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英語教育エッセイ

国内外で活躍する英語教育業界関係者によるエッセイコーナー

小学校の外国語活動Q & A

2009年9月01日

Q1. 今まで小学校1年生から英語活動をしていたのですが、2011年からは1~4年生で英語活動をしてはいけませんか?

英語教育の最新版
「英語教育」2009年9月号(大修館)
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From "The English Teachers' Magazine" September 2009 Vol. 58 No. 6 (Taishukan)
<回答者> 菅正隆 Kan Masataka(大阪樟蔭女子大学教授)

A. いけないというわけではありません。新しい小学校学習指導要領での低学年(第1、2学年)及び中学年(第3、4学年)においては、外国語に触れるための時間(英語活動等)は設定されていません。数年前、各地の小学校で、「生活」の時間や「音楽」の時間を英語活動に充てている場合が見受けられましたが、これは、現行の学習指導要領(法令上)でも新しい学習指導要領でも、行ってはいけないこととなっています。したがって、低学年では、各学校が独自に生み出した時間(裁量の時間)を活用して英語活動に取り組むこととなります。これについては、各学校の判断によりますので、仮に年間10時間捻出できたとしても、その時間の全てを英語活動に充てられるかどうかなど、校内で十分な検討が必要になります。もちろん、学校の責任のもとに実施するのですから、保護者への説明責任や効果測定等も求められるところです。ただ、保護者から、他の学校よりも帰宅時間が遅くなるなどの不満が出るようでは、実施自体に問題が生じます。しっかりと実施する理由などについて、保護者等に周知徹底する必要があります。私個人としては、低学年の1コマ45分の英語活動では、集中できない児童も出てきますので、英語に触れるという意味では、1回15分程度を週2回実施するなど、モジュール形式の授業を工夫するのがよいと思っています。

一方、中学年でも、低学年同様、学校裁量の時間で実施することとなります。同じくこの時間は、目標も指導内容も学校が責任を持つことになりますので、当然、低学年から実施しているのであれば、第1~4学年までの継続性を考慮したカリキュラムを作成しなければなりません。民間やネイティブ・スピーカーにお任せでは、保護者や地域への説明責任が果たせるかどうか不安です。しっかりと、目の前の児童に合わせた目標、そして指導内容を検討する必要があります。

また、中学年では、「総合的な学習の時間」(以下、「総合学習」)の活用も考えられます。ただし、「総合学習」は本年度から既に新しい学習指導要領に移行していますので、指導内容が、「国際理解に関する学習を行う際には、問題の解決や探求活動に取り組むことを通して、諸外国の生活や文化などを体験したり調査したりするなどの学習活動が行われるようにすること」となっているかどうか、精査する必要があります。現行の学習指導要領にある「国際理解の一環としての外国語会話等」は、すでに過去のものとなっています。したがって、以前、各地で目にした英会話、パターン・プラクティス、ダイアログの暗唱、フォニックス等の英語運用能力(スキル)向上のための指導は、「総合学習」には適していません。では、どのように活用するかです。「総合学習」で可能なことは国際理解です。この国際理解の活動の中にツールとして英語を使うことが考えられます。たとえば、「総合学習」に地域の外国人や留学生を学校に招いて、先ほどの裁量の時間で触れた英語表現や語彙を用いて交流活動を行います。その中には、挨拶、自己紹介、町の紹介、日本の文化紹介など、英語を使う場面がいくつも存在します。つまり、裁量の時間で基本的な表現に慣れ親しみ、「総合学習」で実体験させるのです。このような連携を考えることで、「総合学習」を有効に活用することができます。また、児童が調べたテーマについて、世界の国々と比較し、英語で発表させることなども考えられるでしょう。

第1~4学年では、工夫次第で様々な取り組みが可能となりますが、これらが第5、6学年での外国語活動と連携していることが、実施の最低条件となります。(詳しくは、近刊『成功する小学校英語シリーズ2』(大牟田市立明治小学校:明治図書出版)をご覧いただければと思います。)

Q2. 外国語活動で英語ではなく他の言語を扱ってもいいですか? また、実際に他の言語を扱っている学校はありますか?

