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[座談会]
"小中高一貫英語教育"を考える

司会
鳥飼玖美子
Torikai Kumiko
立教大学
出席      
小川隆夫
Ogawa Takao
戸田市立新曽小学校
河野敏也
Kono Toshiya
葛飾区立一之台中学校
小河(松崎)園子
Ogawa Sonoko
埼玉県立南稜高等学校
   
「英語教育」2003年10月増刊号(大修館)→ 目次はこちら
From "The English Teachers' Magazine" October 2003 Vol. 52 No.8 (Taishukan)

「文法+自己表現」のタスク活動

鳥飼
河野さんは中学校のどういう部分で実践と研究をされていますか。

河野
私はコミュニケーションをクリエイティブなものと捉えて、身近なことや自分のことを表現できるということを最終的な目標にしています。2年生の後半では“My Dream”という課がありますが、本文の内容を理解したあと、今度は自分の夢はどうなのかということをスピーチさせてみると、パティシエになりたいとか野球選手になりたいとか言いますね。自分に関連したこととして言葉を学んで、自分が英語で表現できるんだということを味わった生徒は、英語に生き生き取り組むようになる。

いかにそういう環境を生徒に与えるかということを考えて、タスク活動という、現実的な場面を取り入れた活動が言語習得に有効じゃないかといわれていますが、たとえばどの映画を見にいくかみんなで決めたり、どのコンピュータを買うかを決めたりするような、そういう現実的な場面をデザインするというようなことをやってみたいと思っています。

鳥飼
タスク・ベース・アプローチは、かなり新しい教授法ですね。これは教室外で使うことを念頭に置きながら、タスクを教室内で与えて使わせていくという指導法ですが、河野さんの研究の面白いところは、あるいは野心的といってもいいと思うんですが、そこに中学校英語の宿命ともいえる、文法的な知識を身につけるということを組み合わせようとしているところですね。

河野
そうですね。兵庫教育大学の_島先生が、中学生にとって混乱を起こしやすいような、現在完了形と過去形の対比とか、受け身と能動態の対比というような形をうまく使いながら、現実場面に近い場面を設定するということを提案されているので、参考にしながら研究しています。

タスクと文法事項をどう結びつけるかというところは私もいろいろ悩んでいるんですが、たとえばスポーツに興味をもっていれば、スポーツで何になりたいというので未来形の表現、しかし現実はこうしかできないというので現在形を使いながら表現できるような場面を、それぞれの中学校の教員たちが力を出し合って工夫していけば、その中学校独自の、非常にいい学習計画ができるんじゃないかなと思います。

そして生徒に「こういう場面ではこういうふうに言えたよね」というようなフィードバックが与えられれば、生徒も自分はああいうふうに言いたかったんだなとか、もっとうまく言えるようになるためにもっと読もうとか、いろんな気づきにつながってくる。そういう好奇心をかきたてることができれば、高校に行ってからもより深い、広い勉強になっていくんじゃないかと思います。

高校の授業:理解と表現は8:2

鳥飼
高校ではどうですか。

小河
中学校でコミュニケーション活動を重視されている先生から、「高校になったとたんに、文法が多くて、単語も難しくて、英語がキライになる子が多い。せっかく中学校で温度が上がってきたところに、水を差すようなことをやっていませんか」という批判をいつも受けてつらいんです(笑)。現実に高校では、8割は学習者からみると受け身的な、知識を取り入れるような指導にならざるを得ないかなというのが本音の部分ではあります。単語も増えてくるし、教科書も難しくなってきますから。ただ、高校においても総時間数のうちの2割、あるいはひとつの授業の中の2割は、コミュニケーションを意識したものに工夫していける余地があるんじゃないかと思っています。

鳥飼
具体的には?

小河
たとえばリーディングの授業で意味のとれた英文について、自分の考えを述べたり、意見交換をしたり、あるいはそのことを意識しながら教員も教えていくと、重要単語として指摘する単語も変わってくると思います。とにかく入試があるからこの単語を覚えなさいではなくて、あとから要旨を生徒が自分でまとめるときに大事な単語を意識しながら教材研究をして、この単語を覚えなさいと。そしてまとめるときに、自分の覚えた単語が使えれば生徒も自信をもつと思います。

単語テストでも、たとえばこの7つの単語を覚えれば環境問題について自分の意見が少し言えるようになるということで、その7つの単語を何回か書いたり使ったりして覚えさせる。environment とちゃんと言えて、書けるようになると、カッコいいと生徒も思いますからね。

