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本・教材レビュー

[入門講座]英語の意味とニュアンス Book Review

[入門講座]
英語の意味とニュアンス

吉川 洋/友繁義典 著
A5判 192pp.
本体1,400円
大修館書店


 
 

優れた英語意味論入門書

英語の意味と形式のかかわりについては、これまでの英語研究で数多くの知見が明らかにされてきた。しかし、その基本的な要点をごく分かりやすく解説した入門書は少なかったといってよい。本書は、ややもすると無味乾燥になりがちな英文法の説明をできるだけ避け、「意味に重点を置いた文法」に基づき、読者を英語の意味とニュアンスの世界に誘うことを意図した英語意味論の入門書である。

全体は3章から成り、第1章は動詞句の分類と意味、第2章はあいまい性と意味、第3章は類似表現と意味を扱い、この3つの切り口から英語の意味の世界をのぞきこむ構成になっている。

第1章では、動詞句の「意味特性」を明らかにし、それに基づき動詞句を分類する。まず、意味特性を調べる方法として、2つの判断基準を設定する。判断基準[1]は、(1)What S did was to VPの形にすることが可能か、(2)carefullyやdeliberatelyで修飾可能か、(3)persuadeやforceの後のto不定詞として用いることが可能か、(4)命令形にすることが可能か。判定基準[2]は、(1)時間の副詞句in Xで修飾可能か、(2)How long did it take S to VP? で完了までの時間を計ることが可能か、である。

これらの判定方法により意味特性として「スル」と「ナル」を導き出し、この2つの組み合わせにより、「−スル」「−ナル」が状態動詞句、「+スル」「−ナル」が活動動詞句、「−スル」「+ナル」が到達動詞句、「+スル」「+ナル」が達成動詞句であると分類する。例えば、be asleepは状態動詞句、sleepは活動動詞句、fall asleepは到達動詞句であるが、それぞれの意味関係はBE, DO, BECOMEを用いて次のように形式化される。

 x sleep→x Do(BE-asleep)
 x fall asleep→BECOME(x BE-asleep)

入門書であるのでこのレベルの解説に留まっているが、意味と形式の関係を豊富な具体例に基づき丁寧に説明している。

第2章は、1つの表現に対し2つ以上の意味解釈が可能な表現を取り扱い、その要因を探る。数量詞の説明で絵図を用いた解説が分かりやすい。また、被影響名詞句、不定名詞句、裸の複数名詞句、副詞句、否定構文のあいまい性も要領よく整理されている。

第3章は、意味が互いに類似している表現を取り上げ、意味の差異やニュアンスの違いを明らかにする。具体例は、品詞や構文のほとんど全領域にかかわるが、形式が変われば意味も変わるという立場から、各表現に簡潔ながら的を射た解説がなされている。

本書は、意味に重点を置いた文法の観点から、文構造を表す樹形図は一切使わず、文法関係の違いは( )を用いて区別する。英語意味論への優れた入門書である。

(神戸女子大学教授 河上誓作)


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出典:「英語教育」2008年5月号(大修館)
From "The English Teacher's Magazine" May 2008 Vol. 57 No. 2 (Taishukan)


 

 
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