小学校での異文化理解教育で大切にしたいこと
2008年2月28日
2008年2月28日
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佐賀県教育センター 宗誠 So Makoto 「異文化理解」は「自文化理解」![]() 「英語教育」2008年3月号(大修館) → 目次はこちら → 定期購読はこちら From "The English Teachers' Magazine" March 2008 Vol. 56 No. 13 (Taishukan) しかし、小学生の段階では、異文化に触れて肌で感じるといったような、理解の前の「気づき」というレベルで十分でしょう。言ってみれば、国際理解の前の国際感覚とでも呼ぶべきものを育てる必要があると思います。 市川(2004)は、国際感覚がある人というのを次のように定義しています。 「国際感覚とは、自分と相手とを相対的に見つめることで初めて気づく共通点と相違点とをきちんと受け止める感覚であろう。自分の文化にもそして相手の文化にも、ともに良い部分と悪い部分があることを理解し、それを受け入れて、自らの世界観を広げることができる感覚を身に付けた人を国際感覚がある人と呼ぶことができる。」 これを小学校での英語活動に当てはめると、異文化に触れる様々な活動の中で、自分たちとは「違う何か」に気づき、では「自分たちはどうだろう」と自文化を振り返るという経験をさせるということが必要になってきます。その経験の中で、それぞれにいい点もあれば悪い点もあると、両者を客観的に見ることができる子どもを育てることが異文化理解教育のねらいです。 「異文化」「自文化」の関係は、「他者」と「自分」の関係に似ています。自分と異なる他者と交わる中で、様々な価値観に触れたり、ものの見方・考え方に気づいたりします。また、他者とのかかわりの中で「自分とはどういう人間か」という「メタ認知」を育てることもできます。異文化理解も同じで、今まで知らなかった異なる伝統や文化に触れることで、そこに込められた人々の願いや多様な考え方などを学ぶことができますし、それと比較することで自分がもっていた文化(自文化)を再認識することができるのです。「異文化理解教育」は、同時に「自文化理解教育」であるべきだと言えます。 異質性とともに同質性理解も多くの授業を見せていただく中で、「異文化理解」という言葉からくる誤解、もしくは先入観といったものを感じることがあります。その1つが、異文化の中の「異」の部分だけが強調されているのではないかという点です。 例えば、アメリカ人とかアメリカという国について触れたときに、肌の色、髪の毛の色、目の色などの外見的な違い、ジェスチャーや表情の豊かさなどパフォーマンスの違い、そして、食べ物の好みや生活習慣の違いなど、その異なる点ばかりに目を向けさせる授業を見かけます。 その結果、子どもたちは、「日本人とアメリカ人って違うところが多い」という感想をもつようになります。金子みすヾではありませんが、その違いを「みんな違ってみんないい」と感じればまだしも、中には「私たちとは違ったヘンな人」と感じる子が出てくるのは問題です。 筆者は、「異文化」の中にある「異質性」と同時に、「異文化の中の同質性」に気づかせるということも重要だと考えます。 例を挙げましょう。 「お正月」というテーマで活動していたときのことです。ALTに双六やこま回しなどお正月らしい遊びを紹介したときに、カナダ出身のALTが「双六によく似た遊びで、"Snakes and Ladders"というゲームがあるよ」ということを教えてくれました。サイコロを振って、1から100までのマスを進んでいくという点が双六によく似ていました。また、「福笑い」を楽しんだときには、同じように目隠しをしてロバにしっぽを付ける"Donkey"というゲームを紹介してくれました。 子どもたちは、国が異なっても子どもの遊びには似たものが多いという気づきをもったようです。 もっと大きく言えば、「外見や文化、言語が違うけれど、ぼくたちと同じように家族や友達を愛し、泣いたり笑ったりしながら生活しているんだ」というところに気づいたということです。そのような気づきは、「いろいろ違う点もあるけど、同じところも多い。結局は同じ人間なんだね」というところに帰結するものになります。 キーワードはやっぱり「人」異文化理解教育をする上で、もう1つのポイントは、「ステレオタイプの文化観を育てない」ということです。「国際理解教育の一環としての英語活動だから」ということもあって、授業の題材として、ハロウィン、クリスマスなどの行事を取り扱った授業が多く見られます。その結果、子どもたちに、英語圏のすべての国でハロウィンやクリスマスがあると思い込ませてしまうことがあります。子どもによっては、ハロウィンのお祭りがないのは日本だけだという誤った概念をもってしまうかもしれません。 授業で取り扱う場合、子どもたちが、「英語を話す国ではすべてこのような文化なのだ」と外国の文化、英語圏の文化をひとくくりにしてとらえてしまうことがないように留意しなければなりません。そのためにも、「英語圏の行事だから」という理由だけで、10月はハロウィン、12月はクリスマスというイベント的な取り扱いは避けたほうがよいでしょう。 授業の中でハロウィンなどの行事を取り扱う場合には、ALTや外国人ゲストに、自分の文化として紹介してもらうようにするという方法があります。