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学習ストラテジー指導は
5段階アプローチで

明治大学教授 尾関直子 Ozeki Naoko
   
「英語教育」2004年10月号(大修館)→ 目次はこちら 定期購読はこちら
From "The English Teachers' Magazine" October 2004 Vol. 53 No.7 (Taishukan)

5段階アプローチによる授業例

レッスン・プラン
タイトル:Write about Bullying (いじめについて書いてみよう)
高校1〜2年:ライティング ★★★☆☆3)
言語指導の目的:いじめをなくすために、自分は何ができるかについて作文する。
ストラテジー指導の目的:エッセイを書くことは高校生にとって、やりがいがあるが難しいタスクである。しかしながら、自分がすでに持っている、いじめに関連する知識や経験を生かせば、作文は書きやすくなる。
中心とするストラテジー:Activate Background Knowledge(背景知識を活性化させる)

指導手順
(1) 準備段階(preparation):
あるトピックについて作文をするとき、どのように作文をするのか生徒に聞いて、生徒の答えを黒板に書きます。
“When you write about something, say, about Your Favorite TV Programs, flrst of all, what will you do? Do you think about your favorite TV programs?”

(2) 提示段階(presentation):
1.「いじめをなくすために、自分は何ができるか」について作文を書くことを告げます。ここで、「背景知識を活性化させる」というストラテジーを紹介します。
“You are going to write an essay about what you can do to stop bullying as high school students. First, we are going to learn the activate background knowledge strategy. Activating your background knowledge means using information you already know about a topic. Thinking about what you already know helps you get ready for writing.”
2.「背景知識を活性化させる」ストラテジーを教師が実演して見せます。
“I saw a classmate being bullied when I was an elementary school pupil. I did not do anything to help her at that time, because I thought it had nothing to do with me. But now if I see someone bullying, I will tell him / her to stop it directly because now I can distinguish between right and wrong.”
3.作文を書くときに、自分がすでに持っている知識や経験を活用すると、作文が書きやすくなることを説明します。
“As you have seen, activating your background knowledge will help you generate ideas for writing an essay.”

(3) 練習段階(practice):
1.いじめをなくすために、自分は何ができると思うかを生徒に聞きます。または、それについて、生徒同士で話し合いをさせるのもよいでしょう。
“What will you do if you see a friend of yours bullying?”
“What will you do if you see a friend of yours being bullied?”
2.いじめをなくすために、自分は何ができるかについて考えたり話し合ったりしたことを、作文に活用するように言います。
3.生徒に作文を書かせます。

(4) 評価段階(evaluation):
背景知識を活性化させることが、作文を書くのに役立ったかどうかを尋ねます。
“Did you activate your background knowledge when you wrote the flrst draft? Was it helpful?”

(5) 応用段階(expansion):
「受験」とか「授業評価」、「課外活動」など、生徒の学校生活に関連したトピックで、作文を書かせます。

中学での学習ストラテジー指導では、さらなる足場がけを

学習ストラテジー指導は、中学、高校、大学のどの教育レベルにおいても、また、どのような教材を使用していても、行うことができます。例えば、上記の高校生用のレッスン・プランを中学で使用する場合、どのような工夫をすればよいのでしょう。
 
まず、ストラテジー指導に用いる言語ですが、高校生用レッスン・プランでは、オール・イングリッシュで行っていますが、中学では、日本語で行っても全く構いません。重要なことは、学習ストラテジーをいつ、どこで、どのように使えばいいのかを学習者が理解し、実際に使えるようになることだからです。
 
また、中学生に学習ストラテジーを指導する際は、高校生よりも、さらに丁寧な教師の「足場がけ(scaffolding)」が必要となります。具体的に、どのような「足場がけ」が必要なのか考えてみましょう。

