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ストップウォッチで大学英語教育 - コラム

受講生はカスタマー!受講生のやる気と関心を持続させ、知的喜びを提供する度 合いが教員の評価基準です。常に新しい教授手法にチャレンジしています。

受講生はカスタマー

コラム

2009年07月08日

大学での英語教育は週1回、90分授業を15週間(1セメスター)行なって2単位というのが一般的です。残念ながら、この方式は英語力向上には不向きなものといわざるを得ません。理想的な授業形態としては、週5回、45分授業、週に2~3回ネイティブスピーカーとの少人数ディスカッション、週5回、60分間LLにおけるテープ自習というものではないでしょうか。しかし、日本の大学での英語教育の方式が近い将来、劇的に変わる可能性は極めて低いと思いますので、現在の形態の中でより効率的な方法を探ることにしましょう。

15週間といっても、オリエンテーションや試験などがあり、実質的には12回程度の授業となります。12週間、毎週同じ方式で授業を行ないますと、どれほど真面目でやる気のある学生でもたいくつし、授業に出席しなくなってしまうかもしれません。そこで、12週間を3~4つほどの部分にわけ、4週間(授業4回)~3週間(授業3回)で1つの授業方法が完結するようにし、3~4種類の授業方法を用いますと、受講生もあきがこず、最後まで授業に出席してくれます。

また、90分授業は、英語の実習授業では非常に長い授業時間になります。そこで、だいたいこれを3つの部分にわけ、30分単位で異なる作業を行ないます。そうすることで、目先の作業形態が変わることで、受講生の授業への関心を持続させることができます。このため、大学の英語教員は、多種多様な作業形態や授業方法を効率的に使いこなせることが必須条件になります。

受講生はカスタマー!授業を欠席するのは学生の責任、ではなく、授業がたいくつで役にたたないからです。有益で楽しい授業なら、お金を出してでも聴きたいという立ち見の受講生もでるのではないでしょうか。受講生を喜ばせることが私の楽しみ、という、ある意味でエンターテイナーのような感覚が大学の英語教員には必要なのかもしれません(と自戒しています)。

ストップウォッチ:ざわめく教室も一瞬でシ〜ンとなる秘法

私語などで教室がざわめいていても、一瞬でシ~ンとなる秘法があります。それはストップウォッチの使用です。受講生が10名であろうと80名を越しても、ストップウォッチを効率的に使って授業を進めればメリハリがつき、受講生の緊張感も高まります。以下に小生がよく使う手法を披露いたします。

(1)500語程度で書かれた新聞記事や一般雑誌の記事を用意します。内容は時事問題、ダイエット、学生生活など、ごくありふれたものを選びます。これを裏返して配布します。受講生への指示:「『よ~いドン』で表を向け、1分間でこの記事を読み、その後、再度用紙を裏返し、何が書かれていたか、自分の言葉でノートに書いてください。それでは始めます。よ~いドン!」といってストップウォッチを押します。1分後、「そこまで。用紙を裏返してください」と言います。500wpm(words per minute)の速度で英文を読める大学生はほとんどいないと思いますので、「目標としては、1分間で、この程度の長さの英文を読み、内容理解度を70~80%にする」と伝えておきます。大部分の受講生は大きなショックを受けているような顔をしているはずです。

(2)1センテンスが書かれている用紙を3枚ほど用意します。内容はごくありふれたものを選びます。まず、1枚目を裏返して配布します。受講生への指示:「『よ~いドン』で表を向け、1分間でこの記事を読み、その後、再度用紙を裏返し、何が書かれていたか、自分の言葉でノートに書いてください。それでは始めます。よ~いドン!」といってストップウォッチを押します。1分後、「そこまで。用紙を裏返してください」と言います。1分間で1センテンスですので、多くの受講生は何が書かれていたか、その内容や全文の日本語訳をノートに記すことでしょう。これを3回程度行ないます。

