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説得力ある処方箋 これまで、本書のような本が翻訳されていなかったのが不思議である。実際、本書巻末には参考文献が合計127点掲載されているが、翻訳があるものは僅か3冊、それらの原著の刊行年が1965、1970、1990であることを合わせ考えると、本書(原著は2001年刊行)は、この分野における最新の学問的成果が盛り込まれていることが十分推察でき、また実際に、その期待を裏切らない。単に1冊の本を読み終えた以上の満足感を読者は得るはずである。それは、何故だろうか。 一つには、本書には大小いわゆる「囲み寸評」が合計70ある。大部分は、原著者以外の言葉であり、簡潔な小見出しに続き、本論とは何らかの繋がりのあるコメントが入っている。評者には、本文よりも印象深いものもあった。そう聞くと原著者は、おそらく苦笑いをすることだろう。しかし、これも読者を大いに楽しく読ませる誌面構成であることは間違いない。 第1章は動機づけについての過去の学説など、概論を整理している。既にこの方面に明るい人は読み飛ばしても構わないだろう。第2章〜第5章が本書の中心である。 1)動機づけのための基礎的な環境作り 2)学習開始時の動機づけ 3)動機づけの維持と保護 4)学習者自身の自己評価の促進 (以上の1)〜4)は本書の章のテーマであって、章題と同じではない。) 上記の章で中心となるのは、第3章と第4章である。各ストラテジーについての記述欄のデザインは、前述の囲みとは異なり、より目立つもので、ストラテジーとその具体例が短文で箇条書きされている。その囲みの外に、その解説を詳述している。まずその囲み中のいわば「まとめ」を読み、それに対して自分が賛同するか態度を決めてから解説を読む(か読まないか)のが程よいリズムを読書に作り出す。それが本書を比較的短時間で集中して読了させる「動機づけ」になっていることに気がついた時には、もう本書の終章にきていることだろう。この「おわりに」の章にはストラテジーをまとめた表があり、本書全体を簡便に振り返ることができるようになっている。例えば、ストラテジー17、「教室内での活動の単調さを打破することによって学習をより興味深く楽しいものにする」など、「常識的」なことでありながらその実現のための方策となると我々が豊かに持ちえているわけではない。そう思われる方は、ぜひ本書を手にしていただきたい。 近々、本書で提言されている35のストラテジーについて、それぞれ賛否をとりその理由を討議するという試みを、教員の研修会や、大学の英語科教育法のゼミで、ぜひやってみたいと思う。評者は、もうすっかり本書に動機づけられている。 (成城学園中学校高等学校教諭 関 典明) >>『動機づけを高める英語指導ストラテジー35』を 購入する(Amazon.co.jp) 出典:「英語教育」2006年2月号(大修館) From "The English Teachers' Magazine" February 2006 Vol. 54 No. 12 (Taishukan)