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英語教育エッセイ

国内外で活躍する英語教育業界関係者によるエッセイコーナー

本当に効果的なライティング指導とは
— 指導を行うために留意すること

2007年9月01日


日本女子大学附属高等学校教諭
工藤洋路
Kudo Yoji


global errorは訂正して、local errorは見逃す?

英語教育の最新版
「英語教育」2007年9月号(大修館)
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From "The English Teachers' Magazine" September 2007 Vol.56 No. 6 (Taishukan)
生徒が書いた英作文を訂正することは本当に効果があるのだろうか。気づく限りの誤りを赤ペンで修正するのが放課後の日課になっている教師も少なからずいるのではないか。作文のフィードバック研究の1つとして、作文の誤り訂正の効果についての調査がいくつか行われている。だが、それらの調査結果は必ずしも相互に一致しないことはすでに知られているだろう。

しばしば、「作文のglobal errorは訂正して、local errorは見逃す」という添削手法を耳にすることがある。作文の誤りは、読み手がその内容を理解するのに支障があるものはglobal error、逆に、内容理解には問題がないものはlocal errorと分類される。伝えたい内容を誤解なく伝達できるかどうか(言い換えると、コミュニケーションの成否)を主たる評価観点にした場合には、この分類は妥当であろう。

しかし、往々にして、作文課題を出した教師がその作文の読み手になることが多く、その場合、本来はglobal errorになりうる誤りが存在する作文でも、その教師は、その作文で言わんとしている内容が理解できてしまうことが多い。その結果、その誤りはlocal errorと判断され、訂正の対象にならない場合がある。作文を書かせるまでに様々なpre-writing activityを経ている場合は、特にその傾向が強い。つまり、誤りがglobalかlocalかを絶対的に判断できる評価者として、授業担当の教師はふさわしくないであろう。

では、どのような誤り訂正を行うことが望ましいのだろうか。教師の主たる任務は、生徒の作文能力を的確に把握して、能力向上に貢献する効果的なフィードバックを与えることである。この点を、再度、誤りがglobalかlocalかという指標から検討してみる。この指標はある課題において、ある読み手を想定した場合に、作文が適切かどうかを測るものであるため、通常、絶対的なものである。生徒の能力によって、この指標が上下するようなものではない。つまり、高さの変えられない1つのハードルを跳べるか跳べないかを判断しているのであって、その高さのハードルを設定するには時期尚早の場合もあれば、単にコミュニケーションが成立するかどうかの指標だけでは物足りない場合もある。そこで、教師の手の入れ所として、優先順位の高いものは、1) 作文を通して身につけさせたい事項(指導のポイント)が関係している箇所、2) 訂正によって比較的すぐに定着しそうな箇所、である。

1)に関しては、明示的にそのポイントを生徒に提示する場合もあれば、作文プロセスの中に暗示的に組み込ませて、フィードバックの際にそのポイントを明らかにするなど、方法は様々考えられる。大切なことは、語彙や表現、文法、文章構成など、指導のポイントで設定された事項を、生徒が作文を書くことによって、経験する場面を設けることである。

2)については、「できることから着実に」という発想に基づいている。例えば、10分以上時間を与えても数行しか書けない生徒に対して、文章構成の観点でフィードバックを与えてもあまり効果は望めない。書くべき内容が浮かばないのか、あるいは思いついた内容が英語にできないのかを判断した上で、ある程度の量を設定時間内で英語で書くことにポイントを絞ったフィードバックがまずは効果的である。

fluencyを重視して、accuracyは二の次に?

「今回はfluencyを重視するので、accuracyに関わる部分は訂正しない」ということや、その逆が言われることがある。fluencyとaccuracyはよく対立概念のように捉えられているが、かなりの部分で相互補完的な役割を果たしている。fluencyの定義については、『英語教育用語辞典』(大修館書店)によると、「目標言語を話したり、書いたりする際の滑らかさ、流暢さ、および機能的な適切さ。(中略)文法構造がよどむことなく自動的に使われていることなどの観点から定義される」となっている。また、Longman Dictionary of Language Teaching & Applied Linguistics(1992)によると、fluency describes a level of proficiency in communication, which includes: the ability to produce written and / or spoken language with ease(後略)となっている。「自動的」とかwith easeという表現でfluencyが定義されているが、accuracyが無視されているわけではなく、「文法構造がよどむことなく」と記述されているように正確な言語使用が前提となっていると思われる。inaccurateな言語使用を自動化しても意味がないからである。