ライティングの授業では工夫の余地がたくさんあって、理解活動とコミュニケーション活動の比率を1対1ぐらいにできるかもしれない。まず構文をきちんと復習して定着したら、ペアワークをして、考えを活性化させてから最後に文を書かせる。文を書いたあと、意味がわからないところを友だち同士でチェックさせて、それをリライトしてある程度意味がわかるようになってから発表するというような流れです。

また、オーラル・コミュニケーションの時間は、中学校でゲームなどは十分やってきているわけですから、高校だからできることをするというのが課題ですね。
 

こんな授業をしています(中学)
聞く・話す、そして文法も
授業では副教材を活用しながら、聞く・話すを中心とした言語活動を十分行うようにしている。特定の文法項目に焦点をあてたインフォメーション・ギャップのある言語活動を主に、基礎力の定着を図っている。語彙においては、授業で十分に音を入れて、100語単位で約1か月間、朝自習の時間を活用して書く練習を行った後にスペリング・コンテストを実施し、生徒の意欲を維持する環境づくりを心がけている。

教科書については内容理解が中心となるが、音読の際に登場人物の気持ちや場面を考慮して、ジェスチャーなどの非言語的要素を活用させながら、情感を持って読むことができるようにしている。

また、昨年度から2年生を中心に2クラスを3分割にして、基礎コースを2つに応用コースを1つとし、1クラス平均20名前後の少人数制度を取り入れている。これによりさらにきめ細かな言語活動を通して、実践的なコミュニケーション能力の育成につながる授業を模索中である。
(河野敏也)

鳥飼玖美子
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科教授。NHKテレビ「英会話」講師。中央教育審議会留学部会専門委員。著書に『TOEFL / TOEICと日本人の英語力』(講談社現代新書)、など。専門は英語教育、英語コミュニケーション論。
小川隆夫
1992年より、文部省指定・帰国子女受入地域センター校である大宮市立大宮南小学校で、国際理解教育の研究と外国子女、帰国子女の教育に携わる。1999年4月より現職。現在、立教大学大学院・異文化コミュニケーション研究科院生。
河野敏也
東京の江戸川区、足立区、葛飾区の3つの公立中学校を経験し、今年で13年目。現在、葛飾区立一之台中学校に勤務及び、立教大学大学院・異文化コミュニケーション研究科院生。
小河(松崎)園子
1983〜1993年、埼玉県立浦和第一女子高等学校勤務。1994年より現職。1995年、文部省派遣6か月研修でランカスター大学 IELE に学ぶ。現在、立教大学大学院・異文化コミュニケーション研究科の研究にも携わる。

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「英語教育」2003年10月増刊号



月刊「英語教育」について
【特集 I】ハリー・ポッターのイギリス
【特別記事】SELHiは今!?
【座談会】“小中高一貫英語教育”を考える 
【特集 II】2003年度 英語教育資料

【特集 I】ハリー・ポッターのイギリス
  ◆ハリー・ポッターを読んでいない読者のために
  ◆ハリー・ポッターから読むイギリス
   ハリー・ポッターはどこから来たか 富山太佳夫
   寄宿学校今昔、現代の学校制度 伊村元道
   ホグワーツ・エクスプレスと英国鉄道の旅 三澤春彦
   ペットとの暮らし 安河内志乃
   ロンドン暮らしとストリート・マーケット 村松美賀子
   スポーツが生まれた国、イギリスの現在 鈴木秀人
   呪文とことば遊びの世界 新倉俊一
   階級制度は今も 見市雅俊
   躾・虐待・イジメ―
 ―ハリーの向こう側に見えるもの
中野葉子
   いま子どもに人気の食べもの・飲みもの 近藤富英
   民族のるつぼ、多文化世界イギリス 小林章夫
   城・カントリーハウス・庭を訪ねて 杉惠惇宏
   魔法の国の本とジャーナリズム 清水一嘉
   闇の世界の謎をめぐって 中山 理
   イギリスではどんな英語が話されているか 浅羽莢子
【特別記事】SELHiは今!? 山岡憲史
【座談会】“小中高一貫英語教育”を考える
   鳥飼玖美子(司会)/小川隆夫/河野敏也/小河園子
【特集 II】2003年度 英語教育資料
   英語教育日誌 田島久士
   英語教師のマルチメディア教材活用法       
松本青也
   英語教育図書:今年の収穫・厳選15本        米山朝二
   雑誌掲載主要記事一覧 広野威志
   英語教育関係学会・研究会案内  
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