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英語の意味世界を感じる本 「和訳を与えないで、生徒は英語の意味を理解できるのでしょうか」教員研修会では、高校の先生方から、よくこの質問を受ける。筆者の答は、基本動詞や前置詞のように、文脈によって多様な意味を表現する語については、"YES" である。 本書は、まさに "YES" の根拠となる本だ。認知意味論の研究成果を英語教育に応用し、語の概念の捉え方を目に 見える形で表現して、読者が概念を心で理解できるように工夫している。基本動詞と前置詞、語の性質からみる文構造を、"understand" にとどまらず "make sense" するための理論的な手掛かりを教えてくれる本である。 基本的に本書は、語のコア概念と多様性や拡張性という現象を、人間の心理学的な理解のプロセスに応じて描いている。認知意味論の図式投射、焦点化、差異化といった用語を使いながらも、語の意味の広がりを、イラストと日常的なわかりやすい例文で説明しているので、読者が、語の使われる状況をイメージしやすくなる。 基本動詞や名詞の概念から文法を捉える lexical grammar が紹介されていることも特筆すべきであろう。とくに、be 動詞と行為動詞の概念の違いから受身を、have や法助動詞の概念から派生する文の機能を説明するあたりは、構文のカテゴリー化によって文構造を理解してきた者にとっては、目からうろこの発想である。 「はしがき」には、原理的な理解―応用―知識の定着・習得というプロセスを通って概念を形成する ARNA メソッドを提唱しているが、読者の立場や目的に応じて異なった読み方ができるのではないかと思う。大学生や社会人の英語学習者にとっては、この本は語感を豊かにするリソースとなろう。英語教員にとっては、基本動詞や前置詞の概念を理論的に理解することによって、学習者の「わからない」「なぜ?」に答えられる知識が得られる本として、大切な一冊になるであろう。さらに、学習者にとっては、概念を感覚的に把握するためのわかりやすい例文の宝庫であることも見逃せない。 ちなみに第4章と第5章のチャンク・チャンキングの話は、第3章までの概念理解とは少々つながりにくかった。とくに、第3章では動詞を中心とする文構造の捉え方を説明している一方で、第5章では日本語の主語が見えない文について、英語の文の「主語の立て方」を説明するといったように、文構造の比較に焦点があたり、それまでの章とは考え方が異質であるように思われた。 白い表紙に赤字のタイトルが与えるすっきりした印象の通り、説明が明解である。読者が理解を確認できるように練習問題まで用意されている。まさに理論と実践を融合した、learner-friendly な本である。 (東海大学教授 鈴木広子) >>『英語感覚が身につく実践的指導 コアとチャンクの活用法』を 購入する(Amazon.co.jp) 出典:「英語教育」2006年9月号(大修館) From "The English Teacher's Magazine " September 2006 Vol. 55 No. 7 (Taishukan)