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ネイティブ教師向け
シャドーイングは万能薬なのか
神戸市外国語大学教授 玉井 健
Tamai Ken
「英語教育」 2005年3月号(大修館)→
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From "The English Teachers' Magazine"
March 2005 Vol. 53 No.13 (Taishukan)
教室では今、様々なリスニング指導法についての模索が行われ、その中でシャドーイングについての関心が高まっています。果たしてシャドーイングはガマの油のように何にでも効く万能薬なのでしょうか。それともその効果はどこか限定的なのでしょうか。リスニング力向上にいくつもの方法があるならば、医者が患者の症状を見て適切な薬や療法を選択するように、教師も生徒の症状にあわせて指導法を処方する必要はないでしょうか。
本稿ではシャドーイングという薬の効能の範囲、その処方について、リスニングのメカニズムを概観しながら考えてみたいと思います。
リスニングとシャドーイングの接点
シャドーイングは「聞こえてくるスピーチと同じ発話をほぼ同時に口頭で再生する行為」と定義できます。一方でリスニングの目的を、「聞こえてくる音声をとらえて意味理解をし、必要な情報をとること」とする時、シャドーイングはどこに貢献できるのでしょう。
リスニング力は大きく言うと、語彙・文法・音韻・一般的知識などの知識面の能力 と、音声をとらえてしばらく保存しながら料理する認知・処理能力 の2つに分けて考えられます。コンピュータに譬えれば、前者は変換のためのデータを持ったワープロソフト、後者は分析処理を行う
CPU(計算装置)ということになります。ワープロソフトがよくできていれば意味理解もスムースでしょうが、我々
ESL 学習者の持つ音韻・語彙・文法知識はデータも少なく、相互の連携も悪く、なかなか望み通りの処理はしてくれません。それどころか、とんちんかんな変換をして我々を困らせるのです。前首相が、クリントン大統領の
"I'm Hilary's husband." という紹介に対して、 "Me,
too." と発言したことがありましたが、変換ソフトの具合が悪かったのでしょう。CPU
の方も音声を一時的に保存できる量1) や処理の速度は母語に比べてかなり遅いようです。
つまりリスニング力の向上は、知識を増やして自分のワープロソフトを強力にしていくことと、自身の
CPU の性能をアップすることの2つの方法があることになります。これまでは前者の方に指導者の関心があったように思われますが、シャドーイング訓練は、後者の方に積極的に光をあてる指導法だと考えられます。
リスニングで理解に至るまでの過程
では、リスニングの過程を説明しながらシャドーイングの効果について考えてみましょう。次頁の図は人がスピーチを理解する時、どのように脳がそれを処理して、理解にたどり着くかの過程を
Baddeley(1986)のワーキングメモリ・モデルを基に表わしたものです(二谷、1994を改変)。聞こえた音声は、まず言葉としての特徴をチェックされ、意味があると判断された情報には注意が向けられます。空港でも、自分の目的地がアナウンスされたら耳をそばだてますね。どうでもよい音はすぐに消えてしまいます。注意というのもリスニングの大切な要素なのです。
その次はワーキングメモリと呼ばれるところで聞こえた音の保持と分析がなされます。真ん中の卵はパソコンの
CPU 部分で、音声が料理されるまな板のようなものだと思ってください。横に広げた羽の左側は視覚空間的スケッチ帳と言って視覚イメージを一時的に保存するところです。右側部分は音韻ループと言って、聞こえた音の一時預かりのようなところです。ループの上では、聞いた音を心の中で繰り返して維持します。・Qualitative
research. . ." と聞くと、「クォリテイティブ…何だったっけ」と心の中で意味を考えつつ繰り返しますね。心の中で、聞いた音をもう一度音声化することを内語化(subvocalization)といいますが、これって何となくシャドーイングに似てると思いませんか。そうです、シャドーイングは、この音韻ループで行われるサブ・ボーカライゼーションを意識的に声に出して行う訓練と考えられるのです。シャドーイング訓練を集中的に行うと音の復唱技術が著しく向上しますが、これは、ループ内に取り込める音の量(イントネーションやアクセントなどのプロソディ情報を含めて)が増え、正確に保持されることによってリスニングが容易になることを意味すると考えられます。
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リスニング力はどうやって測るか:
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センター試験 傾向と対策
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はじめに:あやふやな説にだまされないために
第1章 まず母語習得について考える
第2章 学習者の習得順序と外国語の学習法について考える
第3章 学習者の誤りについて考える
第4章 学習者要因について考える
第5章 臨界期仮説について考える
第6章 脳科学からのアプローチについて考える
第7章 簡単に信じない力と研究の面白さ
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