そこで、指導への示唆として、fluencyを高めることを目的とした場合に、accuracyを高めることをその手段とすることが考えられる。timed writing(書く時間の制限を設けた活動)として、目標語数を設定すると同時に、ある特定の文法を正確に使うことも活動のポイントとする。文法の正確さがポイントとなるので、書くべき内容や使用すべき語彙などは与えてもよい。例えば、4~6枚の絵からなるストーリーを見せ、それを過去の話として英語で描写してもらう。目標語数は100語、時間は5分以内と設定する。絵の横にキーワードをいくつか提示しておく。単純な活動だが、時間内に過去時制を適切に使いながら、ストーリーを完結させる必要があるので、この作文活動を通して、過去時制を自動的に使用できる能力が身につくことが期待できる。過去時制以外の文法項目や文と文とのつながりに誤りが生じる可能性は否定できない。

だが、ストーリーを描写する上で最も多用される文法事項は過去時制であるだろうから、過去時制から自動化させるトレーニングをすることは妥当な判断と言える。すぐに過去時制を用いた文を量産できないような生徒に対しては、与えられた絵に対する質問をいくつか用意し、それに答えてから、timed writingを行うことも可能である(大修館書店の教科書Genius English Writingのpp.72‐73に、絵は使用していないが、この活動のアイデアを生かせる教材が掲載されている)。

「量」を重視して、「質」は後回し?

作文の「量」と「質」の議論についても、fluencyとaccuracyの議論と同様、両者を対立する概念として捉えることは指導を制限しかねない。ACTFL(American Council on the Teaching of Foreign Languages)Guidelines for Writingの記述には以下のようなものがある。 When Intermediate-Mid writers attempt Advanced-level writing tasks, the quality and / or quantity of their writing declines and the message may be unclear.

中級レベルの学習者が身の丈を超えた作文を書いた場合に限定されるが、書けなくなる時には「量」と「質」が同時に低下し、その結果、書きたいメッセージが不明瞭になる。つまり、量が書けなくなることは、質の低下を引き起こす可能性があり、逆に、良質のものが書けない場合は、量的にも多くを望めない。確かに、この中級レベルに該当するであろう高校生が、実際に作文を書いている様子を観察すると、書くべき内容を十分に用意できたとしてもすぐには書き始めない。内容の展開や使うべき言語材料の質について、ある程度吟味をした上で、初めて書き始める傾向にある。納得のいく質が伴わないのに、量だけを書き続ける学習者は中級レベルを超えると少ないと思われる。

では、この点を考慮に入れた指導にはどのようなものがあるだろうか。単純に考えて、質が高い英文とは、内容に深みがあることが1つ挙げられる。英文の内容に深みを持たせる1つの手段は、修飾語句を追加することであろう。すると、必然的に量は増える。「質」を追求した結果、「量」も増えることになる。以下は、文の数は変わらないが、修飾語句を付け加えたことによって、内容に深みが生じた事例である。

A lot of people have cellular phones. We see people talking on the phone everywhere.【15語】

↓(修飾語句を追加)↓

Today, a lot of people in Japan have cellular phones. We see people talking on the phone everywhere, for example, on the train, on the street, in restaurants, and so on.【31語】
(参考:Genius English Writing, p.110)

修飾語句を付け加えることは「質」を高めるための1つの方法に過ぎないが、このように、センテンスレベルで「質」の向上を目指すことによって、内容に深みが生まれ、その結果、「量」も妥当なものになっていく。ただ単にセンテンス数を増やすことによって「量」を確保することを目標にするよりも、文単位で「質」を高めることに指導のポイントを置いてはどうか。

高等学校「ライティング」教科書が文法シラバスだが…

高等学校の「ライティング」の教科書のほとんどが文法シラバスを採用しているが、その目的はどこにあるのだろうか。ライティングに文法が必要なことは当然だが、ライティングにおける文法とはどのようなものだろうか。

まずは、grammar for writingなのかwriting for grammarなのかを議論してみたい。前者の意味は「ライティングに必要な文法」ということである。例えば、「昨日の出来事について書きたい」ので「過去のことを表現する方法が知りたい」という場面がある。すると、「動詞の過去形の指導」が必要となる。また、「物の説明をしたい」ので「名詞の説明をする方法が知りたい」という場面では、「『~な名詞』はどう書き表すか」と考えると、「名詞の後置修飾(前置詞、to 不定詞、分詞、関係詞など)の指導」が必要であると分かる。つまり、書く際にどのように書けばよいのかを、文法の観点で整理することが、grammar for writingの意味である。

