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[座談会]
"めざせ100万語"とは!?
─多読は授業で実践できるか─
       
酒井邦秀
Sakai Kunihide
電気通信大学助教授
柴田武史
Shibata Takefumi
弘学館中学校・高等学校教諭
太田 洋
Ota Hiroshi
東京学芸大学教育学部附属世田谷中学校教諭
   
「英語教育」2004年2月号(大修館)→ 目次はこちら
From "The English Teachers' Magazine" October 2004 Vol. 52 No.12 (Taishukan)

楽しく読んで評価はしない

酒井
いろんな先生から、訳させないでどうして生徒が理解していることがわかるのか、という疑問がよく出されますが、僕は試験をやらないし、理解度チェックをやらないし、感想も書かせない。

次の本に手を出すようならば前の本は理解できている、理解したことにしましょうというふうに答えます。ここはなかなか受け入れられにくいところです。

評価には点数による評価と、先生による主観的な評価と2つありますね。先生による主観的な評価というのは、点数による評価と同じぐらいに客観性のあるものだそうですが、私のクラスの学生とは常に毎時間話をして、どの人がどんなふうに読んできたかという記録は全部見ている。だから主観的な評価は常にやっています。

太田
先生が一人ひとりに「いまのところはわかっている?」とか「面白い?」とか声をかけられるときは、今読んでいるものは大丈夫かということを聞きたい感じですか。

酒井
そうですね。「わかってない」と答えることはまずないですから、「わかります」と答えるまでの間とか表情でもって、ちょっと苦しそうだなとか判断しています。それに私は回りながら、ちょっと難しめのものを読んでいる学生については、分速どのぐらいで読んでいるかをいつもチェックしているんですよ。ページをめくったら時計をみて、次のページをめくるまで間にどれくらいかかったかをみて、大体分速70語だと、これは無理して読んでいるのは間違いない、あるいは日本語に訳しながら読んでいると判断して、どう?と聞きにいく。ちょっとでも「…わかります」というのにためらいがあるようだと、やめようと言っています。

私は読書手帳に必ず近況報告をやってもらうんですよ。バイトがたいへんだったとか、仮免までいきましたとか、あさって誕生日ですとか書いてあるんですよ。そういうのを話題にして、先生は生徒がどのぐらい読んでいるかを監視するために歩き回っているんじゃないんだというメッセージを出すようにしています。

太田
先生が生徒をうまくエンカレッジしているんだなというのがよくわかります。生徒がよく多読の授業で書くのは、「この授業は自分のペースでやれるからいい」と。自分のペースで自分のやりたいようにというのは、生徒にはすごく魅力的なのかなと。

酒井
そうなんだと思いますね。大学生の場合にも、自分のペースで好きなように読めるからよかったというのは、学生による授業評価の中によく出てきますね。

最終的に成績をつける材料は、私は出席だけなんですよ。去年は1回休んだだけで「良」になってしまいました。


――それでは風邪も引けないですね(笑)。

酒井
そうです。大学だとそういうムチャなこともできますからね(笑)。

進学校で「100万語多読」に挑戦

――柴田先生は実際に「100万語多読」の方法で実践していると伺いましたが。

柴田
私は今の学校の英語教育を変えたいと思っていろいろ模索してきましたが、多読は今までやろうと思ってもなかなかできなかったから、この「100万語多読」に飛びついたわけです。今勤めている学校は私立で、6年間の全寮制の中高一貫校、生徒は中学が45人の3クラス、高校が5クラスです。

私は今高2を教えていますが、昨年レベル3までの本を250タイトル、やさしい本は複数ありますから約300冊を買いました。予算がないので全部保護者に負担してもらいましたが、各クラスに学級文庫という形で同じセットを5つ買いましたから、本代が生徒1人当たり4,000円弱かかっています。で、授業を始めたのが1年生の3学期。これは別の先生にやってもらったんですが、週3時間の授業のうち1時間を本を読む時間にしました。

酒井
つまり45分か50分を?

