「英語教育」2005年6月号(大修館)→
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From "The English Teachers' Magazine"
June 2005 Vol. 54 No.3 (Taishukan)
Q. 何かが欲しい時の表現に I want .
を使うのはいけないのですか? ホームステイ先で「を下さい」というお願いのつもりで使ったら、不快な顔をされてしまいました。
日本人はI want orange juice. / I want more bread. /
I want another blanket. というような言い方をしてしまいがちですが、所望や依頼の表現としては「問題な英語」です。「とにかくオレンジジュースにありつければ、どんな言い方だっていいじゃないの。文法的にも正しい文だし」と反論する方があるかもしれません。でも、どの言語であれ外国語でコミュニケーションする時は、文法的に正しい
(correctness) だけでは不十分で、発話がその言語が話されている社会で適切と認められる言語行動であるかどうか
(appropriateness) にも留意することが必要です。
のどが渇いてホストマザーにジュースを所望するような場面で I want .
という言い方をすることについて、ネイティブスピーカーは impolite, rude, imposing,
offensive であると反応しています。これが彼らにとって無礼で、押し付けがましく、不快に響くのは、話し手の意向を一方的に押し付ける含みがあるからです。同様に、ホストファミリーの都合を考えず、I
want to take a shower. などと一方的にこちらの欲求を伝えるのもことばのマナー違反です。
Please give me some orange juice. も「問題な英語」です。いくら
please を付けたところで命令文に変わりはなく、文として correct ではあっても appropriate
ではありません。そこで相手の意向を伺うかたちの表現が英語社会では多用されるわけですが、では Can
you give me some orange juice? というお願いの表現は適切でしょうか?
実際にはこのような場合、ネイティブスピーカーは Can I have some orange juice?
という表現を多用します。相手に依頼する表現より許可を求める表現が好まれるのです。これは英語社会の価値観が言語表現に反映されているからです。ジュースを相手にもってこさせるか、自分でとりにいくのか、つまり相手の行動に頼る
Can (Could) you ?
という言い方より、相手の許可に基いて自分で行動する Can (Could) I ?
という言い方が、彼らの感覚にしっくりするようです。
さて、ジュースをもらいたい程度のことなら、Can I ?
ぐらいの丁寧度が適当でしょうが、もっと重い用件の依頼では、前置きや説明を添えると共に could
/ would を多用します。Could you do me a big favor?
Would you mind looking after my seven cats
while I'm gone on business? のような文中では、could / would
は仮定法の意味があり、「もし、あなたさえよければ」という相手の意向を遠慮がちに伺うことになるからです。
私たちがアドバイスの表現として覚えている You had better .
も実は高圧的な言い方で「問題な英語」とされていますが、例えば日本庭園を見たがっている人に対して、代わりに
You could (might like to) visit Kenroku-en.
というような言い方をすれば、「もしよければ、そうなさったら」という相手の意向を尊重する含みが加わります。何かが欲しい時も、I'd
like some orange juice, please. とすれば丁寧になります。「問題な英語」は、would
/ could / might をうまく使って negative politeness のコツを掴めば、かなり解消されると思います。
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