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英語教育エッセイ

国内外で活躍する英語教育業界関係者によるエッセイコーナー

個々の生徒に合わせた語彙指導を
SELHi校の試み

2007年1月31日


京都外大西高等学校教諭
ローリー・ゼヌック・西出 (前田久夫訳)
Lori Zenuk Nishide


語彙力の増加を目指して

英語教育の最新版
「英語教育」2007年2月号(大修館)
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From "The English Teachers' Magazine" February 2007 Vol. 55 No. 13 (Taishukan)
すべての学習者の語彙力が異なっているにもかかわらず、ほとんどの英語のカリキュラムは、個々の生徒のニーズに適した編成にはなっていない。本校の SELHi 研究の目標の1つは、個別的学習法や試験によってできる限り短期間で、しかも効率的に語彙力を増強させることである。そのために先ず行ったことは、各生徒がどの程度の語彙力を持っているかを探り出し、学習させる語彙とその学習方法を決定することであった。

生徒の語彙レベルを測るため、語彙レベルテスト(Nation 1993, Schmitt, Schmitt and Clapham 2001)を用いて、6段階に分類された使用頻度の高い語彙のどのレベルをどの程度習得しているかを定期的に調査した。その結果、入学時の生徒の語彙力は、各レベルにおいて大きな開きがあった。平均的な生徒は、最も頻繁に用いられる1,000語でもわずか60%しか意味を理解できず、最低は26%、最高は92%であった。また2,000語になると、平均は42%であり、最低は7%、最高は93%であった。このような事情から、各生徒の語彙力の増強には個別的なプログラムが必要であった。

次に、英語学習に必要な語彙であるが、英語で最も頻繁に用いられる語彙が、英語の基礎レベルで学習すべき最も大切な語彙である。本校では、語彙学習の出発点を General Service List(GSL)(West, 1953)にある使用頻度の高い2,000語としている。その学習が終われば、500語から成る Academic Word List(AWL)(Coxhead, 1998)を学習し、さらに頻度の低い語彙の学習に移ることにしている。GSL に載っている単語は最も一般的に用いられるものであり、この語彙を身につければ一般的な英文の約87%を理解でき、アカデミックな英文の80%を理解できるといわれている。一方、AWL に載っている語彙はアカデミックなテキストで使用されている語彙の10%余りであるが、GSL と AWL の語彙を運用できれば、いかなる英文のテキストであれ、90%〜97%を理解することができるといわれている。この理解度は、使用頻度が低く、しかも特殊で専門的な語彙の意味を文脈から判断する際には必要不可欠である。

個別学習プログラム—手順と方法

まず生徒に教えるべきことは次の4つである。

(1) 学習すべき語彙をいかに選ぶか
(2) 辞書を活用して単語カードをどう作成するか
(3) カードを用いていかに学習するか
(4) カード学習にどれだけの時間的な間隔をとるべきか

この活動で、個々の生徒に必要なものは、55?×91?のカード(100枚入りのパック)、もしできれば日本語訳のついた GSL と AWL の語彙一覧表、5つのポケット付のアコーディオン・ファイル、コーパスに基づく英和辞典である。

カードを用いるのは、時間と労力の点で効率的だからである。しかも、生徒自身が繰り返しや作業手順を自由にできるからである。カードの裏面に日本語を書くため、英語と日本語を同時に見られないので、生徒は暗記しなければならないが、実はこの暗記をさせる方法は、丸暗記学習に非常に長けている日本人にはとても適した方法である。

生徒は、GSL と AWL に載っている単語の中で、各単語につけられている番号(コーパスに基づく使用頻度順の番号)の小さいものから知らないと思う単語を見つけて下線を引き、その単語カードを作成する。カードの表は「英語面」であり、裏は「日本語面」である。英語面には、単語、単語の番号、作成月日、発音記号、連語や文中での使用例を書く。一方、日本語面には最も一般的な日本語の意味と品詞を書くだけでなく、印象をより強くするように絵や日本語でのコロケーションを書くよう指導する。