(3)1パラグラフが書かれている用紙を3枚ほど用意します。まず、1枚目を裏返して配布します。受講生への指示:「『よ~いドン』で表を向け、1分間でこの記事を読み、その後、再度用紙を裏返し、何が書かれていたか、自分の言葉でノートに書いてください。それでは始めます。よ~いドン!」といってストップウォッチを押します。1分後、「そこまで。用紙を裏返してください」と言います。1分間で1パラグラフですので、すべて読めない受講生もでてくるはずです。内容把握ができていない受講生が多くいる場合には、再度1分間で同じパラグラフを読んでもらい、理解度を高めてもらいましょう。これを3回程度行ないます。

(4)次は「上級編」ですが、主要新聞記事3パラグラフが書かれている用紙を3枚ほど用意します。まず、1枚目を裏返して配布します。受講生への指示:「『よ~いドン』で表を向け、2分間でこの記事を読み、その後、再度用紙を裏返し、何が書かれていたか、自分の言葉でノートに書いてください。それでは始めます。よ~いドン!」といってストップウォッチを押します。3パラグラフですので、時間は2分間としています。2分後、「そこまで。用紙を裏返してください」と言います。2分間で3パラグラフですので、すべて読めない受講生が多くでてくるはずです。この時点で、この記事から是非把握して欲しい点を問題形式で2~3つ受講生に示します。たとえば、「この記事によると、国連安保理でどのようなことが決定されたと書かれていますか?」「この記事によると、その決定内容に対して、北朝鮮はどのような反応を示したと書かれていますか?」といった具合です。このような内容把握に必要な疑問点を出した上で、今度は1分間で同じ3パラグラフを読んでもらい、理解度を高めてもらいましょう。これを3つの新聞記事で行ないます。新聞記事を用いる理由は、見出し+冒頭3パラグラフで、大部分の英字新聞記事の内容が把握できるからです。



中学英語を見直そう!

コラム

2009年09月29日

「中学で習う英語をしっかり習得すれば、アメリカで生活することができる。」
「中学英語がすべての英語学習の基本。」
こういったことをよく耳にするが、本当だろうか?小生の疑問を払拭させたすばらしい本を紹介しましょう。

竹村 和浩『図解入門ビジネス 中学英語の基本と仕組みがよーくわかる本』
(秀和システム、2009年)1365円 
目次
第1章 中学英語の「基礎」攻略のカギ
第2章 名詞の拡大―名詞は前後から修飾される!
第3章 動詞の変化―意味と形でまとめておさえる!
第4章 8品詞のまとめ―品詞は文の大切な部品!
第5章 文の種類―文のパターンをしっかり覚える!
第6章 発音トレーニング―発音は英会話への近道!
第7章 英文生成トレーニング―自在に英語を話すコツ!

チョムスキーといえば、「生成文法」という言語学理論を提唱した著名な学者です。この難解なチョムスキー理論の視点にたった中学英語の解説書です。そんな大胆なことができるのか?と思いましたが、読み進めると、大変おもしろく、わかりやすい書物で、英語をもういちど基礎からやり直そうと考える人にとって最適の書物です。

「英文は『名詞』と『動詞』をおさえれば理解できる!」というのはまさにその通り!英文の仕組みを非常にわかりやすく、しかも端的に、図を使って説明しているので、初学者にも大変読みやすいものになっています。

また、筆者の竹村先生は日本における英語ヴォイス・トレーニングの第一人者ですが、第6章でその真髄が発揮されています。脳の中では、耳と口がつながっているので、発音を学ぶと、聴解力も向上する!というのは、まさに朗報だといえます。小生を含め、英語を勉強する際に最も難しいのは聴解力の向上だと思います。その意味で、的確なヴォイス・トレーニングは、英語の発音が上手になり、聴解力が向上するという一石二鳥となります。付録にある「英語の50音表」も、英語の基本音の出し方を図を使って説明されており、大変有益なものです。もうひとつ、付録の「基礎必修英単語2,000」名詞と動詞が中心に集められており、英語力の基礎固めに重要な役割を果たすものと思います。

