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生徒に自信を持たせる方法

埼玉女子短期大学教授 都築幸恵 Tsuzuki Yukie
   
「英語教育」2004年11月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" November 2004 Vol. 53 No.9 (Taishukan)

自信って何?

心理学の研究でしばしば用いられる、自信の尺度としてローゼンバーグの自尊感情尺度があります。(注参照)
 
1. 少なくとも人並みには、価値のある人間である
2. 色々な良い素質をもっている
3. 敗北者だと思うことがよくある*
4. 物事を人並みには、うまくやれる
5. 自分には、自慢できるところがあまりない*
6. 自分に対して肯定的である
7. だいたいにおいて、自分に満足している
8. もっと自分自身を尊敬できるようになりたい*
9. 自分は全くだめな人間だと思うことがある*
10. 何かにつけて、自分は役に立たない人間だと思う*

*のついている項目は逆転項目です。この尺度から明らかなように、自信(または自尊感情)とは、他人と比較することによる優越感や劣等感ではありません。自分について「非常によい」「非常に優れている」(very good)と感じることではなく、自分について「これでいい」「まあまあの人間である」(good enough)と感じる度合なのです。ローゼンバーグは、自信を「自分自身で自己に対する尊重や価値を評定する程度」と定義しています。
 
アメリカの高名なカウンセラー、ロジャーズは、「問題行動や不適応は、あるがままの自分を受容できないことが原因となっている」と提唱しました。子どもが発育の途上で、周りの人から無条件に愛されず、条件つきでしか受容されない場合、「理想の自分」=「あるべき自分」と「現実の自分」との乖離をおこします。このような子供は、健全な自信をなくし、問題行動や不適応が発生してしまうのです。

カウンセラーの「自信を取り戻すエクササイズ」

ローゼンバーグやロジャーズの自信に関する考え方によれば、自分をあるがままに受容する態度は、本来すべての子どもが身につけているはずのものと言えるでしょう。それでは、自信を失っている子どもにどのように本来あるべき自信を取り戻させることができるでしょうか。
 
ここで、私が米国に留学していた時代に参加した、アサーティブネス・トレーニングでの経験をお話ししたいと思います。なぜなら、トレーニングの最初に行われた「健全な自信を取り戻すためのエクササイズ」が非常に印象的だったからです。
 
アサーティブネスとは、自分の主張を、他人に対して攻撃的になることなく、穏やかに、しかしきっぱりと表現することです。例えば、借りたものを返してくれない知人に対して、並んでいた列に横入りしてきた見知らぬ人に対して、自分がやりたくない仕事を無理におしつけようとする同僚に対して、コンフリクトを恐れて何も言わずに我慢したり、かんしゃくを起こして攻撃的な対応をとってしまえば、対等かつ率直なコミュニケーションができているとは言えません。アサーティブとは、他人のいいなりになったり攻撃的になったりすることなく、互いの意見や気持ちを尊重した対等なコミュニケーションのあり方です。こうしたアサーティブネスの前提として、「私は自己主張するに値する人間なのだ、私には自分の権利や要求や意見を正当に表現する権利があるのだ」という信念(=自信)がなければなりません。
 
それでは、カウンセラーは、トレーニングの参加者(20名程度だったと思います)の自信を取り戻すために、どんなことをしたでしょうか?――これはなかなかの難事業だと思われませんか。例えば、やみくもにほめたとしても「初対面の人が私を理解できているわけがない」とかえって参加者の不信をあおるでしょうし、商売でほめているだけだと勘ぐられるかもしれません。
 
カウンセラーは参加者を4人ほどの小さいグループに分け、参加者全員に紙を配布し、このような指示を出しました。「1.幼稚園時代〜小学生時代、2.中学・高校時代、3.高校卒業〜現在を思い出して、それぞれ自分なりに誇らしく思えることを3項目ずつ書きなさい。誇らしく思えることは、あくまで『自分にとって』であって、他人から見て大きなことかどうか、客観的にみてすごいことかどうかは無関係です。」
 
参加者たちが悪戦苦闘しながら、何とか記入し終わったのを確認した後、カウンセラーは無地のラベル(タテ5cm×ヨコ10cmほどのシール)を配り、次のように指示しました。「一人ひとり、グループメンバーに対して、自分の書いた項目とそれぞれの状況について説明して下さい。聞いているメンバーは、ラベルに、その人から受ける人柄の印象をどんどん書いていって下さい。ラベルは何枚使ってもかまいません。」
 
こうして、参加者は1人ずつ、自分の記入した項目について、背景説明を加えながら発表していきます。一方、グループメンバーは、発表者から受ける印象をラベルに書き入れていきます。全員が発表し終わると、カウンセラーから次の指示が与えられます。「それぞれの発表者に対して、あなたが感じた印象をフィードバックしていきましょう。なぜ自分がそのような印象を受けたのか説明しながら、ラベルをその人の服に貼っていってください。1人の発表者についてメンバー全員がフィードバックをしたら、次の発表者に移って下さい。」
 
こうして、参加者一人ひとりが、「粘り強い」「逆境に強い」「知恵がある」などとポジティブな言葉が記入されたラベルを貼られながら、発表のどの部分からそのような印象を受けたかについてのフィードバックに耳を傾けます。自分が発表したことに関する印象ですから、「そんなことありません」などと反ばくするわけにもいかず、もじもじとほほえみながら説明を聞いている参加者が多かったようです。参加者たちは、それぞれの「忘れていた偉業」を思い起こして、自分はそう悪くない人間だという自信へとつなげることができたようでした。


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