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「英語教育のカリスマ」シリーズ第1弾 英語教育に映画を

コラム

2010年03月06日

先日、とてもすてきな先生におめもじかなう機会がございました。高校英語の現場に映画を持ち込み、学生さんに英語を勉強することへのインセンティブを提供しておられます。「英語教育のカリスマ」シリーズ第1弾として、大阪の公立高校で英語を教えておられる吉浦潤次先生に独占インタビューをさせていただきました。吉浦先生は映画に関する造詣が深く、大著『映画でなぞるアメリカ史』(かもがわ出版、2009年)を昨年ご刊行されました。拝読させていただきましたが、正確な歴史的背景も解説されながら、映画を通じて楽しくアメリカ社会を理解することができます。主に18~19世紀のアメリカ映画を80本ほど取り上げて解説を加えておられます。20世紀以降のアメリカ映画を扱う続編を期待したいところです。

吉浦先生は、映画を授業で使える資料集を独自に作成しておられ、ウェブ上で公開されておられます。大変貴重なもので、大学英語教育でも十分活用できるものと思います。
http://web.me.com/jamesyoshiura1/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88/Materials.html

それでは、吉浦先生への独占インタビューです。

杉田:これまでの教育歴をご教示ください。
吉浦先生:1974年3月に高知大学文理学部文学科英文学専攻を卒業しました。大学卒業後は、演劇や映像の脚本を勉強しながら商業劇団の制作部に勤めました。その後採用試験を受けて中学校の英語教師となりました。5年勤務した後、再び採用試験を受け、大阪府立高校の教員となりました。英語の音声面や表現活動に関心があり、英語劇や映画を教材に取り入れて参りました。

杉田:どうして映画を使って英語を教えようと思われましたか。
吉浦先生:英語の上手な話し方・聴き方を練習するのに、映画や劇が大変よい教材になることは学生時代から体験したことで理解しておりましたが、授業で本格的に使い始めたのは高校の教員になって10年目くらいのころでした。英語の苦手な生徒が多い学校でした。ある年、三年生に『サウンド・オブ・ミュージック』の副読本と映画とを並行して授業に取り入れたことがありました。彼らが卒業した後、数人が学校を訪れて、この授業で感動したことを話してくれました。「君たちがあのときにそう言ってくれていたら、もっと取り上げたのに」と言いながら、そのときに本格的に映画を取り入れようと考えました。人間の喜怒哀楽、愛や憎しみ、夢や希望と直結した英語を、生徒たちは学びたがっているということを教えられました。翌年から、定期考査ごとに一作品を取り上げて、内容にまで入る授業を行ないました。特に注意したのは深いテーマ性のあるものも取り上げるということでした。また話題の作品もとりあげました。『タイタニック』では、日本で発売される以前にビデオをアメリカから取り寄せ、プリントを作成し授業をしました。普段は欠席者の多い学校でしたが、この授業を受ける生徒には欠席者は一人も出ませんでした。音声的にも本当の英語はどのように聞こえてくるかというリスニングや発音などの練習にもなるわけで、楽しみながら学習するには映画はよい教材です。そういうわけで現在も映画を利用しています。

杉田:なるほど。いつごろから本格的に映画を正規の英語教育に用いるようになりましたか。
吉浦先生:1995年から年間を通して映画を教材として使うことを教科会議で了承してもらいました。英語への学習意欲をどのように喚起するのか、それが英語科教員の最大の関心事でしたので、生徒がまじめに取り組むのであればという点での合意は得られました。