<回答者> 蛭田勲 Hiruta Isao(大阪府教育センター首席指導主事)

A. 学習指導要領の第3指導計画の作成と内容の取り扱いの1(1)で、「外国語活動においては、英語を取り扱うことを原則とすること」と述べられています。これは、外国語科において英語を履修することを原則としている中学校・高等学校との接続の観点から、小学校の外国語活動でも英語を扱うことを原則としています。同時に、学校の創設の趣旨や地域の実情、児童の実態に応じて他の言語を扱うことも不可能ではないという意味が「原則」という言葉には込められています。

とはいえ、もし外国語活動で英語以外の言語を扱う学校は、『英語ノート』を使用して英語を扱う場合とは違い、いくつかの点に十分に配慮しなくてはいけません。例えば、中学校の外国語科との接続や、学習指導要領に示された目標や内容との整合性です。

中学校区に複数の小学校があり、ある小学校は外国語活動で英語を扱い、ある小学校では主として英語以外の言語を扱う場合、中学校での外国語科との接続について中学校区で慎重な議論を重ね、2つの小学校の児童の間で大きな温度差が生じないように注意しなくてはいけません。

次に学習指導要領に示された「目標」や「内容」等との整合性です。英語以外の言語を扱う場合でも、外国語活動の「目標」の3つの柱はもちろんのこと、その目標を踏まえた指導内容や指導方法も変わることはありません。どの言語を扱おうとも、その言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図り、音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養うことを念頭において指導計画を作成する必要があることは言うまでもありません。

では、実際に英語以外の言語を扱っている小学校の実践例を紹介します。これは、韓国・朝鮮語を扱っている学校の例です。この学校では、異なる文化をもつ人々との交流等を経験することで、韓国・朝鮮の言葉や文化について体験的に理解を深め、生活、習慣、行事などにおいて日本との違いを知り、多様なものの見方や考え方を積極的に受け入れる態度を児童に身に付けさせることを目標としています。

言葉については、児童はアルファベットに触れる際に地域の韓国・朝鮮語の講師からハングルも同時に学び、ハングルがひらがなやカタカナと同じく表音文字で、母音と子音との組み合わせ文字であることを知ります。また、韓国の子どもたちとの交流会では、ハングルで自分の名前等の書き方を教えてもらったりしています。

スポーツを扱う単元では、学級担任と ALT、それに地域の韓国・朝鮮語の講師によるティーム・ティーチングで、例えば、英語では「ベースボール」である「野球」は、韓国・朝鮮語では「ヤグ」と発音する、というような各国語の比較を提示するなど、スポーツでの韓国・朝鮮語における表現上の特徴などを紹介することで、日本語と韓国・朝鮮語との共通点を知り、言葉の面白さに気付かせる指導をしています。

文化については、朝鮮の民話を通して韓国・朝鮮語の擬音語の面白さに気付かせるとともに、朝鮮の伝統的な衣服や食べ物、風習など、昔の暮らしについて理解を深めます。また、韓国の子どもたちとの交流を通して日本の遊びを紹介したり、韓国の遊びを体験したりするなど、韓国・朝鮮の言葉や文化に親しませる様々な工夫がなされています。

英語以外の外国語を扱う場合においても、決して細かい文法や語彙の指導などスキルを重視した指導に走らないように配慮すべきでしょう。上の実践例にもあるように、異なる文化をもつ人々と交流し、お互いを積極的に理解し合う体験を通して、児童に言葉の大切さや豊かさ、また文化の多様性に気付かせるような指導が求められます。

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【特集】小学校の外国語活動Q & A

2011年度の完全実施を前に、小学校の外国語活動について、制度、SLA的裏付け、教員養成、実際の指導法、児童のメンタルケアなどについての情報をQ&A方式で整理する。

Q1 1~4年生で英語活動をしてはいけないか?
菅 正隆
Q2 英語以外の言語を扱ってもいいか?
蛭田 勲
Q3 どのように評価をすればよいか?
直山木綿子
Q4 早く英語を始めれば上達するのか?
松村昌紀
Q5 外国語活動で日本語力に悪い影響はないか?
松村昌紀
Q6 外国語活動の授業は誰が進めるか?
二橋宏之
Q7 英語専科の先生が教えた方がよいのか?
安田昌則
Q8 担任の授業に保護者から不安の声が…
安田昌則
Q9 「小学校英語指導者資格」とは?
菅 正隆
Q10 大学ではどのように教員養成しているか?
高橋美由紀
Q11 指導のためにどんな勉強をしたらいいか?
萬谷隆一
Q12 間違いは直した方がいいか? 宿題は?
國方太司
Q13 他の教科と組み合わせるプロジェクトは?
國方太司
Q14 へき地の学校ではどんな授業をするか?
小野寺哲男
Q15 小規模校の飛び複式学級などでの指導計画は?
小野寺哲男
Q16 特別支援学級ではどのような指導ができるか?
蛭田 勲
Q17 話すことが苦手な子どもにどう対応するか?
古屋昌美
Q18 『英語ノート』はどう活用するか?
直山木綿子
Q19 外国語活動と中学校の英語はどう違うか?
兼重 昇
Q20 「間違った英語を教えられると中学校で困る」?
兼重 昇

■英語教育時評
■アノ先生・ヒロ先生の日々の授業にひと工夫
■英文法の「心」を知ろう<最終回>
■Second Language Acquisition Research and Teaching
■英語教育 ここだけの話
■英語でニッポンを紹介しよう
■『英語ノート』をどう活用するか
■小学校外国語活動はプロジェクト型で!<最終回>