柴田
50分ですが、小テストなどもするので、実質30〜35分ぐらいですね。それで読書手帳を毎回提出させて、生徒が何を読んでいるか、どれくらい読んでいるかを担当の教師が見て、判を押して生徒に返す。評価は何もしていません。提出したかどうかは評価に入れていますが、定期テストにも入れようがないから入れていません。


――授業中以外も読むのですか。

柴田
生徒にはもって帰っていいよと。紛失する心配があるので、最初は1冊借りて、読んだら返して次のを借りなさいと言っていたんですが、生徒の取り組みの差が激しくて、読まない子は授業のときしか読まない。もっと読みなさいという意味で、今は3冊ぐらいまで借りていいと言っています。

1月から始めて3月までやって、学年がかわって5月の中間考査のあとから、今度は私の授業でまた指導を再開しましたが、授業の切れ端の時間があると「あと10分あるな。じゃあ本を読む?」という方法です。それを夏休みまで続けたところ、その時点で1月からの累計が、202人中、50万語を超えたのが1人、20万語以上の子も案外おりました。10万前後まで達している子はかなりいました。

かなりの生徒が、英語を読むことはいいとは思っているようですが、それは、たいへんよい、楽しい、役に立つ、英語の力がつくと思っている子と、普通の授業でつまらないことをされるよりは、英語を読んでいるほうが楽しい、まだまし(笑)というレベルまで。

酒井
授業中にしか読まない人はどのぐらいいますか。

柴田
全体の3割。もしかしたら4割ぐらい。1割は必死に読んでいますね。


――1週間に何冊とか、目標は何かありますか。

柴田
1月に始めた段階ではノルマは決めていませんでしたが、5月に再開した際に、「君らが読めるのは、おそらく1分間に100語前後の人が多いだろう。1年後に100万語を達成するためには、1日30分で3,000語。これなら途中で休みが入ったとしても1年で100万語になる。つまり、1週間で約2万語読まないと100万語は達成しないよ」と言いましたが、なかなかそのペースでは生徒は読めません。

夏休みにハリー・ポッターを読んだという子と話をしたんですが、こういうことを言ったんです。「自分が読んでいるとき、訳している?」―「訳していない。」、「ではどんなふうに読んでいる?」―「英語の文字をみていると、英語で読んでいる声が心のなかで聞こえてくる」。つまり音読の速さで読んでいるわけです。「それは自分の声かというと、自分の声じゃない」と。

全員
ほう!

柴田
私は中1からこの子たちを教えていてたくさん英語を聞かせていますから、そういうモデルリーディングのような声が聞こえてくるので、それを追っているだけだと言うんです。この子は発音が非常に上手な子ですが、最近の模試の成績をみると、読解のところの成績がよくなっていますね。

酒井邦秀
電気通信大学助教授。SSS英語学習法を提唱。『めざせ100万語─ペーパーバックへの道』(2001年、ちくま学芸文庫)がベストセラーになっている。
柴田武史
弘学館中学校・高等学校教諭。長年にわたり多読授業を模索して、「100万語多読」にめぐり会う。現在授業で実践中。
太田 洋
東京学芸大学教育学部附属世田谷中学校教諭。多読授業を実践しながら、4技能の「合わせワザ」による英語習得をめざす。

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「英語教育」2004年2月号



月刊「英語教育」について
【特集】多読最前線――「めざせ100万語」学習法のインパクト
英語の多読学習法「めざせ100万語」が巷でブームだが、これは学校現場でも有効だろうか? 多読の英語学習の上での効果とは? 授業での多読指導法を探り,様々な素材を紹介する。

[座談会]“めざせ100万語”とは!?
多読は授業で実践できるか 酒井邦秀/太田洋/柴田武史
理系クラスでの多読授業 吉岡貴芳
西澤 一
ネイティヴスピ−カーの多読授業 ケビン・バーグマン
酒井良介
多読マラソン「読むゾー」で42.195Hに挑戦 藥袋洋子
読み聞かせから多読へ:塾での試み 中沢賢治
第二言語習得研究から見た多読指導 村野井 仁
〈コラム〉
英語教師の多読日記 田澤美加
多読授業のためのブックガイド 酒井邦秀/神田みなみ

■スローラーナーを励ます授業実践 コミュニケーション活動と文法指導
■ゆかいな仲間たちの「授業見学」 格闘する英語授業:チャンツを使ってミニ自伝
■英詩への招待 Nursery Rhyme : Solomon Grundy
■教師のための心理学講座 気質と教師のスタイル
■英語教育者のための言語心理学 現実の言語使用に基づいた言語獲得モデル
■研究と現場を結ぶ英文法入門 関係節/受身文と叙述
■英語教育時評 英語授業力の枠組み
■大地の声:ネイティヴ・アメリカンの智慧の言葉
◎世界のカレンダー 2月のブラジル:それぞれのカーニバル
◎Twelve Views of the Other World
◎アングロ・サクソン文明落穂集[373]
 Sir Paul Getty の「本の城」その2    他
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フォーマルかインフォーマルかなど

使える語・使えない語がずばりわかる【コア解説】
重要な類義語を「コア語」として詳説。
あまり普通でない語には「△」、使わない語には「×」を表示。
     


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