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制度のからくりを絵解きする 日本の教育行政をつかさどる役所は文部科学省である。ところが、小泉内閣は、構造改革特別区域、すなわち「改革特区」の名のもとに、内閣府がいわば直轄する形での「教育改革」に乗り出した。なかでも、区域内のすべての小学校で英語学習の機会を設けることを目指した特区事業を著者は「小学校英語教育特区」と呼ぶが、本書は、内閣府から認可を得た4特区を対象に、2004年度の各特区における小学校英語の実態を調査し分析考察した結果を踏まえて、改善に向けて提言を行おうとするものである。 本書の構成は序章とそれに続く6章からなる。序章で本研究の目的に触れたあと、第1章「日本の小学校と英語教育」では、戦後60年の小学校英語教育にまつわる「流れ」(むしろ淀みか?)を概観し、第2章「『小学校英語教育特区』と小学校の英語」で、件の4特区を対象に選んだ理由を問題点とともに紹介する。著者によれば、教育行政と学校現場とが協力的に進めた地区と学校現場の意向を受け入れずに進めた地区、およびその中間に位置する地区を敢えて選んだということである。 第3章「4つの特区の取り組みから見えてくるもの」と第4章「小学校英語教育特区の問題点」では、各特区の実践を分析した結果、浮かび上がった成果と課題について、(1)人的配置、(2)研修制度とコンサルテーション(専門的助言)、(3)教材内容、(4)行政の保護者・指導者とのコミュニケーションと教育的力量の形成、(5)教員の負担と力量形成、の各観点から分析し、結びの第5章「公立小学校への英語導入をめぐる課題」および第6章「公立小学校英語への提言」へと論を進める。 特区ごとに導入の経緯や条件が異なることから、著者は、あくまでも学校現場の実態を踏まえつつ、教育行政が教員や保護者の声に耳を傾け、十分な準備期間を設け、必要な予算と人材を投入して臨むならば、行政と学校現場の双方が経験を重ねることによって解決の糸口を見つけ得る課題も少なくないとの結論に傾いていく。それは、子どもたちを直接指導する立場にある教員が、行政の一方的な意思決定に直面して意欲を喪失する代わりに、子どもたちのために自らの力量形成を意図して真摯に努力する姿を、著者が日々目撃しているからでもあろう。 警世の書には違いないが、教育に携わる人たちへの著者の温かい眼差しが感じられる良書でもある。 評者としても、基礎的なコミュニケーション力の育成を目指す教育を標榜するのであれば、そのような教育を推進する立場にある者同士がまずはコミュニケーションを密にし、共通の目標とそこに至る方法とを見出すようになることが最優先の課題であると信じる。 (日本児童英語教育学会 関東甲信越支部長 後藤典彦) >>『「特区」に見る小学校英語』を購入する(Amazon.co.jp) 出典:「英語教育」2007年2月号(大修館) From "The English Teacher's Magazine " February 2007 Vol. 55 No. 13 (Taishukan)