「コーパス」ということばが広く一般に知られるようになったのはここ3、4年のことだろうか。2003年に放送が始まった NHK 外国語講座に「コーパス君」なる生き物が登場してから、今では学生でも「コーパスって聞いたことがある!」と言う。しかし、そこに「学習者コーパス」という変種がいること、そしてそれが SLA および教授研究に大きな役割を果たす可能性を持っているものであることはあまり知られていない。
学習者コーパスとは、第二言語学習者のアウトプットを大量に収集し、コーパス化したものである。本書は学習者コーパスに特化した業界初の専門書、Learner English on Computer(1998)を監訳したものである。原書が出版されてから10年を経ての翻訳本の登場は、この歳月の間に学習者コーパスに対する注目が徐々に増してきたということを表わしているだろう。今こそ、日本においてもより広くそれが知られるべき時が来たということではないか。
第1部の第1章では、編著者の S. Granger 氏が学習者コーパスの基本概念や構築に際しての留意点、SLA 研究の中での学習者コーパス・データの位置づけを記している。その際に、長らく SLA 研究分野のバイブルと言われ続けている R.Ellis 著、Studiesin Second Language Acquisition(1994)を随時参照している点で、本書はまさに「学習者コーパスと SLA を結び付ける1冊!」と言えるだろう。また、続く第2章「学習者コーパス分析のためのコンピュータツール」は、邦訳版用に原著者のF. Meunier氏本人が情報を最新のものに加筆修正している。この点が、本書の価値をさらに大きく高めていると言える。
第2部は8編の研究事例集だが、中でも興味深いのはフレージコン(phrasicon;phrase+lexicon)の使用を学習者 vs 母語話者で比較し、その抽出方法も丁寧に示している第5章だ。L2 発達に果たす連語の役割は近年ますます多くの注目を集めているところだろう。
Copyright (C) 2008 eigoTown.com Ltd., All rights reserved.
All other trademarks are the sole property of their respective owners.
No reproduction or republication without written permission.
本ホームページに記載の文章、画像、写真などを無断で複製することは法律で禁じられています。