さて、再度「中学英語を習得すれば、本当に実用英語を使うことができるようになるのだろうか?」という疑問を再考してみましょう。小生の答えは、7割程度は大丈夫だろうというものです。英語で執筆された専門的な本、論文、英字新聞の記事などを拾って読み返しました。専門用語など、中学英語の授業では習わない単語を除けば、中学英語で理解不能な英文はほとんどありません。逆に言えば、中学英語をしっかり習得していれば、大きな英和辞典があれば、ニューヨークタイムズの記事も読んで訳すことはできるでしょう(もちろん、「訳す」ことと「理解する」ことは異なりますので、たとえニューヨークタイムズの記事を「訳す」ことができても、社会・経済・政治等の知識がなければ、その内容を「理解する」ことは難しいでしょう)。このように、中学英語はとても重要です。

中学生(初学者)の英語勉強法
小生が中学生の頃に行っていた英語勉強法を紹介させていただきます。英語は大変興味深い科目で、好きな科目でした。1年生の頃は、毎朝、NHKラジオの「基礎英語」、2年生になると「続・基礎英語」を聴いておりました。毎月テキストを買うのが楽しみでした。カセットなどは売っておりましたが、それは一切つかわず、生放送で聴いておりました。そうすることで、短い時間ですが、毎日生の英語と接することができました。「将来は外国人と自由に英語で話してみたい」と思ったものです。

学校では教科書とワークブックなどをテキストとしていただきました。勉強法はたったひとつだけでした。教科書を端から端まで全文暗唱しました。日本語をみてそれを英文に直すというのではなく、ストーリーそのものもすべて覚えてしまいました。

期末テストの範囲がLesson 8からLesson 12までだとします。日頃暗唱しておりますので、テストの準備は1時間ほどで終了します。まず、”Lesson 8, ・・・”というように、暗唱している文章を読み上げ、それからそれをノートに書きます。そして、教科書を見て、ノートに書いたものがあっているかどうかを確認します。それが終われば、次の章に進む、といった具合です。

全文を暗唱することで、重要な動詞の変化等だけではなく、前置詞の使い方、副詞と動詞の位置関係、冠詞の使い方などを自然と身につけるようになりました。理屈で覚えるよりも身体(口?)が覚えてしまいます。教科書に書かれているようなよい英文をたくさん暗唱することによって、英文の感覚というものが身に付きます。

中学3年間、この勉強法を続けました。いいえ、中学だけではありません。高校3年間もこの勉強法を継続しました。高校では年間8冊ほどのテキストを使用しましたが、すべてのテキストを暗唱しました。英語の勉強の際は、暗唱するために、何度も何度も大きな声を出して英文を読みました。初学者にはおすすめの勉強法です。

杉田米行



語学留学で本当にTOEIC点数はあがるのか?

コラム

2009年12月04日

小生のゼミ生で大学を休学し、24週間アメリカの語学学校へ語学留学をした女子学生Kさんが「帰国あいさつ」に研究室へお越しくださいました。帰国後すぐにTOEICを受験し、何と940点。出発前より135点アップしたとのことです。そこで、急遽、Kさんにインタビューをさせていただきました。

大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)英語専攻に入学された1年生の秋に生まれて初めてTOEICを受験されたそうです。得点は675点。「時間配分を間違った」という思いが強かったようです。それから、英語専攻の勉強を続けながら、特にTOEIC対策はせずに、大学2年の秋に第2回目のTOEICを受験されました。今度は時間配分もうまくいき、740点を取得したとのことです。英語専攻の学生さんであれば、少し低めの点数です。

