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【特別記事】
教師のためのメディア・リテラシー
―コロンバイン高校事件の背景を読む―

立命館大学教授 朝尾幸次郎 Asao Kojiro
   
「英語教育」2004年11月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" November 2004 Vol. 53 No.9 (Taishukan)

1999年4月20日、コロラド州デンバー郊外の町、リトルトンにあるコロンバイン高校。昼食時、生徒で混雑し始めたカフェテリアでふたりの男が、突然、銃を乱射し始めた。ふたりはなおも銃を乱射しながら図書館に向かった。犯人はエリック・ハリスとディラン・クレボールド。卒業を目前に控えたコロンバイン高校の生徒であった。この銃撃の犠牲者は生徒12人、教師ひとりの13人、また、重軽傷者は23人。犯人のハリスとクレボールドも自殺して事件は終結した。

◆インターネットは両刃の剣か

アメリカの銃犯罪史上、類を見ないこの事件の全容が明るみに出るにつれ、その背景について大きな議論が起こった。ハリスとクレボールドはなぜこのような犯行に至ったのか。
 
そのひとつとされたのは過激な歌詞とスタイルで知られるロック歌手マリリン・マンソンである。マンソンの歌詞は暴力と憎しみをテーマとしたもので、犯人のふたりはマンソンの音楽に心酔していた。このため、銃撃事件後、マンソンは予定していたすべてのツアーの中止に追い込まれた。
 
もうひとつはテレビゲームである。ふたりはパイプ爆弾を学校にしかけており、爆弾は連鎖反応により次々と爆発するはずであった。このアイデアはふたりが遊んでいたDuke Nukemというテレビゲームから得たものであるようだ。
 
しかし、なによりも大きな非難の対象となったのはインターネットである。ハリスは自分が公開したWebページでパイプ爆弾の作り方を解説し、高校襲撃をほのめかせる記述をしていた。また、ページにはどくろ、悪魔、銃などの過激な画像が使われていた。
 
事件後、コロンバイン高校を管轄するジェファソン郡学校区が公開しているWebページには全国からお悔やみのことば、祈りのことばが数多く書き込まれた。このWebサイトは顔も知らない人々が悲しみの気持ちを通いあわせる場となった。
 
もし、犯行の背景にインターネットがあったとするならば、一方でインターネットは犯行を生み出す場ともなり、もう一方で悲しみにくれる人々をつなぐきずなともなった。インターネットは果たして両刃の剣なのであろうか。

◆メディア・リテラシー

ハリスとクレボールドがコロンバイン高校に入学した1995年は日米ともにインターネットが急激に社会に広まり始めた年である。コロンバイン高校の図書館ではパソコンがインターネットに接続され、生徒は自由に利用することができた。ところが、翌年から利用規定が厳しくなる。教育関係以外のWebページを開くことは禁止された。生徒証には交通信号のような緑、黄、赤のマークが印刷されている。認められたサイト以外のページを開いているのが見つかると、まず緑のマークが消される。次にもう一度見つかると黄色のマークが消され、年度末までインターネットの利用は禁止される。インターネットの学校への導入と同時に、現場では利用法について悩みが始まっていた。
 
テレビ、新聞、雑誌、音楽などのメディアの特性を理解し、それらが形成する意味を批判的に評価し、みずからも適切なメディアを使って表現する力をメディア・リテラシー(media literacy)と呼ぶ。これはインターネットが世に現れる前から教育運動として始まっており、現在ではインターネットをもその対象に含んでいる。
 
メディア・リテラシー教育が最も進んでいるのはカナダで、その最新の内容はMedia Literacy Networkという次のサイトで知ることができる。
http://www.media-awareness.ca/english/
 
インターネット関係の内容はふたつある。ひとつはWeb Awareness Canada→For Teachersとたどる。これはカナダの状況にあわせた解説であるが、ほぼそのままわが国にもあてはまる。もうひとつはBe Web Awareというサイトである。
http://www.bewebaware.ca/english/
 
これはMedia Literacy Networkが開設したサイトで、インターネット関係のメディア・リテラシーを集大成している。たとえば、Privacy Invasionという項では、次のような方法で個人情報がオンラインで収集される危険があることを警告している。(1)商用Webサイト上のコンテストなどへの参加で申込書に記入する場合、(2)フリーのメール・サービスなどに登録する場合、(3)メールやインスタント・メッセージ・サービスで個人プロフィールに記入する場合、(4)チャット・ルームなどで他人に個人情報を知らせる場合。
 
コンピュータやネットワークを授業に導入しようとする場合、メディア・リテラシーは必ず加えたい項目だ。これはワープロや表計算ソフトの使い方、メール送受信の方法を知ることよりもはるかに大切なことである。メディア・リテラシーはメディアを批判的に見る目を養うという点で、情報機器の操作を中心とした情報リテラシーより高度な視点がある。
 
しかし、メディア・リテラシーは現在、教育現場に起こりつつある危機を解決する決め手となりうるだろうか。もし、ハリスとクレボールドがメディア・リテラシーの授業を受けていたら、銃撃事件は起こらなかっただろうか。教師にとっては、Webページやメール、チャットの利用に潜む危険、陥穽を生徒に教え、考えさせるだけでは十分ではない。学びや社会とメディアがどのようにかかわっているのか、その洞察をもつ必要がある。


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コーチングに学ぶ上手な話の聞き方
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教師の駆け込み寺「悩める教師を支える会」 諸富祥彦
教室の心理学 キーワード&ブックガイド 編集部
●特別記事
教師のためのメディア・リテラシー:
コロンバイン高校事件の背景を読む
朝尾幸次郎

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