していたのではないかと疑うほどである。その疑念を払うかのように、次の新しい物語に入っても、先生の質問に次から次へと子どもたちが手をあげる。小学生なので、英語に対する好奇心が強く、モチベーションが高いのはわかる。しかし、今回訪れた高校や大学では、高校生や大学生も、小学生と同じように積極的に教師の質問に答え、ペアワークやグループワークで自分の意見を述べていた。

生徒のモチベーションが高い理由について、それぞれの学校で先生たちに尋ねてみた。まず、世界で活躍するには英語が必要であることを生徒たちが実感していること、子どもの将来を考え、親たちが英語教育に熱心であることなどが、その背景にある。さらに中学や高校では、進学するためには、英語の成績が良いことが絶対条件であることが生徒たちのモチベーションを高めている理由であるそうである。

特に、高校生が大学に進学するには、国の統一入学試験(上海と北京は独自の試験をしているが科目の配点は同じである)を受ける必要がある。その配点は、英語(英語は外国語の選択必修科目の1つなので、日本語やロシア語でもよい)150点、国語150点、数学150点と3科目で450点となり、その他3科目(物理、化学、生物、歴史、政治、地理等より)で300点となっている。英語の配点が国語や数学と同じように、750点中150点という非常に高い配点となっていることも、生徒のモチベーションを高める1つの要因となっている。

それでは、大学生の場合はどうであろう。中国では、CET (College English Test)という英語専攻ではない大学生の英語能力を測る統一試験が行われている。この試験は、1987年から CET 委員会が教育部(日本の文部科学省に相当)の援助を得て年2回実施している。毎年100万人以上の大学生がこの試験を受験している。中国には、英語専攻ではない大学生がどのような英語を学ぶべきかを規定した「大学英語課程教学要求」がある。これは、日本の学習指導要領の大学版のようなもので、大学生がそこで規定されている学習内容を習得したかどうかをこの試験で問う。試験する技能はリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4技能すべてである。試験には、Band 4(4級)用とBand 6(6級)用があり、4級は大学生が卒業時に到達する英語のレベルと想定し、6級は4級よりさらに上のレベルである。ほとんどの大学ではBand 4の取得を卒業条件にしている。また、大学の中には、4級を取得しないと卒業は許すが学位は出さない大学もある。

この試験結果は統計処理され、大学別、省別、学年別などのデータが公表される。この試験を中心になって作成した上海交通大学のYang Huizhong教授にデータを見せてもらったが、中国のトップ6といわれる大学の学生の4級合格率は見事にずば抜けてよかった。各大学のCETの4級合格率や6級合格率が公表されることにより、大学は英語教育に力を入れざるを得ないことになる。さらに、学生も4級を取得しないと大学を卒業できないとなれば、大学在学中に英語の学習に力を入れざるを得ない。日本の大学教育においても、英語教育の質を向上させるため、このような統一テストの導入を考える必要があるのではないだろうか。

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「英語教育」2006年2月号



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