杉田:それは重要なことですね。英語への学習意欲こそ英語力向上の原動力だと思います。1つの映画の教材を作成するのに、どの程度時間がかかりますか。
吉浦先生:授業でどのような使い方をするかで、教材の作り方は変わってきます。一般に授業で自由に映画を取り上げられる現場というのはあまりありません。教員は使いたいと思っても進度の関係で時間的な制約に阻まれます。中堅校から進学校になるほどその制約は大きくなります。そこで、毎回の授業で10分ずつ映画のワンシーンを使う場合、5時間程度使える場合、あるいは10時間使える場合などを想定してみます。10分ずつ短いダイアログを取り上げ、3,4回で終える教材なら、B4のプリントが一枚くらいです。こういう教材にはトレーラ(予告編)を利用するのがいいと思います。ネットで無料配信されているトレーラは短いので、新作への期待もあって生徒の関心度も高いものです。生徒に紹介したい部分の台詞をディクテーションして、ALTにチェックしてもらいます。後は1,2時間でプリントを作ることができます。5時間以上使える場合は、映画全体の中からストーリーのポイントとなるシーン、味わいのある台詞を含むシーンなどを選んでプリントにする必要があります。教材作りには、全体を通して見る時間、取り上げるシーンの選択、台詞おこし、プリントの作成という作業が必要ですが、多忙化している学校現場の状況からして何時間とは一概に言えません。毎日少しずつ作業を重ねるなら一ヶ月くらいの余裕が必要だと思います。私が受け持つ学校設定科目「リスニング演習」では、ここ2年、音声と表現を目的にミュージカル映画を利用しています。生徒には全訳注付き台本を作成し、課題となるシーンの音声をCDにして渡しますが、この全訳注つき台本の作成には、もちろんまとまった時間がとれませんので、半年くらいかけています。

杉田:なるほど。英語の先生の中には是非、映画を授業にとりいれたいと思われている先生も多いと思います。高校や大学で英語を教えている方が映画を英語教育に使いたいというとき、どのような方法を推奨されますか。また、何かよい「教授用マニュアル」のようなものはございますか。
吉浦先生:新英語教育研究会では長年にわたって映画の英語教育利用の実践が積み重ねられています。また映画の教育利用の関心が高まる中、1995年3月、映画英語教育学会が発足しました。新英語教育研究会の雑誌『新英語教育』には、現場の中学校、高校の教師が実際にどのように映画を活用しているかがレポートされています。また三ヶ月おきに「映画で学ぶ楽しい英語の授業」(2002年4月より)というコラムも掲載されています。教育雑誌『英語教育』(大修館)では2007年11月号(「映画で英語 ~授業で使える映画・教師が愉しめる映画~」)に、『新英語教育』(三友社出版)では、1988年10月号(「ビデオを使って豊かな授業を」)、1994年2月号(「授業に生かすマスメディア・映画活用術」)、2008年2月号(「映画で学ぶ息づく言葉」)に、それぞれ映画を利用した授業について特集が組まれています。また出版社スクリーンプレイから『映画英語教育論』が出版されています。大学となると英語教育に映画を使うには最適な場ではないかと思われます。近年コミュニケーション能力に力が入れられているので、音声を初めとして、英語らしい話し方の訓練に利用できるのではないでしょうか。だが、表層の練習にとどまらず、作品のテーマや言葉の持つ深い味わいや感情表現などを含めた学習になれば最高ではないでしょうか。映画の紹介は数多くありますが、実際にどのように使うかという点については上に紹介した二つの雑誌の特集がかなり包括的で、実践的かつ具体的です

杉田:よくわかりました。吉浦先生は、今後はどのようなことをしようと考えておられますか。
吉浦先生:音声と感情表現を主眼にした映画の利用から一歩進んで、生徒が演じる短い映像作品を英語で制作してみたいと考えています。ここ三年間、総合学習の時間を使って15分程度のテレビドラマを制作し、二作品が完成しました。台本、演技、撮影、パソコンによる映像編集まですべて生徒が行ないましたが、言語は日本語です。これを英語でやってみることを現在考えています。最近では映像に記録するという実践は多く行われているのでそれほど目新しいものではありません。しかし、撮影や編集は「映像によるドラマ」を念頭に入れるので技術的な部分での作業が大きな部分を占めます。かつて、英語劇をステージ発表させて、それを映像編集したことが何度かありますので、技術的な面ではあまり問題はありません。ただ、授業時間を捻出できるかどうかが鍵となっています。

杉田:ますますご活躍のことと存じます。そのほか、何か読者に伝えたいことはございますか。
吉浦先生:現在、映画を利用した授業は広く行われていますので様々な研究会に参加すると得るものが大きいと思います。また映画の教材作りはお金と時間と労力がかかりますが、自己研修としては大いに役立つと思われます。

杉田:吉浦先生、本日はご多忙のところ独占インタビューに応じていただき、ありがとうございます。吉浦先生の授業を受けることができる生徒さんたちはとても幸せな方だと思います。ありがとうございます。




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