【足場がけの具体例】
準備段階では、「サッカーや野球の試合をする前に、どういう準備をする?」などの生徒が理解しやすい質問をする必要があります。すると、生徒から「ストレッチ運動をする」、「フォーメーションを考える」、「ピッチャーのくせを研究する」など、さまざまな答えがでてくるでしょう。その後、「作文を書くときも、サッカーや野球の試合をするときと同じように準備が必要です。作文を書く前にどのような準備が必要だと思う?」と質問し、作文を書く前にどのようなストラテジーを使ってきたかを生徒に意識させます。
 
提示段階で学習ストラテジーを紹介するときも、生徒に分かりやすく説明する必要があります。例えば、「今から『いじめをなくすために、自分は何ができるか』について作文を書きます。まず、いじめについて自分が知っていることや経験したことを全部思い出してみましょう!トピックについて、自分が今までに知っていることをできるだけ思い出すことを『背景知識を活性化させる』といいます。これは、作文を書く前の大事な準備です。」と、ストラテジーをわかりやすい言葉で説明します。
 
評価段階では、「チェックリスト」を用意すると、生徒は自己評価をしやすくなります。生徒は、「チェックリスト」を使い、作文をどれぐらいうまく書けたのか、学習したストラテジーを実際に使ってみて役に立ったか、などを評価します。

チェックリストの例
・Did thinking about bullying help you write a composition?
・Can you do the same thing to plan other compositions?

おわりに

学習ストラテジーを指導するときに5つのステップをふむというのは、あくまでも基本に過ぎません。授業には時間の制約があるので、5つのステップをすべてふむ必要は必ずしもありません。大事なことは、学習者のメタ認知を養成することです。それぞれの教育現場にふさわしいストラテジー指導を気軽に行ってください。

[注]
1) 「JACET(大学英語教育学会)学習ストラテジー研究会」メンバーが今回の特集記事を執筆しています。
2) この文献は、「特集」の8編の記事すべてに共通の文献です。Chamot, A. U., Barnhardt, S., El-Dinary, P. B., & Robbins, J. (1999). The learning strategies handbook. New York: Longman.
3) ★は中学、高校それぞれにおけるタスクの難易度を表わします。★―容易である★★―やや容易である★★★―普通である★★★★―やや難しい★★★★★―難しい

(明治大学教授、JACET 学習ストラテジー研究会代表)


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学習ストラテジー指導は5段階アプローチで 尾関直子
導入期の指導:
ストラテジーは使いながら身につけさせよう [中学1年]
大和隆介
ストラテジーで楽しく学ぼう[中学2〜3年] 木村みどり
内容把握にストラテジーを[高校(英語1)] 山崎朝子
中島優子
タスク活動にストラテジーを[高校(OCI)] 大須賀直子
三浦智子
“self-monitoring”を取り入れて
 [高校(ライティング)]
廣森友人
苦手な生徒にこそストラテジーを教えたい
[高校(リーディング)]
木村 隆
さまざまなスキルへの転用も意識させて
 [大学]
藤岡真由美
真野千佳子

●〈巻頭エッセイ〉世界を味わう
■〈新連載〉小学校の英語教育はいま…
■ゆかいな仲間たちの「授業見学」
■研究と現場を結ぶ 英語の使い方
■英語教育時評
◎大地の声:ネイティヴ・アメリカンの智慧の言葉
◎シェイクスピアの12か月[10月]『ヴェニスの商人』
◎A Kiwi's View of Japan
◎柴田元幸の洋書びっくり箱 なぜか惹かれる悪い夢―The Artist of the Missing
他  

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第1章 語
第2章 語に関する事実
第3章 辞書
第4章 草創期
第5章 『オックスフォード英語大辞典』
第6章 現在まで
第7章 辞書の使用者と使われ方
第8章 辞書における意味
第9章 語義以外の情報
第10章 語源
第11章 学習者用辞書
第12章 アルファベット配列を捨てて
第13章 辞書の編集
第14章 辞書批評

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