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ディクテーションで繰り返される間違い

東京外国語大学助教授 斎藤弘子 Saito Hiroko
   
「英語教育」2004年12月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" November 2004 Vol. 53 No.10 (Taishukan)

ネイティヴも間違える

オーストラリアの小学校に通っていたとき、毎日のようにディクテーションをやらされた。先生が読み上げる文章を書き取るのであるが、英語のネイティヴスピーカーたちでも、なかなか満点がとれず、四苦八苦していたものだ。
 
彼らは、難しい単語の綴りを間違えるのはもちろんのこと、日本人からすれば「なぜこんな間違いをするのか」という間違え方をすることがあった。大人でも間違える代表格はI could [would/should/might] have ....のhaveをofと書くことである。発音するとき、このようなhaveの/h/は脱落し、母音が弱化して [] となるが、これがofの発音と同じだからである。日本人学習者がこの間違いを犯さないのは、普段このhaveを/h/の部分もはっきりと [] ないし「ハブ」と発音しているからである。

日本人の間違い

では、日本の学習者はどのような間違いを繰り返すのか。実際に大学1年生に課したディクテーションの誤答例を分析しながら考えてみよう。以下はTruman CapoteのMiriamを読んだときに行ったものである。事前に文章を見ている学生も、けっこう典型的な間違いを犯した。
 
誤答例:
1) *"It's a canaly," she said.

【正解と誤りの原因】
canaryの/r/を/l/と聞いてしまって起きた綴りの間違いである。同様にMiriamを*Mil( l )iam と、lで綴った学生もかなりの数に上った。この位置での/r/の発音はそれほど聞き取りにくくないので、この間違いを犯す学習者は明らかにまだ/r/と/l/の聞き分けができていない。他にsとsh、bとvを書き間違える場合も、 rとlと同様、日本人が不得意とする発音および聞き取りがそのまま文字に現れた例である。
 
誤答例:
2) *Miriam got up and move to a corner where a cover bird cage hung from a ceiling chain.

【正解と誤りの原因】
moveはmoved、coverはcoveredとならなければ文法的におかしい。しかし、実際の発音ではたしかに/d/の部分は聞こえない。それぞれ次にくる語の始まりが子音なので、/d/はmovedのときは完全に脱落し、coveredのときは舌先を歯茎に接触させるがそれを破裂させずにbirdの発音に移るので、いずれの場合も/d/が聞こえないからである。


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「英語教育」2004年12月号



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【特集】生徒はここで間違える!──傾向と対策
生徒は変われども、毎年繰り返される同じ誤り。なぜ生徒は典型的な誤りをおかすのか、どう教えればそれを避けられるか? 誤りを前向きに捉えた効果的な指導法を探る。

生徒はここを間違う!:
22年分のノートから
田尻悟郎
〈文法編〉
なぜすべてthatを入れるのか
堀切一徳
なぜ冠詞を正しく使えないか 萩野俊哉
なぜ仮定法が理解できないか 長倉賢一
英語の時制のシステマティックな
指導について
大田博司
間違えやすい時制表現アラカルト 小岩井秀樹
語順が身につく授業への小さな提言:
中1の授業実践から
日臺滋之
〈コミュニケーション編〉
ディクテーションで繰り返される間違い
斎藤弘子
スピーキングでなぜいつも同じところで
間違えるか
堀切一徳
どうして「英語らしく」読めないの? 小川裕子
〈単語・発音編〉
生徒はなぜその単語が読めないか、
書けないか
手島 良
単語指導にも考える過程を 政村秀實

●〈巻頭エッセイ〉世界を味わう
■小学校の英語教育はいま…
■ゆかいな仲間たちの「授業見学」
■研究と現場を結ぶ 英語の使い方
■〈リレー連載〉英語教育時評
●大地の声:ネイティヴ・アメリカンの智慧の言葉
●シェイクスピアの12か月[12月]
●A Kiwi's View of Japan
●柴田元幸の洋書びっくり箱
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