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英語教育エッセイ

国内外で活躍する英語教育業界関係者によるエッセイコーナー

言葉に思いを託す
— 汝の馬車を星につなげ

2009年3月31日


富山県立呉羽高等学校
海木幸登
Kaiki Yukito


夢と感動のある高校生活を!

英語教育の最新版
「英語教育」2009年4月号(大修館)
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From "The English Teachers' Magazine" April 2009 Vol.58 No. 1 (Taishukan)
私たち教師にとって、毎年3月は別れの季節。そして4月は出会いの季節だ。今年もまた、この時期、全国の学校・教室でたくさんのドラマが生まれるだろうが、読者の先生方はどんな生徒と出会い、どんな新学期を迎えるのだろうか。

最近の私は、初めて出会った生徒たちに、自分の名前をアクロニム(折り句)にして次のようなあいさつをするのが定番になっている。

 「か」—感動のある高校生活を
 「い」—いつも生き生きと
 「き」—希望を胸に
 「ゆ」—夢に向かって
 「き」—君たちと
 「と」—ともに創りたい。


この折り句にアドリブで短い補足を加えていくと、楽しくしかも印象深いあいさつになる。

短い時間で自分の気持ちや決意(=メッセージ)を伝えることができるのである。

この時の生徒の反応が楽しみなのだが、「オー!」と驚きの声があがることもあれば、「意外にやるジャン」「ちょっと感心したよ」という感じで「へー」と反応してくれる場合もある。その場では反応がなくても、廊下ですれ違った時などに親しげに話しかけてくる生徒もいるはずだ。

いずれにしても、私の経験では、このあいさつで場の空気が何となく和らぎ、明るい雰囲気が広がることが多かったのである。

「5つの"気"」 と 「3つの"出会い"」

さて、同じように、「5つの"気"」や「3つの"出会い"」も私のお気に入りの一つである。

たとえば私は、学級通信などで「5つの"気"」(=「やる気」「元気」「本気」「根気」「和気」)を紹介することがある。この一年、「5つの"気"」を大切にして頑張ろうと呼びかけるのだが、5つでは多すぎると思えば、「やる気」(または「元気」、「本気」)に「根気」と「和気」を加えて「3つの"気"」にすることもできる。

「(行事などでの)やる気」と「(勉強などでの)根気」、そして「(クラス集団にとって大切な)和気」の3つの大切さをことあるごとに訴えるのも、クラス担任としては悪くない。他に「勇気」「覇気」などもあるから、お好み次第というところだ。

私の場合、名前が「かい」ということもあり、「年とった海木先生を、心から敬い、大切にすること」というオチがつくこともあるが、これはまあオマケということにしておこう。

バリエーションとして、次のような言葉もある。

「やる気」という木に、「根気」という木を接木して、毎日「ナニクソ」という肥やしをやり続けていると、勉強の木に、いつか立派な実(=成果)がなります。

これに対して「3つの"出会い"」というのは、「新しい友だち」「新しい先生」「新しい自分」との出会いを自らつくり出そうということだ。

一生つきあえるような友だちを、一人でいいからつくろう」「何でも話せる先生を、一人でいいからつくろう」と訴え、そのために「自分から動き出すこと」が大切だと励ますのである。

受け身で待っていては、新しい人間関係、望ましい人間関係はつくれないということを伝えるのだが、「友だち」の場合、「親友」だけではなく、「新友」「真友」「信友」「心友」など、いろいろな漢字を当てて話すこともある。

ところで、3つの出会いのなかで私がとくに強調したいのは、「新しい自分」との出会いだ。

「自分は英語が苦手」「自分はこの程度」というふうに早々と自分に見切りをつけたり、「自分はこういう人間」と居直ったり、自分を過大評価したりするのは、不遜で傲慢な態度だと言える。

大切なのは、妙な自信や諦めなどではなく、謙虚で前向きな姿勢だ。中学や高校では、それまでの自分をいったん壊し、もう一度新しい自分と出会う努力をしてほしいと私は思っている。勉強や部活動あるいは生徒会やホームルーム活動に新鮮な気持ちで取り組んでほしいのである。

10問クイズ式自己紹介を使って

ところで、私にはもう一つ、「10問クイズ式自己紹介」というお気に入りの活動がある。

その名の通り、10問程度のクイズで自己紹介をするということなのだが、これには日本語版(ホームルーム用)と英語版(授業用)がある。

たとえば、「海木先生はペットが大好きです。海木先生がいま飼っているペットは何でしょう」というように、自分のプライベートな部分を語る問い(自己開示)をいくつか用意する。

そして同時に、「①犬(1匹)②猫(2匹)③熱帯魚(3匹)」など、答えの選択肢をいくつかつけておくのがこのクイズのスタイルだ。

この時、「④蛇(4匹)⑤象(1頭)」など、ちょっとふざけた答えやありえない答えを用意して笑いを仕掛けるのが私の工夫である。

英語版の場合、生徒の反応を楽しみながら、"This answer is put here just for fun. Please don't choose this." のように言うことが多い。

さらに、日本語版の場合(英語版でもかまわないのだが)、次のような質問を用意する。

「海木先生は大学時代、何か大切なものを手に入れました。それは何でしょう」「高校時代、海木先生は、将来何になろうと思っていたでしょう」「海木先生はこのクラスの担任になれて喜んでいます。では、海木先生はこのクラスをどんなクラスにしたいと思っているでしょう」

