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小学校英語教育のための教科書 小学校英語教育を扱った書籍が年を追うごとに増えている。タイムリーなテーマであることは間違いない。理論、賛成論考、反対論考、指導技術、実践実例集、啓蒙等々、小学校英語の扱い方は多種多様にわたるが、本書の特徴を一言で表すと「教科書」である。もちろん、小学生のための英語教科書ではない。小学校英語の必修化を目前に、現職の小学校教員とこれから始まる教員養成関係者を主たるターゲットとした「小学校英語教育のための教科書」である。全体的に、小学校英語に関わる理論と実践を幅広く、かつ専門的になりすぎないよう、また今日明日の授業に備え得る内容構成を心がけている点が特徴である。 本書は3部構成である。第1部「概論(理論と背景)」は、言語政策、言語習得や脳科学、発達心理学など様々な学問領域からの小学校英語教育への示唆、さらに諸外国の事情を含んでいる。このパターンは他の書籍でもよく見られる構成ではあるが、各章、各節が簡潔に述べられているので、時間が取れない現職の先生方には親切であろう。 第2部の「実践(何をどう進めるか)」はやや理論めいたところもあるが、日々の教室に直結した第3部の「演習(指導の実際と教材)」への橋渡し部分として重要な意味を持つ。特に、第2部第1章の「小学校英語教育の目標の立て方」には、日本における小学校英語が特有の性質を持ち、単なる英語技能の習得ではないという点を明確に訴えている。この点が本書の基盤となる考えであるようだ。中教審初等中等教育分科会教育課程部会外国語専門部会のメンバーである編著者が、その場での審議を踏まえて論考しているだけに、今後の学習指導要領に近い形のものがここに示されているのではないかと思われる。中高大の英語教員が理解すべき小学校英語の位置づけを提唱している。その連続性を鑑みた小学校英語の役割に説得力を感じる。 先に本書が「教科書」としての性格を持つと位置づけたが、研修者に対する配慮が様々な形で現れている。頁の縁にある注釈、各論に導く参考文献、付録の歌や教室英語のCD、読者用のwebsite等、自己研修としても活用できる。読者用のwebsiteは本書に追補し、よりアップデートな情報や小学校英語教育のためのリソースを提供する。各章末に載せられた「課題」は比較的難しいものもあり、授業の中で研修仲間とディスカッションをしたくなるだろう。 小学校英語教育の是非論争では、「誰が教えるのか」が常に争点のひとつであった。日本では学級担任の可能性が高い。本書は単なる「教科書」に留まらず、英語の授業を目前にした学級担任を「励ます」気遣いも終始伝えてくれる。 (京都外国語短期大学准教授 相川真佐夫) >>『小学校英語教育の進め方 「ことばの教育」として』を購入する(Amazon.co.jp) 出典:「英語教育」2007年6月号(大修館) From "The English Teacher's Magazine" June 2007 Vol. 56 No. 3 (Taishukan)