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本・教材レビュー

Book Review

実践音声学入門


ジョン・カニソン・キャットフォード 著
竹林 滋・設楽優子・内田洋子 訳
A5判 308pp.
本体2,500円
大修館書店
 
 


空気の流れを感じ、実践する音声学


この本は、Henry Sweet から大きな影響を受けて音声学を志し、Daniel Jones に基本母音の指導を直接受けたという音声学者、J.C.Catford の A Practical Introduction to Phonetics 第2版(2001年)の全訳である。  

「すべての言語音は、様々な器官の動きによって動かされる気流が、別の諸器官の動きと構えによって……調整されながら声道を通過することによって生み出される」(267頁)という空気力学的なとらえ方を基盤にした124もの「実験」を行うことにより、読者が発音のメカニズムを実感できるような構成になっている。  

実験といっても特別な道具は何も使わず、秒を表示できる時計と手鏡、ペンか鉛筆以外は、もっぱら調音器官、つまり読者自身の口や舌を動かせばできる実験ばかりである。  

母音を作る口の形に関してCatfordはさらに次のように述べている:「音声学者としては……調音を通して自分で感じる感覚を自分自身の声道で熟知することが非常に重要である。これらの要素を知識として理解しているだけでは全く意味がない。」(156頁)  

これは一般音声学の書であり、特に英語の発音のみを扱っているわけではないが、原著者の母語である英語に関する記述がなんといっても一番多く、「実験」も英語の音を元に、さまざまな言語の音へと広げていくという手法をとっている。

また、これは phonetics(音声学)の本ではあるが、phonology(音韻論)、つまり個別言語の音素や音体系のこと、とりわけ英語の音体系と音素の異音、そして音節構造についてもセクションが設けられている。

Sweet の影響を受けたというCatfordであるが、1988年にこの著書の初版が出版されて以来、明らかに Catford の影響を受けた音声学の専門書や教科書が内外で多く見られるようになった。名著として広く知られている原著書についていまさら論評するのはおこがましいことであるが、このたび日本語訳が出たことにより、ますます広い読者層の役に立つであろう。  

訳者はいずれも音声学を専門としている学者たちであり、手堅い訳文に仕上がっている。外国人や俳優に英語や発音を教えたことがあり、長年米国のミシガン大学で教鞭をとっていた原著者の、目の前で語りかけるような文体と比べればやや堅い印象を受けるが、内容を正確に伝える訳文である。また、訳注には日本語に関する説明や日本語の例などが随所に挙げられており、参考になる。  

実際に口を動かし、発音を実践しながら読みたい本である。

(東京外国語大学助教授 斎藤弘子)


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出典:「英語教育」2006年10月号(大修館)
From "The English Teacher's Magazine " October 2006 Vol. 55 No. 8 (Taishukan)


 

 
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