小学校英語活動でALTをどう活かす?
2008年4月30日
2008年4月30日
![]() 「英語教育」2008年5月号(大修館) → 目次はこちら → 定期購読はこちら From "The English Teachers' Magazine" May 2008 Vol. 57 No. 2 (Taishukan) 國方太司 Kunikata Takashi 2月に文部科学省が発表した『小学校学習指導要領案』では、学級担任(外国語担当教師)の役割とALTの役割を、「指導計画の作成や授業の実施については、学級担任の教師または外国語活動を担当する教師が行うこととし、授業の実施に当たっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに、地域の実態に応じて、外国語に堪能な地域の人々の協力を得るなど、指導体制を充実すること」と述べられている。つまり、学級担任は指導目的に合った指導内容を選択し、児童の学習段階、発達段階を考慮した活動を工夫することにより、指導の効果を高めるように求められている。また、そのために、ネイティブ・スピーカーや外国語に堪能な地域の人々を活用することも求められている。 しかし、多くの学級担任の教師は、外国語(英語)が堪能でないとの理由から、英語活動を実施することに不安を感じ、ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域の人々に活動の実施だけでなく、学習指導案の素案作りまで任せてしまう傾向が見られる。その結果、教えやすい語彙の学習や、パターン化した構文の学習を繰り返す英語活動の場面に出会うことがある。 (事例1)
子どもたちは、繰り返しているが、会話の内容や意味を理解せずに繰り返しているだけである。その後に続くインタビュー活動では、どのように話せばよいのか困ってしまい、単語だけで答えてしまうことが多くなる。あるいは、間違った表現で答えたりすることが多くなる。 しかし、次のように学級担任がALTと会話する場面を見せることにより、しっかりと英語を聞き、文脈、理解できる単語、ジェスチャーから子どもたちが意味を推測し、会話の意味、内容を理解できるように工夫することで、学習への関心・意欲が高まり、子どもたちにコミュニケーションを積極的に図ろうとする態度を育むことができる。 (事例2)
会話が長くなると、子どもたちの理解が追いつかなくなる場合があるので、注意が必要である。子どもたちの中には、ALTの先生についてもっと知りたい、自分から進んでたずねてみたいと意欲を持って、"I like dodge ball at school. What sport do you like at school?"とたずねてくる子どもが現れた。この子どもはALTの好きなスポーツはよく知っているので、学校でするスポーツでは何が好きかと、聞いてきたわけである。 事例1、2で違いを示したように、英語活動にALTが入るだけでは、英語活動の目的は達成できない。学級担任がALTを活用する工夫が大切である。次に、充実した外国語活動を実施するために学級担任とALTの役割について考えてみたい。 学級担任の役割外国語活動がねらいとしていることは、中学校の英語学習の前倒しとなるような文法を含めた学習ではなく、歌やゲーム、あいさつなど、自然な形で英語に触れさせたり、英語を楽しんだりしながら、コミュニケーションへの積極的な態度を育むことである。学習指導案を作成する段階で、「教師が教えたい英語」ではなく、「子どもが言いたいことがら」という考え方に立ち、児童の生活・文化に身近で、児童の興味・関心を引きつける話題・場面を取り上げ、子どもが展開しそうな会話に必要な、簡単で汎用性のある言語材料を選択することが必要である。そのために、子どもの発言や行動を日頃から観察したり、子どもが言いたいことやしたいことを調査したりして、最適な題材を探り出し、子どもの発達段階を考慮しながら、適切な言語材料を選択することが大切である。 次に、設定したねらいに基づいて、「外国語(英語)の会話の意味、内容に気づく」段階、「外国語の形式に慣れる」段階、「友だちと実際に使いながら慣れ親しむ」段階、「子どもが考えて、自己表現の機会で外国語を創造的に使う」段階を設定して、子どもたちが自信を持って発表でき、自分の考えを発表できた、あるいは相手の考えをたずねることができたと、成就感、達成感を感じるように段階的、発展的に展開する活動を工夫することが大切である。また、子どもたちの学習段階、発達段階を考えて、ペア活動、グループ活動など授業のねらいに合った活動形態を選択することも重要である。 授業を実施する段階では、学級担任はできるだけ英語を使いながら、ALTや児童に指示を出し、授業を進行させるように努めることが望ましい。