3年生になり、杉田ゼミ(アメリカ歴史政経ゼミ)にはいられました。ゼミでは英字新聞を毎日読み、それを要約するという課題がありました。アメリカの歴史や政治経済を学んでいくうちに、ますます英語運用能力の重要性を認識し、何としてでも、英語力と高めるんだ、という強い気持ちがでてきたようです。綿密な語学留学計画をたて、高額な費用を工面するために、親戚からを借金してアメリカのカリフォルニア州へ語学留学することになります。日本出発前に第3回目のTOEICを受験、結果は805点でした。英語専攻の学生さんであれば、普通程度の英語力というレベルですが、やる気満々でアメリカへ飛び立ちました。

語学留学ですので、当然のことながら、英語のクラスは外国人ばかりです。そこでも勿論、真面目に勉強しながら、授業が終わると、積極的にアメリカの実社会に飛び込み、様々なアクティヴィティに関与したそうです。その中でも特に、里犬・里猫のボランティア活動を行ったことおよびトーストマスターズ(パブリックスピーキングのスキル向上を目指す非営利グループ)に参加したことが英語力向上につながったとのことです。ボランティア活動では自分の関心のある問題で、アメリカ人と共に活動することができたことで、心の満足感も大きく楽しみながら自然と英語を話す機会も増えたようです。大学での卒業論文はこのあたりをテーマにして書いてみたいと現在思っているようです。また、トーストマスターズでは、アメリカ人以外に数人の日本人もいらっしゃったようですが、グループ内では英語で話しをしていたとのことです。トーストマスターズも大変喜んで通っていたということです。

とても重要な点が3つあるように思います。1点は、積極的にアメリカ社会に触れてみようと動いたこと。2点目は、喜びながら、心が満たされた状態で英語を使っていたこと。いやいや、単位をとるために、試験に合格するために、・・・英語の勉強をしてもあまり身に付かないでしょう。自分の好きなことをやりながら、わくわく・ドキドキの状態で英語の勉強をすれば、非常に効率的に英語力を向上させることができるようになると思います。そして第3点目に、そのように、閉じられた「語学学校の教室」にとどまることなく、積極的に社会に参加したことによって、生の英語に接する機会が多くなり、リスニングの力が向上したのだろうと思います。TOEICの場合、リスニングで点数を稼ぐことが得点をあげる最良の方法のひとつだと思われます。

帰国後、すぐに受けたTOEICでは940点を取得。これは大阪大学外国語学部英語専攻の学生の中でもトップクラスに属するものです。本人も益々明るくなり、何事にも前向きに取り組むようになりました。来年の4月に復学するまで、留学の借金返済のために、アルバイトをするとのことでした。

Kさんの語学留学は大成功だったように思います。語学留学が成功するのも失敗するのも行く人の心がけひとつなのでしょう。がんばれKさん、あなたの未来は明るい!



「英語教育のカリスマ」シリーズ第1弾 英語教育に映画を

コラム

2010年03月06日

先日、とてもすてきな先生におめもじかなう機会がございました。高校英語の現場に映画を持ち込み、学生さんに英語を勉強することへのインセンティブを提供しておられます。「英語教育のカリスマ」シリーズ第1弾として、大阪の公立高校で英語を教えておられる吉浦潤次先生に独占インタビューをさせていただきました。吉浦先生は映画に関する造詣が深く、大著『映画でなぞるアメリカ史』(かもがわ出版、2009年)を昨年ご刊行されました。拝読させていただきましたが、正確な歴史的背景も解説されながら、映画を通じて楽しくアメリカ社会を理解することができます。主に18~19世紀のアメリカ映画を80本ほど取り上げて解説を加えておられます。20世紀以降のアメリカ映画を扱う続編を期待したいところです。

吉浦先生は、映画を授業で使える資料集を独自に作成しておられ、ウェブ上で公開されておられます。大変貴重なもので、大学英語教育でも十分活用できるものと思います。
http://web.me.com/jamesyoshiura1/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88/Materials.html

