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本・教材レビュー

英語辞典の研究 英語認識の改善のために Book Review

英和辞典の研究
英語認識の改善のために


八木克正 著
A5判 327pp.
本体3,400円
開拓社
 
 


英語教育界に警鐘を鳴らす書


本書は「教えられたように教えるな」というテーゼを英和辞典の領域で見事に実践したものである。著者の八木氏は「まえがき」で英和辞典を評価する場合、今までの記述の不備がどれほど修正されたか、古い語彙・語義・用法がどれほど排除されたかという点が重要であると説く。氏が同書で間違った例として挙げておられるWoman as I am(「譲歩」の意味ではwomanの位置にはgradableなものがくるのが普通)やI had my wife die.(「have+目的語+原形不定詞」で受身の意味を表すにはon meを付けるか、あるいは相応の文脈が必要)などは未だにこのまま正しい英語として教えられているのではないだろうか。

こういう間違いの原因は1915年刊行の斎藤秀三郎『熟語本位英和中辞典』(岩波書店)、さらに最終的にはCOD、OEDにまで辿り着くと八木氏は指摘する。同氏も同じ意見だろうが、この斎藤氏の辞典は当時としては画期的なものであり、間違いの責任はその内容の一部を無批判に踏襲してきた辞書編集者の側にある。

本書は9章から成り、1章「英語辞書学の諸問題」と2章「日本の英和辞典史概観」(卓越!)と3章「英和辞典の記述とCOD、OED」は総論の役を担っていて、以降、最終章まで各論として約80の語句や文が取り扱われている。

少し紹介すると、5章のI'm easy.(=I don't mind.)では、某辞典(旧版)のI'm easy whether to go to the movies or stay at home.という例は誤りだと指摘されている。私のインフォーマントも同意見でI'm easy about going to the movies or staying at home.と訂正した。8章の「forget it/forget about itの成句的意味展開」ではphraseology研究の先駆者らしく両者の違いが小気味よく述べられている(ただ、p.219の(10)"Aren't most good actors intelligent?" "They have to be. If they're not, forget it―the really good ones." の後半は「頭がよくなければ俳優になるのはあきらめなさい。いい俳優になるのはね」という意味だと思う)。9章の「because節主語構文」(Just because you're older than me doesn't mean you can tell me what to do.)では「いろいろな節や句が主語になり得る」という主張が見られるが、ここから氏の言語に対する記述的な姿勢を見て取ることができる。

この、八木氏による英和辞典の洗い直しの作業はインターネットの「語法の鉄人」(2001年2月から2006年2月まで)の連載から始まったが、現在、Fの項目まで進んでいると聞く。ぜひ、Zまで完成させられて、日本の英語教育界に警鐘を鳴らし続けていただきたい。

(大阪樟蔭女子大学教授 柏野健次)


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出典:「英語教育」2007年3月号(大修館)
From "The English Teacher's Magazine" March 2007 Vol. 55 No. 14 (Taishukan)


 

 
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