一方、writing for grammarの意味は、指導のポイントとなっている文法事項を定着させる手段として、書く活動を行うということである。「過去形」が指導のポイントになっていれば、例えば、「日記を書く」という活動を行うことができる。

grammar for writingにせよ、writing for grammarにせよ、書くというカテゴリーに属するものであるので、ライティングの教科書で扱うべき項目には違いない。しかしながら、両者ともにライティングの諸要素の全てをカバーしているわけではない。前者であれば、vocabulary for writingやorganization for writingなど他の様々な観点と並列に並べられることによって初めて、どの観点でシラバス構成を行うべきかが見えてくる。後者であれば、listening for grammar、speaking for grammar、reading for grammarのように、他の技能との並列関係の中で議論されて初めて、ライティングという手段を用いることが、最も定着に効果がある文法事項が見えてくるのではないか。もし、リーディングという手段を借りた方が、その文法の定着が高まるのであれば、その文法事項はreading for grammarの視点で指導されるべきである。高等学校の「ライティング」の教科書を以上のような視点で分析をした上で使用すると、効果的な指導方法が見出せるのではないか。

paragraph writingで「型」を指導しているが…

高等学校の「ライティング」の教科書の多くは、paragraph writingを取り入れ、topic sentenceやsupporting sentenceを用いたパラグラフの構成の方法を説明している。paragraph writingを高校生に教えることで、作文の構成力が高まると同時に論理的な文章を読む力も養成することが可能である。しかしながら、いわゆるparagraph writingで指導する作文の「型」は万能薬ではない。なぜなら作文の活動や試験では様々な文章スタイルを書くことが求められているからである。ELEC同友会英語教育学会ライティング研究部会(2007)によれば、2001年度から2005年度の大学入試におけるライティングの問題(いわゆる自由作文の形式)の約50%は、paragraph writingで学習する「型」が通用するであろう「意見陳述型(persuasive型)」の問題で、残りの約半分は、narrative 型やdescriptive型、あるいはsummary型、または複数のスタイルの融合が求められている問題であった。従って、常に決められた「型」を利用するのではなく、活動や問題によって、柔軟に対応する力が必要となる。

次に、paragraph writingを学習するタイミングについても考慮すべきである。金谷(1999)によると、英作文指導は、和文英訳とparagraph writingに二極化されているが、paragraph writingの指導を行う場合でも、まずはある程度の量が書ける段階に到達していることが前提となるとしている。大した量が書けないのに、「型」を追求した場合は、以下のような文章ができ上がってしまう。

I like dogs very much. Firstly, they are cute. Secondly, they make us relaxed. This is why I like dogs very much.

この文章では、確かに「型」は整ってはいるが、量的にも少なく、内容的にも薄い。まずは、「型」を整えるために必要な内容量が必要となる。従って、paragraph writingの指導を導入する時期については、再考の余地があろう。

読み手を設定したライティング活動を行っているが…

作文を書くときは読み手を意識して書かせる方が効果的であると言われている。現実のコミュニケーション場面では、目的や読み手の想定がない中で何かを書くことはまずありえないからである。その結果、今では数多くのライティングの活動や試験において、読み手が設定されている。しかしながら、指導という観点から議論をすれば、ただ1人の読み手を設定するだけでは、なかなか生徒の能力を向上させることには貢献しないのではないか。生徒の作文のプロセスとして、課題が出された時には、読み手の設定があれば、その場で一通り確認するであろう。ただ、ひとたび、内容を英語で作り上げる作業に入ってしまうと、作業記憶は、読み手を考慮して内容を作成することにまでなかなか及ばない。よほどそれが簡単な活動か、あるいは生徒の能力が高くない限り、最初に確認した読み手の存在は消えてしまう。

そこで、ここでの提案として、立場や親密度が異なる複数の読み手を設定して、それぞれに対して同じトピックで作文を書かせてみてはどうか。同じトピックだが読み手が異なれば、何かを変えることになるであろう。それは、使うべき語彙や表現といった言語材料的なものかもしれないし、共有している情報から判断して書くべき内容かもしれない。このように意図や理由を伴って書いた英語に関しては、より正確にそして短時間で定着する可能性が高い。

例えば、自己紹介を書くとしても、クラスの友人に書くのか、ホストファミリーに書くのか、留学先の入学課に向けて書くのかで使うべき言語材料や、書くべき内容が異なる。指導のポイントとしては、例えば、留学先の入学課に対しては、客観的な書き方が求められるので、「"I"という主語をあまり使わずに書く」ということなどが設定できるだろう。このように、同じトピックではあるが、読み手の違いにより、複数の異なる作文を書かせることによって、指導ポイントを効果的に指導できることとなる。

◆参考文献
ELEC 同友会英語教育学会ライティング研究部会(2007)「大学入試ライティング問題をどう料理するか?」『ELEC 同友会英語教育学会第12回研究大会発表要綱』(p.33)
金谷憲(1999)「和文英訳と paragraph writing の狭間」『英語教育研究』Vol.15(pp.7‐10)語学教育研究所

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