「人を通して」「その人の文化として」行事を紹介してもらうということです。 ALTや外国人ゲストに、「私のうち(地域)ではハロウィンという行事があり、こんなことをしています」という紹介をしてもらうようにします。そして、担任が「世界中すべての国や地域でハロウィンというお祭りが行われているわけではない」ということを伝えます。 外国人ゲストを「異文化をもたらしてくれる人」として見ますから、彼らが「宗教的な理由で、うちではハロウィンをしない」と言えば、無理して取り扱う必要もないと考えます。世界中には様々な文化や宗教があり、ハロウィンやクリスマスなどの行事も家庭や地域ごとに違っているということに気づかせることは、ステレオタイプの文化観を育てないためにも必要なことです。 国際理解をテーマにした調べ学習でよく取り扱われる3Fsとして、"Food"、"Fashion"、"Festival"があります。このような調べ学習でも、「学習課題に対する切実感」と「人を通しての関心」がない場合には、「インドはカレー」「アメリカはハンバーガー」というような偏った知識を植え付けるだけで終わってしまう場合があります。「日本と言えば、寿司、歌舞伎、芸者…」と決めつけるのと同じです。 食文化などを表面的に取り扱って、「異文化理解」が「異文化誤解」にならないように留意しなければなりません。コミュニケーションも文化理解も、キーワードは「人とのつながり」だと言えるでしょう。 異文化・自文化に気づかせる活動例小学校での英語活動では、ゲームやものづくりなどの活動を中心に授業を組み立てます。小学生が楽しみながら異文化に気づく活動を2つほど紹介してみます。(1)イマジネーション・ビンゴ 新しいALTとの初めての授業に適しているゲームです。 3×3の9マスのビンゴシートを持たせ、それぞれの子どもに、あるテーマから連想するものをそれぞれのマスに書かせます。例えば、「夏」というテーマを与えると、子どもたちは「スイカ」「花火」「夏休み」「海水浴」などの絵やことばを書きます。その場合、絵でも日本語でもいいとします。3〜4人のグループでそれぞれの子がイメージするものを出し合い、1枚のビンゴシートを作るのもいいでしょう。 準備ができたら、そのテーマから連想するものをALTに次々に言ってもらい、自分が書いたものと同じ(または同じような意味の)単語が出ればそのマスを消していくというビンゴゲームです。ALTが言った単語の意味は日本語で説明するのではなく、ジェスチャーなどを使って伝えるようにします。子どもの実態をよく知っている担任が、"What's that?"と尋ねてALTに説明を促すということも必要です。 日本人と外国人では連想するものが大きく異なる場合もたくさんあり、その違いに触れるのもいい異文化体験になります。例えば、オーストラリア人のALTは「夏」という言葉から、"New Year's day."、"Christmas."などの単語を言い、そこから子どもたちは季節が逆であるということに気づきました。 (2)世界の時刻と時差 数字と時刻を取り扱った授業として、おもちゃの時計を用いて、"What time is it now?"—"It's 〜 o'clock."という会話を楽しませるものがあります。しかし、おもちゃの時計を使ったやりとりでは、高学年の児童はあまり答えようという気にならないようです。時計を持っている教師が、時計を持っていない児童に時刻を尋ねるという不自然さがあるからでしょう。やはり、時刻を尋ねる場合は、時刻が分からないから聞くという"information gap"が必要になってきます。 そこで、時差を取り入れて、世界各都市の現在の時刻を聞いたり考えさせたりすれば、同じ質問でも意味のあるものとなります。ニューヨーク、ロンドン、パリなど子どもたちが聞いたことのある都市名を地図上で確認し、「そこは今何時だろう」と考えさせると、子どもたちも興味をもって調べることができます。 世界各都市の今の時刻を尋ねたあと、実際にその時刻が合っているかどうかをインターネットで確かめます。「世界の窓」というページにアクセスすれば、世界各都市の現在の様子(ライブ映像)を見せることができます。そこには、時刻が表示されているだけでなく、天気や気温なども表示されている場合があります。また、生の音を含めて動画で見られるサイトも数多くあります。単なる時計の表示だけでなく、現地の風景を見て時刻を実感できますし、1つの画面から、気候や季節やその都市の雰囲気など、たくさんの異文化への気づきや感動を得ることができるのが最大の魅力です。ただし、サイトの中には休止中のものや、時刻設定が合っていないものもあります。また、サマータイムになっている都市もあります。事前にページをチェックしたり、パソコンのデスクトップ上にそのページを置いたりしておくことが必要です。 ◆参考文献・引用文献 市川力『英語を子どもに教えるな』2004,中公新書ラクレ 宗 誠『小学校ならではの英語活動〜国際コミュニケーションの素地をつくる』2007,文溪堂 |
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「英語教育」2008年3月号 |
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