アクション・リサーチ(以下 AR)は、授業者個々の日常の問題意識から出発して、授業を進めながら(in action)行う実践研究であり、対策を講じていくことである。問題意識はそれぞれの授業者によって異なる。従って、シンプルな理論とは異なり、AR
の実践研究は多様である。この多様性を前にすると、実践したことのない者には、その方法論が複雑なものに映るかもしれない。AR
の多様性はメリットであると同時にデメリットでもある。実際、このような点から AR に関心を抱いていることはあっても、その実践には躊躇している人が多いのではないだろうか。そのような人にとって、本書は効果的な処方箋となるだろう。
本書は3部構成である。第1部は長年現場の英語教師と共に AR に取り組んできた編著者による概論で、簡潔で分かり易い。Q
& A 形式で、AR に関して実践者たちから寄せられた質問に対する丁寧な回答も掲載され、読者が AR
に対して抱いている不安感を払拭し、実践に容易に向かうことができるように配慮されている。
第2部では、「基礎・基本」「リスニング」「学習意欲」等のテーマごとに AR の実践例が示されている。読者は自分の問題意識に近いものを参考にすることができるし、その他実践例からも、自分の授業を省察する様々なヒントを得ることができるだろう。そして、第3部では、AR
を取り入れた教員研修の実例が挙げられ、その効果が検討されている。
私見ではあるが、AR について知ること自体が有益なことであると考えている。自分の授業を省察するための視点が与えられるからである。筆者が関わっている教員研修でも、昨年度から
AR の洋書を集中研修のための読書課題とすることになった。AR の内容が授業者の視点から書かれているので、自分の授業について振り返る討論の時間がより豊かなものになるだろうとの期待からであった。結果として、参加者の討論は充実したものとなったので、今年度の課題図書も別の
AR 関連の洋書としたくらいである。
本書は AR を実践してきた編著者とその仲間たちによる報告書でもある。AR に本格的に取り組むかどうかに拘わらず、授業改善に真摯に取り組む人々にとってのリファレンスとなるものと確信している。
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