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生徒に自信を持たせる方法

埼玉女子短期大学教授 都築幸恵 Tsuzuki Yukie
   
「英語教育」2004年11月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" November 2004 Vol. 53 No.9 (Taishukan)

生徒に自信を持たせるアプローチとは

アサーティブネス・トレーニングのカウンセラーが用いたこのエクササイズから、どのようなヒントを引き出すことができるでしょうか。

(1)誰もがあるがままの自分を受け入れ、自信を持つことができる、という信念を生徒に伝えること――ロジャーズの自信に関する考えは、「こんな自分は自信をもつに値しない」というパースペクティブと対極をなします。

コップの中の半分の水を見て「半分しか入っていない」と思う人と「半分は入っている」と思う人がいるように、自分の足りないところにばかり目を向ける人と、そうでない人がいます。心理学の知見によれば、不完全な自分でも肯定的に受け入れられている人のほうが、精神的に成長したり変容できると言われています。
 
(2)他のクラスメートと比較しながら「相対評価」で生徒を見るのではなく、いわば「絶対評価」で各人の長所や強みを見いだし、本人にフィードバックすること――自信は、他人より自分が優れていることを基盤とするものではない、というメッセージが生徒に理解されることが必要です。
 
生徒をほめる時に、「他の生徒と比較して」という見地からばかりでなく、「その生徒のユニークな個性」に着目することが大切でしょう。また、生徒が「自分は他人と比較して何も優れている特質がない、平凡でとりえがない人間だ」と考え、自信を失っているようなら、上述のエクササイズのように、どんなに小さなことでも自分なりに誇りにできることを思い起こさせるのも良いでしょう。
 
(3)成績などの限られた基準だけで生徒の強みを見つけるのではなく、多面的な基準を用いて生徒を把握すること――自信のあり方は各人各様で、1人の教師の想像の範囲をはるかに超えるもののようです。上述のエクササイズを、実際に私の授業で試みたことがあります。学生が何を誇らしく思うか、どんなできごとが自信につながっていくかは、実に個性的でした。過去を振り返って自分なりに心に残る体験を繋ぎあわせて語ってくれる内容は、一人ひとりの学生のユニークな自己認識や価値観を照らし出し、私にとっては新鮮な発見に満ちていました。授業で見ている側面とは全く違った一面を見せてもらったようでした。
 
このような自己概念や価値観の多様性に鑑み、教師は、幅広く多面的な価値基準によって、生徒自身の自己概念を尊重しながら、生徒の強みを把握することが大切だといえましょう。勉学以外にも、その子が自分なりの成功を感じられるいろいろな機会を作ってあげることや、趣味、アルバイト、家庭生活など学校以外の生活を知ることも、基準の多様化につながることでしょう。
 
(4)気持ちのこもったほめ言葉をかけること――自分をほめてくれる先生との出会いで、勇気づけられて向上することができた、または、自分の長所に気づかせてくれた先生との出会いが人生の転換点となった、などという趣旨の発言は、よく耳にするところでしょう。タイミングをとらえて、心の奥底から発せられた真実のこもったほめ言葉が、生徒を大きく成長させることは間違いないでしょう。どの生徒でも、先生からほめてもらいたいと願っているはずです。
 
ただし、上手にほめるというのは存外に難しいもののようです。おとなのほめ言葉に依存するようになってしまえば、常にほめられていないと不安を感じる子どもになってしまうでしょう。つまり、「この間はほめてくれたのに、今回はほめてくれない」というように感じてしまいます。
 
ことに、自信がない生徒の場合には、自己認識とあまりに違っているほめ言葉は、空疎なものに聞こえ、嬉しく感じられないこともあります。また、ほめる側が何らかの「下心」を持って自分を操作しようとしているのではないかと疑い、反発を招くこともあります。このような場合、せっかくのほめ言葉も逆効果となってしまうでしょう。
 
(5)「ほめる」よりむしろ「聞く」ことによって、教師が生徒を受容していることが伝わる場合も多い――自信を失っている生徒は、「あなたには良い点がたくさんあるのだからもっと自信をもちなさい」などと言われても、かえってあるがままの自分を受け入れられていない気持ちになります。このような場合には、教師が生徒の気持ちを変えようと積極的に語りかけるよりも、生徒の言葉に耳を傾けるほうが、生徒にとって成長の糧となります。
 
生徒の自信のなさも含めて、その子の自己認識を聞き出し、それに沿って理解を深めることが、生徒の自己受容を促すのです。あるがままの生徒の心を理解しようと耳を傾け、理解の足らないところは質問してさらに生徒の話を聞こうとする教師の姿勢は、生徒に「自分は受け入れられている」というメッセージを伝え、生徒の自信に対して強いインパクトを与えるでしょう。これはロジャーズの提唱するクライアント中心療法――カウンセラーではなくクライアントが主役となって自らを語り、カウンセラーは共感的で正確な、上質の聞き役となる――のメソッドと呼応しています。

【注】ローゼンバーグの"Self-Esteem Scale"(1965) を、山本真理子、松井豊、山成由紀子(1982)が邦訳したもの。堀洋道、山本真理子、松井豊編(1994)『心理尺度ファイル』(垣内出版)pp. 67-69に所収されている。

◆参考文献◆
カール・ロジャーズ著、畠瀬直子訳(1984)『人間尊重の心理学―わが人生と思想を語る』創元社

(埼玉女子短期大学教授)


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