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英語教育に貢献するコーパス コーパスのさまざまな利用が可能になった現在、本書は、英語教育を再検討するために、言語の使用実態を把握したいと考える教育者・研究者に、コーパス利用の道筋を一から教える好書であろう。 本書は2部構成で、第1部「コーパス研究入門」は、I章「コーパスとはなにか」、II章「コーパス研究の技術」、III章「コーパスと言語の計量」からなり、コーパス分析の必須事項が、コーパスの概要、検索・分析の方法、結果の統計処理の順に説明され、第2部「コーパスと言語教育」には、IV章「コーパスと言語研究」、V章「コーパスと教材研究」、VI章「コーパスと学習者研究」と題して、英語教育への応用に供する研究成果と提言が記されている。本書の焦点が、英語教育のためのコーパスデータ活用にある点で、従来のコーパス入門書とは大きく異なる。 特徴を挙げると、I章の既存のコーパス概説では、資料収集法が詳述されている(Brown Corpusの無作為抽出テクスト2000語の開始と終了箇所など)。この抽出法はコーパスの代表性という、第2部の研究で重要な概念と関係する。II章では、近年注目の無料ソフトAntConcを使ったコーパス分析法を習得できる。特にIII章のコーパス分析に頻出する統計値の説明とカイ二乗検定のExcelによる実践例は有用である。 V章には、著者編纂のコーパス分析成果として、日本と韓国の英語教科書、FLOB CorpusとFrown Corpus、映画セリフコーパスの語彙比較、児童用英語語彙表の開発がある。前者の意味領域別(感情、食糧、娯楽など)語彙分類や、後者における日本語の作文や小学校教科書のコーパスの使用(日本語形態素解析ソフト「茶筌」とExcelvを使って語彙リストを作成)は斬新である。VI章では、日本語母語話者の英語を集めたJEFLL、NICT JLE、CEEJUSの各コーパスの分析結果から日本人学習者の英語使用傾向を示している。話者と発話内容の距離感を示す副詞(possibly、hopefully他)の不十分な処理他、興味深い指摘がある。 また、随所に有用な引用がある。Kennedy(1998)の言語項目ごとの研究に必要なコーパスサイズ(p.45)やLaufer(1992)の標準的な英文を読むのに必要な語彙数(p.81)など。 ただ、コーパスを積極的に英語学習・教育に活かすには、英語教員に、コーパス検索から英語の使い方が分かる喜びが必要であろうと評者は自戒する。その意味で、IV章の関係代名詞whichの時代や使用域による相違など各種分析例には、コーパスによる内面的言語研究成果の紹介も必要かもしれない。 異論も良書の証で、本書から著者の言語教育とコーパスに対する熱意と守備範囲の広さが見えてくる。 (立命館大学教授 梅咲敦子) >>『英語コーパスと言語教育 ―データとしてのテクスト』を購入する(Amazon.co.jp) 出典:「英語教育」2008年10月号(大修館) From "The English Teacher's Magazine" October 2008 Vol. 57 No. 7 (Taishukan)