このカードを用いた学習は次の手順で行う。

(1) 100枚のカードの中から任意に10枚のカードを選ぶ。
(2) 英語面の単語を見て日本語を思い出す。
(3) 日本語を見て英語を思い出す。
(4) 英語面を見て、日本語の意味を言う。正しく言えれば、そのカードを単語カードの10枚の「束」の後ろに置くが、言えなければ束の手前に置いて、目に留まりやすいようにする。
(5) ここまでの作業を繰り返した後、日本語を見て英語を発音するという作業に移る。もし単語の発音が分からなければ、発音記号を読む。
(6) いったん10枚のカードの単語が分かるようになると、2番目のポケットにそのカードを入れ、別の10枚のカードを学習する。
(7) 一定の期間の後、覚えた単語のテストを各自が行う。覚えている単語は次のポケットに移すが、そうでない単語はこれから学習する単語の中に入れる。手前のポケットに入っている単語は、より頻繁に各生徒がテストすることになるが、後ろにある単語はそれほどしない。

この方法は、短期と長期記憶に適した方法である。この繰り返しを体系的に行う方法は、Mondria と Mondria de Vries(1994)の「手動式コンピュータ」方式であり、単語カードを利用した訓練法は、Griffin(1992)の研究結果から生まれたものである。

h2>学習のフォロー 1.語彙のテストと評価
生徒は、6週毎に100枚の単語カードの中から10枚の試験を個別的に受ける。日本語を見て、英語の単語を発音するテストである。80%以上の正答率であれば、生徒は別の100枚のカード学習に移る。合格できなければ、その100枚のカードの学習を続ける。評価は、作成されたカードの適否とテスト結果に基づいて行う。

2.生徒のやる気を起こさせるには
生徒は、GSL と AWL 語彙一覧表の中から学習する単語を自分で選ぶので、学習スタイルと進度の点で非常に個別的で取り組みやすいプログラムになっている。また、学習の進捗状況(語彙一覧表の中での到達度)を把握することで内因性動機付けを向上させることができる。教師は、生徒のやる気を削がないよう、不出来な状況を成績に反映させることは、最小限に止める。

3年間、単語カードと手動式コンピュータによる直接学習法を用いれば、どのようなプログラムで学習している生徒であれ、語彙学習においては2,000語以上の単語を身につけることができる。単語を深く理解し、しかも流暢に使えるようにするためには、インプットとアウトプット活動により語彙を繰り返し目にしたり、用いたりすることが必要である。

3.習得した語彙を活用させる
習得した語彙を活用させる1つの方法は、多読である。生徒は、多読プログラムの実践に当たり、内容を100%理解できなくても、知らない単語を文脈から推測する方法や、関心の持てる本をいかにして見つけるかの指導を受ける。生徒は各自のレベルに応じて多読を行い、学習した語彙をさまざまな文脈、形態、コロケーションで繰り返し目にすることになる。その結果、リーディングのスピードや理解力が向上し、英語への学習意欲が向上している。

単語の深さと流暢さを身につけさせる別の方法は、内容重視の授業の中で時間制限を設けたライティングやスピーキングの活動をさせることである。これらの活動は、学習した単語やコロケーションの認識力を高めることになる。語彙学習の鍵は、読み、聞き、書き、話す活動を通じて最も頻繁に用いられる単語に幾度となく出会うことなのである。

◆参考文献
Coxhead, A. (1998). An academic word list. Occasional publication number 18, LILS, Victoria University of Wellington, New Zealand.

Griffin, G. F. (1992). Aspects of the psychology of second language list learning, Unpublished Ph. D thesis, Dept of Psychology, University of Warick.

Mondria, J-A. & Mondria de-Vries, S. (1994). Efficiently memorizing words with the help of word cards and the ”hand-computer“: theory and applications, system, 22, 45‐57.

Nation, I.S.P. (1993). Measuring readiness for simplified material; A test of the first 1000 words of English. In M.L. Tickoo (Ed.), Simplification; Theory and Application (pp.193‐203). RELC Anthology Series, 31.

Schmitt, N Schmitt, D. & Clampham, C. (2001). Developing and exploring the behavior of two new versions of the Vocabulary Size Test. Language Testing, 18, 55‐88.

West, M (1953). A general service list of English words. London: Longman, Green & Co.


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