また、児童が積極的にコミュニケーションを図ろうとする気持ちを起こすよう働きかけるために、児童と一緒に活動に参加し、英語を使うことに積極的な姿勢を示すようにする。さらに、子どもたちの活動を観察し、子どもたちのつまずきに気づき、適切な支援をすることが必要となる。 ALTの役割学級担任が学習指導案のねらい、内容、活動を考える責任を担うことを述べたが、ALTは自然な英語を使った会話を提示したり、学習指導案のねらいを理解し、ねらいに合ったクイズ・ゲームなどの活動を提案し、指導案作成に協力する。授業の実施にあたっては、学習指導案のねらいや場面設定に基づいて、言語材料を使って自然な場面で子どもたちに話しかけるとともに、子どもたちに発話を促すように働きかける。英語に触れることは、言葉だけでなく身振りや考え方なども含めて、子どもにとっては新しい生活・文化に触れることである。子どもたちは、直接外国人と接することにより、新たな視点で言葉や身振りや考え方や表現の違いに気づき、関心を持つものである。自然な英語の使い方や発音を児童に慣れ親しませながら指導する。また、扱われている題材に適した外国の様々な文化や習慣を児童の生活・文化に合わせて、子どもたちに伝えることも大切である。 日本児童英語教育学会(JASTEC)関西支部プロジェクトチーム(代表:樋口忠彦)が、大学1、2年生(909名)を対象に実施した英語学習にかかわる情意面に関する質問紙調査の結果によると、調査対象者の海外居住・滞在経験者と未経験者の間の比較分析の結果、「英語学習に対する興味・関心・意欲」「コミュニケーションに対する積極的な態度」「自文化への関心」「他文化への関心」等において海外居住・滞在経験者の平均値が有意に上回っていた。 海外居住・滞在経験者の滞在国は77%が「英語圏」であり、滞在期間は75%が「1か月以内」であるが、短期間の僅かな体験であっても外国の人々や外国の文化に触れ、外国語を実際に聞いたり話したりする機会を持つことは、学習者の情意面に好ましい影響を与えると言える。学校教育の場において、ネイティブ・スピーカーとの触れ合いや、異文化体験的な活動、および国際交流会などで外国人のゲストと英語を使ってコミュニケーションを図る経験などは、同様の効果につながると考えられる。 効率よく打ち合わせをするために学級担任からよく聞く問題点は、ALTとの打ち合わせに十分な時間が取れないということである。そこで、授業の打ち合わせ用のA4判の授業フォーマットを準備することを勧めたい。
上記のフォーマットを用いることにより、学級担任が「授業のねらい」や「活動の目的」を明確にすることができ、段階的に発展する活動になっているかどうか確認することができる。特に本時の目標とする表現を、日本語を介さず、子どもたちに会話の意味、内容を理解させるために、どのような場面で、誰と誰が話をしているのかを明確にすることが大切である。さらに、補助教材として準備するものを書き、ALTにも教材の作成をお願いすることも可能になる。最後のコメント欄に、授業の反省等を記録することで、今後の授業改善にも役立てることができる。 また、毎時間ALTとティームティーチングできない場合、今までの活動内容や、子どもたちの学習段階をALTに知らせる場合にも役に立つ。 さらに、各単元の指導計画を事前に示すことでALTが来校しない授業で、ALTの音声をテープに吹き込み、そのテープを授業で利用したり、扱う題材に適したALTの国の文化や生活について話している内容をビデオに録画し、授業で利用することも考えられる。 ALTと望ましい関係を作るために小学校の先生方と話していると、外国語活動は英語が堪能な人が英語を教えるのが望ましく、学級担任は子どもたちの様子を観察するのが仕事だと考える人もいる。一方で、「私は英語が不得意だが、子どもたちに私と同じように英語に対する苦手意識を持たせたくない」と、外国語活動に積極的に取り組む先生もおられる。このような先生方は、子どもたちの前でもALTに単語だけで話しかけたり、日本語を交えてでも会話を続けようとすることが多い。子どもたちも、その先生の態度を見て、積極的に英語活動に参加する姿勢が見られる。小学校の英語活動では、英語が堪能であるよりは、子どもたちの生活・文化や興味・関心をよく知っていることが大切であり、子どもたちがコミュニケーションを楽しむように働きかける能力が何より大切な資質である。物怖じせず、ALTに授業のねらいは何か、各活動のねらいは何かを伝えることが必要である。教師自らが積極的にALTに話しかけることが、望ましい関係を作る不可欠な要素である。 ◆参考文献・引用文献 樋口忠彦他(2008)「中学校入学以前の英語学習経験が大学生の情意面に及ぼす影響」日本児童英語教育学会紀要第27号投稿中 |
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