答えの選択肢は省略するが、このような質問を用意することで、「将来の夢」「大学生活」「クラスづくりの方針」などについて、自然な形で、楽しく語ることができる。ここは「明るい話は深く、重い話は軽く」の精神を生かしたい。

また、「次の言葉の中で、海木先生がもっとも好きなのはどの言葉でしょう」という問いも定番の一つで、次のような言葉を紹介する。

「向き不向きより前向き」「真の学力は、人と人とを結びつける役目をする」「学校は、君たちの持っている色を変えることはできない。しかし、その色を鮮やかにすることはできる」

これに対して、英語版には "What (do you think) is important and necessary for a good English class?" などの問いを入れることが多い。

そして、①genki students (sekkyokusei) ②hard-working students ③a good ALT/JTE ④preparation (yoshu) ⑤pleasure (tanoshisa) ⑥concentration (shuchu) というような選択肢を用意しておく。こうすると、比較的気楽に授業方針が語れるので、私は重宝している。

ただし英語版の場合、実は「クイズ」というよりも「リスニング」という要素が強くなる。

というのも、英語版では、「質問」はもちろん、「正解」もどんどん知らせてしまうからだ。

ときどき生徒の答え(予想)を聞いたりして生徒とのinteractionを楽しみながら進めていくのがポイントなのだが、要するに、聞き取れれば満点がとれるような"クイズ"なのである。

話は少し脱線するが、私は、英語版10問クイズなどで生徒を引きつけ、授業の雰囲気を盛り上げていくのも大切な英語力だと思っている。

私の感覚では、英語教師の英語力がTOEICなどの点数のみで語られるのは、どこかおかしい。

もし私が英語教師のための「英語力検定」(あるいは研修プログラム)をつくるとすれば、英語版10問クイズは、間違いなく「究極のメニュー」の一つとして加わることになるはずだ。

ところで、英語版10問クイズ(日本語版でもいい)は、問題の数を減らし、「3問クイズ」という形にして生徒にやってもらうこともある。

自分の隠れた一面、面白い一面を紹介するクイズをつくり、4人班で発表会をした後、後半では、それぞれのグループの代表(合計10名)に前へ出てきてやってもらうのである。

この方式をうまく使うと、授業は、生徒全員が参加する生徒参加型授業へと大きく変わる。

3問クイズ式自己紹介では、指名して答えを求めたり、聞き手の反応をうかがったりする場面が出てくる。原稿を丸暗記して話すようなスピーチとは大違いで、コミュニケーションにつながるスピーチとして、はるかに優れた活動なのである。

Hitch your wagon to a star!—夢と目標—

さて、こんなふうに、言葉の教師である私たちは、言葉のもつ力を信じ、言葉にさまざまな思いを託すのだが、なかでも大切なのは、夢や希望、そして目標に関する言葉だろう。

2年ほど前、松坂投手の大リーグ入りが決まった時、記者会見で「夢がかなってどう思うか」という質問が出された。その時松坂は、一瞬けわしい顔になって、「夢という言葉は嫌いです」と言ったらしい。そして、「夢がかなったのではありません。目標を達成したのです」という意味のことを答えたらしい。夢と目標は、松坂投手の中では、まったく違ったものだったのだ。

夢(dream)と目標(goal)について考えさせられる印象的なエピソードだ。

ところで私は、生徒たちに次のような「夢の実現方程式」を紹介することが多い。

「強い思い(願い)」に「計画」を掛け算すると、それは「目標」になる。目標に向かって「行動」を起こすと、夢は「希望」に変わる。そして、その行動を持続した時、希望が実現する。

とはいえ、もちろん私たちは、夢の多くが実際には実現しないことを知っている。

たとえば甲子園に行けるのは一握りの高校生であり、大半の高校生は、その夢を実現することなく去っていく。それが人生の現実なのだ。(しかし、だからといって、夢に向かって努力したことが無駄だったと言っていいのだろうか?)

同じように、第一志望の学校をあきらめざるを得ない受験生もあるだろう。(私たちは、第二志望の人生の方が、時として、第一志望の人生よりも幸せであることを知っている。)

しかしそれはそれとして、私たち教師は、まず "If you can dream it, you can do it." "The future belongs to those who believe in their dreams."

と生徒たちを励まし、「夢に向かって疾走せよ」「夢は実現する。夢しか実現しない」「夢は逃げていかない。自分が夢から逃げていくんだ」と檄を飛ばすべきなのではないだろうか。

なぜなら夢に向かって努力することが(そして、そのことのみが)——たとえその夢は実現できなかったとしても——かけがえのない成長(成功ではなく)を私たちにもたらしてくれるからだ。

私たち教師の仕事は夢の大切さを語り続けること、そして生徒たちの仕事は夢を見続けること——まずはそんなふうに考えたいと思う。

"Hitch your wagon to a star."(=汝の馬車を星につなげ)とはエマソン(アメリカの詩人・思想家)の言葉だが、生徒たちが英語の翼を背につけて、大空高く舞い上がることを信じたい。

そして、私たち自身も夢を失わず、自分を励ましながら、夢を決意に、決意を目標に!と生徒たちに訴え続けたいものだ。

本誌書評(1月号)で紹介していただいた『生徒を笑顔にかえる魔法のメッセージ』(学事出版)をあわせて読んでいただけるとうれしい。

* *

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