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本・教材レビュー

Book Review

幼児から成人まで一貫した
英語教育のための枠組み
―English Curriculum Framework

ARCLE編集委員会/田中茂範/アレン玉井光江/根岸雅史/吉田研作 編著
A5判 300pp.
本体2,800円
リーベル出版
 
 


デザインをどう評価するのか


小学校英語教育にせよ、SELHiにせよ、「英語ができる日本人」にせよ、大切なのは英語教育のデザインである。すべての関係者に見通しのよい展望を与える枠組みを創り出すことが英語教育には必要だ。ところがデザインというのは、自然科学的方法では得られない。自然科学は事実との相違によって記述と説明を洗練させるだけである。しかしデザインとは、あるべき未来を創り出そうとすることだ。デザインは目的をもつという意味で価値を担ったものであり、創造という意味でユニークなものである。価値を担ったユニークなものとは自然科学的方法が苦手とするものの1つだ。

だがもしデザインが重要なものだとしたら、私たちは優れたデザインと劣ったデザインを判別する術を身につけなければならない。それは自然科学の方法論ほどに明快な手続きではないが、私たちはデザインに関する判断力を高めなければならない。さもなければ日本の英語教育は、微細な事象の実証報告と思いつき的な政策放談の間に、索漠とした言論空間を残したまま、迷走し続けるだろう。

そういう意味で「英語教育のあり方の展望(grand design)が描かれ、詳細が記述されている」本書の評価は英語教育学界がきちんと受け止めなければならない課題だ。書評者も本書を読みながら、この本をもっと長い分量を使って評価したいという思いに駆られた。本書の編集主幹である田中茂範氏が関わる『コトバの「意味づけ論」』、『チャンク英文法』、『Eゲイト英和辞典』などに惹かれる読者諸氏もこの本で示されたデザインの評価にきっと興味をもつだろう。

本書のデザインに示されている「価値」に関しては、「たくましさとしなやかさを実践しながら英語で多文化を生きる」ことが注目される。これは、ネイティブ・スピーカーを唯一のゴールとする従来の価値観とは明らかに異なる英語教育のデザインである。

デザインの「ユニークさ」に関しては、英語コミュニケーション能力をcore English / language resourcesとmy English / task handlingの相互媒介的な関係で捉えたこと、発達的視点から年齢別の各「ステージ」ごとに「レベル」を設定したこと、教育文法を「規則の文法」「チャンキング文法」「語彙文法」「表現文法」の4つによって構成されるとしたところ、理論的には「認知的スタンス」と「意味構成主義的スタンス」をとることなどが注目される。これらの選択の「ユニークさ」は、前述の「価値」と結びついた「論理的一貫性」のあるものとなっているように思える。このデザインの「実効性」、「システムとしての改良・進化性」などについても吟味することが学界の課題だろう。本は著者によって書かれ、読者によって育てられる。

(広島大学助教授 柳瀬陽介)


>>『幼児から成人まで一貫した英語教育のための枠組み―English Curriculum Framework』を購入する(Amazon.co.jp)

出典:「英語教育」2006年1月号(大修館)
From "The English Teachers' Magazine" January 2006 Vol. 54 No. 11 (Taishukan)


 

 
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