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リーディング研究者の必読書 本書は著者が大学英語教育学会学術賞を受賞した著書『英語の書きことばと話しことばはいかに関係しているか』を基に、内外の研究成果や自身の研究データを多く加えて完成させた博士論文である。 著者の研究課題は第二言語の語彙やリーディングの処理がどのようになされるのか、それらの処理が音韻符号化や語彙アクセス後の音韻情報といかに結びつくのかを明らかにすることである。 本書は、第1章から第3章までが理論研究で、第4章から第7章までが実証研究である。第1章では、リーディングなどの認知情報処理の前提となるワーキングメモリーの心理機構と神経機構について詳述している。第2章では、二重経路仮説のうち音韻符号化によって語彙にアクセスする経路に焦点を当て、リーディングでのメンタルレキシコン内の語彙認知における心的過程の研究成果を紹介している。第3章では、読解モデルを概観した後、第二言語におけるリスニング技能のリーディングへの転移に触れている。入力モードは異なるものの、リスニングとリーディングは語彙認知後の高次元の処理において、ほぼ同一の処理過程を経ると見ている。その過程で統語的・意味的に処理する際の音韻符号化の役割について詳述している。 第4章では、英語を学ぶ日本人学習者に対する自由連想に関する実証研究と、単語の長さと頻度が単語認知に及ぼす影響についての実証研究が報告されている。第5章は、物語文と論説文のテキストの違いでクローズテストの妥当性に違いがあるのか、読解はどのような処理単位でなされるのか、についての実験報告である。第6章では、英語と日本語の単語を見て心的語彙にアクセスする際、音韻符号化とその結果生じる音韻表象がアクセスの前提となるかについて、実験結果を報告している。第7章では、構音抑制による干渉課題を課して、音韻符号化や音韻ループ内の内語反復が文章理解に如何に影響を及ぼすか、また音韻符号化が読みのチャンク形成に果たす役割の可能性についても検討している。 終章では、第二言語読解での音韻処理機構の役割についてまとめ、今後の課題について触れている。 本書の特筆すべき点は、語彙アクセスやリーディングなどの膨大な先行研究をよくまとめ、心理言語学・認知科学・脳神経科学などからの理論を取り入れ、精緻な実証研究を行なっていることである。日本のリーディング研究において極めて価値のある書であり、研究者に大いに参考になるだろう。リーディング指導者にとっては、リスニングの技能がリーディング技能に転移するように、「聞く」「話す」技能が「読む」技能の基盤になっていることなど、多くの示唆が得られるであろう。 (愛知学院大学教授 野呂忠司) >>『第二言語理解の認知メカニズム 英語の書きことばの処理と音韻の役割』を 購入する(Amazon.co.jp) 出典:「英語教育」2006年9月号(大修館) From "The English Teacher's Magazine " September 2006 Vol. 55 No. 7 (Taishukan)