それでは、吉浦先生への独占インタビューです。

杉田:これまでの教育歴をご教示ください。
吉浦先生:1974年3月に高知大学文理学部文学科英文学専攻を卒業しました。大学卒業後は、演劇や映像の脚本を勉強しながら商業劇団の制作部に勤めました。その後採用試験を受けて中学校の英語教師となりました。5年勤務した後、再び採用試験を受け、大阪府立高校の教員となりました。英語の音声面や表現活動に関心があり、英語劇や映画を教材に取り入れて参りました。

杉田:どうして映画を使って英語を教えようと思われましたか。
吉浦先生:英語の上手な話し方・聴き方を練習するのに、映画や劇が大変よい教材になることは学生時代から体験したことで理解しておりましたが、授業で本格的に使い始めたのは高校の教員になって10年目くらいのころでした。英語の苦手な生徒が多い学校でした。ある年、三年生に『サウンド・オブ・ミュージック』の副読本と映画とを並行して授業に取り入れたことがありました。彼らが卒業した後、数人が学校を訪れて、この授業で感動したことを話してくれました。「君たちがあのときにそう言ってくれていたら、もっと取り上げたのに」と言いながら、そのときに本格的に映画を取り入れようと考えました。人間の喜怒哀楽、愛や憎しみ、夢や希望と直結した英語を、生徒たちは学びたがっているということを教えられました。翌年から、定期考査ごとに一作品を取り上げて、内容にまで入る授業を行ないました。特に注意したのは深いテーマ性のあるものも取り上げるということでした。また話題の作品もとりあげました。『タイタニック』では、日本で発売される以前にビデオをアメリカから取り寄せ、プリントを作成し授業をしました。普段は欠席者の多い学校でしたが、この授業を受ける生徒には欠席者は一人も出ませんでした。音声的にも本当の英語はどのように聞こえてくるかというリスニングや発音などの練習にもなるわけで、楽しみながら学習するには映画はよい教材です。そういうわけで現在も映画を利用しています。

杉田:なるほど。いつごろから本格的に映画を正規の英語教育に用いるようになりましたか。
吉浦先生:1995年から年間を通して映画を教材として使うことを教科会議で了承してもらいました。英語への学習意欲をどのように喚起するのか、それが英語科教員の最大の関心事でしたので、生徒がまじめに取り組むのであればという点での合意は得られました。

杉田:それは重要なことですね。英語への学習意欲こそ英語力向上の原動力だと思います。1つの映画の教材を作成するのに、どの程度時間がかかりますか。
吉浦先生:授業でどのような使い方をするかで、教材の作り方は変わってきます。一般に授業で自由に映画を取り上げられる現場というのはあまりありません。教員は使いたいと思っても進度の関係で時間的な制約に阻まれます。中堅校から進学校になるほどその制約は大きくなります。そこで、毎回の授業で10分ずつ映画のワンシーンを使う場合、5時間程度使える場合、あるいは10時間使える場合などを想定してみます。10分ずつ短いダイアログを取り上げ、3,4回で終える教材なら、B4のプリントが一枚くらいです。こういう教材にはトレーラ(予告編)を利用するのがいいと思います。ネットで無料配信されているトレーラは短いので、新作への期待もあって生徒の関心度も高いものです。生徒に紹介したい部分の台詞をディクテーションして、ALTにチェックしてもらいます。後は1,2時間でプリントを作ることができます。5時間以上使える場合は、映画全体の中からストーリーのポイントとなるシーン、味わいのある台詞を含むシーンなどを選んでプリントにする必要があります。教材作りには、全体を通して見る時間、取り上げるシーンの選択、台詞おこし、プリントの作成という作業が必要ですが、多忙化している学校現場の状況からして何時間とは一概に言えません。毎日少しずつ作業を重ねるなら一ヶ月くらいの余裕が必要だと思います。私が受け持つ学校設定科目「リスニング演習」では、ここ2年、音声と表現を目的にミュージカル映画を利用しています。生徒には全訳注付き台本を作成し、課題となるシーンの音声をCDにして渡しますが、この全訳注つき台本の作成には、もちろんまとまった時間がとれませんので、半年くらいかけています。