◆英文メディアに見る現代日本
◆絵画の食卓を読み解く
◆古代のしたたかな女たち
◆アングロ・サクソン文明落穂集
◆今月の時事英語


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2,520円(A5判・314頁)
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英文法と和文英訳だけでは、まとまった英語は書けない。そこには適切な手引き書が必須である。本書は、センテンスからトピック文、そしてパラグラフへと至る道を、一歩一歩丁寧に手引きする。ビジネス文書、メール、英文エッセイなど、あらゆる場面に対応。今すぐ英文を書かなくてはならない時に必ず役立つ一冊。

【目次】
まえがき

第1章 センテンスを書く
1 「何が…する/…である」をはっきりさせる
2 主語を決める
3 動詞を決める
4 修飾語句を決める
5 センテンスの配分を決める
6 英語の句読法

第2章 パラグラフを書く
7 パラグラフの頭は字下げする
8 分量は100語前後が目安
9 一つのパラグラフでは一つのトピックを取り扱う
10 それぞれのパラグラフには固有の目的を持たせる
11 パラグラフにはトピック文を置く
12 トピック文を支える内容を示す
13 内容を整理しパラグラフへ振り分ける
14 統一性を考えて書く
15 脈略を考えて書く
16 しめくくる

第3章 整理する
17 時間的に並べてつなぐ
18 空間的に並べてつなぐ
19 順序を付けて並べてつなぐ
20 並列で並べる
21 追加的につなぐ
22 階層化する
23 前後を指し示してつなぐ
24 つなぎ語(接続詞・副詞など)を用いる
25 つなぎ語を用いずに文の流れを整える

第4章 展開する
26 具体的に並べる
27 詳しく述べる
28 分類・分割する
29 個別のものへ内容をしぼる
30 一般的なものへ内容を広げる
31 比較・対照させる
32 定義する
33 論理的に述べる
34 問いを投げかける
35 問題を考察する
36 新たな視点を導入する
37 視点を深める
38 興味を段々高めていく

第5章 効果的に表現する
39 言葉の選択に迷ったときには…
40 辞書を活用する
41 パソコンで用例を検索する
42 日本語の発想に引きずられない
43 主眼点をどこに置くか
44 命令形を使う
45 省略する
46 強調する
47 比喩を用いる
48 繰り返す
49 事実と見解を区別する
50 意見や感情をうまく表現する
51 会話文や引用文を本文に組み込む
52 文体を考える
53 分野に特有の語彙や文体に配慮する
54 フォーマルとインフォーマルを区別する
55 同じ内容を言い換えて表現する

第6章 文書を作成する
56 校正――最後の重要な作業
57 ページのレイアウト
58 文献の引用と典拠の明示
59 フォーマル・レターを書く

第7章 書いてみよう
課題1 適切な言葉を選ぶ
課題2 主語をはっきり示す
課題3 英語らしい主語を選ぶ
課題4 無生物主語を用いて文を書く
課題5 内容をセンテンスにまとめる
課題6 トピック文を書く
課題7 トピック文を書き分ける
課題8 トピック文とそれを支える内容を書く
課題9 目的を定めてパラグラフを書く
課題10 内容を振り分けてパラグラフを組み立てる
課題11 時の推移を軸にして書く
課題12 空間的な位置に基づいて配列する
課題13 関連する語句を整理する
課題14 話題を整理する
課題15 アウトラインを書く
課題16 スケジュールを書く
課題17 案内文を書く――宣伝・勧誘・広告を書く
課題18 作業手順や方法・行程について書く
課題19 フォーマル・レター(ビジネスレター)を書く
課題20 電子メールを書く――簡潔に要点を伝えるメッセージ
課題21 電子メールを書く――親しみを込めた気軽なメッセージ
課題22 伝記を書く――人物の生涯について書く
課題23 物語を書く
課題24 自分自身について書く――自分の履歴を書く
課題25 小文を書く――自分の身に起こった出来事について書く
課題26 論述文を書く(推論)
課題27 論述文を書く(論理的な考察)

付録 ライティングに使える英語表現集
1 付け加えるための英語表現
2 順番を付けるための英語表現
3 時間を示す英語表現
4 経験・経歴を示す英語表現
5 空間を示す英語表現
6 文を対等につなぐための英語表現
7 文を主従でつなぐための英語表現
8 論理を示す英語表現
9 定義するための英語表現
10 例をあげるための英語表現
11 一般論を述べるための英語表現
12 見解・主張を示す英語表現
13 意見や感情をを示す英語表現
14 強調を示す英語の副詞
15 It is ... to ... / It is ... that ... の英語表現
16 ビジネスレターでよく使われる英語表現
17 親しい相手への手紙によく使われる英語表現
18 電子メールでよく使われる英語表現
19 日記・手帳でよく使われる英語表現

引用文献

参考文献

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