George Gopen & Judith Swan The Science of Scientific Writing
コラム
2009年11月04日
コラム
2009年11月04日
国立のある研究所で自ら生命科学の研究を進めながら、同僚・後輩の英語指導をする役割も担っているある科学者の方と先日、数時間にわたって理系の方々のための英語教育について語り合う機会をいただきました。私は自然科学(生命科学)での英語使用・学習についての情報を頂き、その代わりに日本の英語教育の現状をお伝えし、私がこれまで読んで面白かった本も紹介しました。この語り合いに結論めいたものがあるとすれば、それは残念ながら現在の日本の英語教育は科学者に対して十分に貢献していないということです。
しかし悲観論ばかり言っていても始まりませんから、少しずつ問題点を解明してゆきたいと思います。
以下は、その方からいただいたメールの一部です。皆さんにとっても貴重な情報かと思い、ここにその方の承諾を得て、掲載します。
柳瀬さん先日はありがとうございました。
ご紹介いただいた本をいくつか読んでみました。もしかして参考になるかもしれませんので、一科学者からの感想を書きます。上の3つが良かった物で、特に『理科系のための英文作法』がよかったです。
杉原厚吉 『理科系のための英文作法』(中公新書)
とても面白かったです。最も科学者に役だつ本だと思いました。前にご紹介したGeorge Gopenの理論に匹敵するものがあると思います。物理系の研究者は、ちょっと不思議な特徴的な日本語を書く人が多いのですが、そういった人に人気が出そうな本です。戸田山和久 『論文の教室』(NHKブックス)
面白かったです。論証のところは英語でも、理系でも役にたつと思います。しかも私の読んだことがある論理学の本よりはずいぶん読みやすいです。ただ文章の書き方の教えの部分は、日本語に特化しているので、残念ながら英語で論文を書かなければならない理系大学院生には使えないと思います。開米・森川 『ITの専門知識を素人に教える技』(翔泳社)
これは良かったです。個人的には、これまで聞いたことがない情報がいろいろあり、なるほどというのも多くて楽しめました。ドラマチックパターンなどは、特に、プレゼンテーションにも使えると思います。佐藤健 『SEのための「構造化」文章作成の技術』(技術評論社)
上の3つには負けますが、けっこうおもしろかったです。ただ日本語に特化している部分がほとんどなので、英語論文が必須の理系大学院生には使えないと思いました。これ以降はほぼ互角という感じです。
(中略)
いろいろ読んでみて、工学系の人がいう「技術文書」というのと、理学系の人が書きたい「科学論文」というのは、かなり違うものだと感じ始めました。誤りがない明解さというのはもちろんどちらにも必要ですが、理学系の科学論文では、それに加えて、読者を洗脳して納得させるストーリー展開というのが、より重要になってきます。そこが、最も学生たちに教えたい部分で、どの本でも見つからない部分のような気がします。
(後略)
このメールで印象的だったのは、理学系の科学論文ではストーリー展開が大切だということです。これはカーネギーメロン大学で20年以上研究生活を続けられ、ロボット工学の分野で最先端の研究を行なっている日本人科学者が強調していることでもありました。
金出武雄『素人のように考え、玄人として実行する』(PHP文庫)
理系の方々に資するため、文系の人間はもう少し自らの本丸である「語り」についてきちんと研究をするべきなのかもしれません。
語りの構造として有名な本としてはケネス・バーグの『動機の文法』がありますが、恥ずかしながら私は持っているだけで未読です。比較的新しいところではジェローム・ブルーナーの『ストーリーの心理学』でしょうか。これは一度読んだだけになっていますので、再読したいと思います。
その文系的課題はともかく、上記の生命科学研究者が何度も強調したのがGeorge Gopenの書き方指南です。幸いこの人の考えの概要はネット上で知ることができます。
The Science of Scientific Writing
http://www.americanscientist.org/issues/feature/the-science-of-scientific-writing/
著者(George Gopen & Judith Swan)自身は彼らの主張を7つの原則に凝縮しています。ここではそれらを私なりにわかりやすいように意訳して掲載します。原文は下のURLでご確認下さい。
http://www.americanscientist.org/issues/feature/the-science-of-scientific-writing/9
さらに私がこの論文を読む中で重要と思った点を以下に箇条書きします。
多くのポイントは上記の7つの原則から導き出せるものかもしれませんが、BやCは十分頭に入れておくべきでしょう。またEやFも、文頭文を書く際に覚えておくべきことです。さらに「読者の呼吸」を考えたHとIそしてJは具体的な助言かと思います。
このThe Science of Scientific Writingは長いものではありませんので、どうぞ読者の皆さんもご自分でお読み下さい。
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