杉田:なるほど。英語の先生の中には是非、映画を授業にとりいれたいと思われている先生も多いと思います。高校や大学で英語を教えている方が映画を英語教育に使いたいというとき、どのような方法を推奨されますか。また、何かよい「教授用マニュアル」のようなものはございますか。
吉浦先生:新英語教育研究会では長年にわたって映画の英語教育利用の実践が積み重ねられています。また映画の教育利用の関心が高まる中、1995年3月、映画英語教育学会が発足しました。新英語教育研究会の雑誌『新英語教育』には、現場の中学校、高校の教師が実際にどのように映画を活用しているかがレポートされています。また三ヶ月おきに「映画で学ぶ楽しい英語の授業」(2002年4月より)というコラムも掲載されています。教育雑誌『英語教育』(大修館)では2007年11月号(「映画で英語 ~授業で使える映画・教師が愉しめる映画~」)に、『新英語教育』(三友社出版)では、1988年10月号(「ビデオを使って豊かな授業を」)、1994年2月号(「授業に生かすマスメディア・映画活用術」)、2008年2月号(「映画で学ぶ息づく言葉」)に、それぞれ映画を利用した授業について特集が組まれています。また出版社スクリーンプレイから『映画英語教育論』が出版されています。大学となると英語教育に映画を使うには最適な場ではないかと思われます。近年コミュニケーション能力に力が入れられているので、音声を初めとして、英語らしい話し方の訓練に利用できるのではないでしょうか。だが、表層の練習にとどまらず、作品のテーマや言葉の持つ深い味わいや感情表現などを含めた学習になれば最高ではないでしょうか。映画の紹介は数多くありますが、実際にどのように使うかという点については上に紹介した二つの雑誌の特集がかなり包括的で、実践的かつ具体的です

杉田:よくわかりました。吉浦先生は、今後はどのようなことをしようと考えておられますか。
吉浦先生:音声と感情表現を主眼にした映画の利用から一歩進んで、生徒が演じる短い映像作品を英語で制作してみたいと考えています。ここ三年間、総合学習の時間を使って15分程度のテレビドラマを制作し、二作品が完成しました。台本、演技、撮影、パソコンによる映像編集まですべて生徒が行ないましたが、言語は日本語です。これを英語でやってみることを現在考えています。最近では映像に記録するという実践は多く行われているのでそれほど目新しいものではありません。しかし、撮影や編集は「映像によるドラマ」を念頭に入れるので技術的な部分での作業が大きな部分を占めます。かつて、英語劇をステージ発表させて、それを映像編集したことが何度かありますので、技術的な面ではあまり問題はありません。ただ、授業時間を捻出できるかどうかが鍵となっています。

杉田:ますますご活躍のことと存じます。そのほか、何か読者に伝えたいことはございますか。
吉浦先生:現在、映画を利用した授業は広く行われていますので様々な研究会に参加すると得るものが大きいと思います。また映画の教材作りはお金と時間と労力がかかりますが、自己研修としては大いに役立つと思われます。

杉田:吉浦先生、本日はご多忙のところ独占インタビューに応じていただき、ありがとうございます。吉浦先生の授業を受けることができる生徒さんたちはとても幸せな方だと思います。ありがとうございます。




アメリカで日本を学び教える、日本でアメリカを学び教える

コラム

2013年06月02日

皆様こんにちは。すっかりご無沙汰しておりますが、お元気で英語の勉強をしておられることと存じます。みなさんは英語を学ぶ理由を考えたことがありますか。単に語学だけを学ぶのではなく、英語を手段としてアメリカ等の外国や世界を理解することが大きな目的ではないでしょうか。そのように考えているとき、うってつけの先生を今回日本に招聘することができました。日米両国で高等教育をお受けになり、長年アメリカで日本のことを学び、研究し、教えておられる井上雅道先生にご講演していただく機会を設けることができました。アメリカ大使館のご支援の賜物です。英語を学ぶ人にとってはまたとない機会ですので、是非、ご活用いただき、当日、井上先生と「対話」してください。警備の関係で事前申し込みが必要です。

杉田米行

*********************
Contemporary American Studies Consortium of Japan (CASCJ)セミナー
「アメリカの大学で「日本」を教える、学ぶ、考える」
◆日時:2013年6月24日(月) 18:30-20:30 (開場18:00~)

◆場所:東京アメリカン・センター・ホール
〒107-0052 東京都港区赤坂1-1-14 NOF溜池ビル8階
地図:http://japan2.usembassy.gov/j/amc/tamcj-map.html)

◆講演者:井上雅道先生(ケンタッキー大学日本研究プログラムディレクター)

◆テーマ:「アメリカの大学で『日本』を教える、学ぶ、考える」
アメリカの大学で「日本」を教え、学び、考えてかれこれ10年以上になるが、その困難と面白さを、具体的な体験に基づいてお話したい。これまで行ってきた研究、並びに現在進めている研究についても言及したい。日本で「アメリカ」を教える先生、学ぶ学生さんらとの対話を心待ちにしています。

◆司会:前嶋和弘先生(文教大学人間科学部准教授)
メリーランド大学カレッジ・パーク校でPh.D. 取得。 主な業績としては『オバマ政権と過渡期のアメリカ社会』(共著、東信堂、2012年)、『インターネットが変える選挙』(共著、慶應義塾大学出版、2011年)、『アメリカ政治とメディア』(北樹出版、2010年)等多数。

(講演者紹介)
1987年3月東北大学、学士課程卒業(専攻:宗教学・宗教史)
1991年5月ペンシルバニア大学、修士課程卒業(専攻:心理的援助学)
1999年12月デューク大学、博士課程卒業(専攻:文化人類学)
現在、ケンタッキー大学日本研究プログラムディレクター・准教授

講演者の主な著作:
2013 「生-権力の臨界:アメリカの大学警察を人類学する」『文化人類学』77(4)
2012 “Reclaiming the Universal: Intercultural Subjectivity in the Life and Work of Endo Shusaku.” Southeast Review of Asian Studies (SERAS) 34: 153-170.
2011 “Cocco’s musical intervention into the US base problems: traversing a realm of everyday cultural sensibilities in Okinawa.” Inter-Asia Cultural Studies 12:3, 321-340.
2007 Okinawa and the U.S. Military: Identity Making in the Age of Globalization. New York: Columbia University Press.
2004 “‘We are Okinawans but of a Different Kind’: New/Old Social Movements and the U.S. Military in Okinawa.” Current Anthropology 45 (1): 85-104.
2004 「当事者の共同体、権力、市民の公共空間:流用論の新しい階梯 と基地問題」 『民族学研究』 68 (4): 534-554.
2002 「グローバル化の中の沖縄イニシアティブ論争:記憶、アイデン ティティ、基地問題」『思想』933: 246-267.
1998 「海上ヘリ基地問題と日本人類学:沖縄県名護市辺野古でのフィールドワークの覚書」『現代思想』 26 (7): 228-244.

ご参加いただける方は,
1.お名前(日本語・英語)
2.ご所属(日本語・英語)
3.緊急時の連絡先(電話・メール)
を明記の上、mail: office@sugita.us にてお申し込みください。警備上の理由により、6月19日(水)までに事前申し込みをしていただいた方しか、当日建物に入ることができません。尚、本セミナーはアメリカ大使館文化交流部助成金のご支援により実現可能となりました。記して御礼申し上げます。

主催:Contemporary American Studies Consortium of Japan (CASCJ)
後援:アメリカ大使館広報・文化交流部

問い合わせ先:
大阪大学言語文化研究科 杉田米行
電子メール:sugita@lang.osaka-u.ac.jp




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