インターネット時代のNewsweek、Timeの読み方
2006年10月31日
2006年10月31日
![]() 「英語教育」2006年11月号(大修館) → 目次はこちら → 定期購読はこちら From "The English Teachers' Magazine" November 2006 Vol. 55 No. 10 (Taishukan) eigonosuburi.com 主宰 NY 市郊外在住 浅田浩志 Asada Hiroshi 筆者は、雑誌としては日頃Time, Newsweek, Forbes, Fortune, BusinessWeek, Barron's 等をはじめ、金融関係のニューズレター、インテリア・デザイン、その他趣味関係のものを定期講読している。それに加え、テレビ、ラジオ、インターネット、新聞(Wall Street Journal, Financial Times, Daily News等)からの情報を合わせると、全てを「じっくりと読む・聴く」時間はない。この情報過多の時代、必要な情報を素早く選び出し、吸収するテクニックが必要になる。 数ある雑誌の中でもTimeやNewsweekはバランスのとれた情報源と言えよう。政治、経済、ビジネス、教育、健康、社会問題等、読者一般が興味を持つであろうと思われるトピックを広範囲にカバーしている。文体も、文学的なスタイルでもなく、極端に砕けた表現もなく、平均的な米国人にあわせてある。「米国版」に対して「アジア版」ないしは「国際版」は時には半分以上内容が違うことがあるようだが、これも地域別の読者の関心事に対応しているわけだ。 TimeとNewsweekのどちらを読むのがいいかという議論を聞くことがあるが、優劣は付けがたい。ただ例えば毎年年末になるとテレビのニュースなどでTimeが誰をPerson(s) of the Yearにするかが必ず話題になる。そういう意味ではTimeの方がより一般的かもしれない。ちなみに2005年は、Bill and Melinda GatesとU2のBonoがPerson(s) of the Yearだった。 構えずに楽しんで読むそもそも「雑誌」であるから、自分の興味のある記事を選んで読み、楽しめばいい。気軽に、自分が「欲しい情報」だけに目を通せばそれでいいのだ。逆にもし興味を持てる情報がなければ、その雑誌はそもそも読書の対象外とするべきだろう。以前「Timeをcover to coverで読む」という人がいたが、そういうアプローチは「修行」、「訓練」的で、一般の読者にはあまり意味はないと思う。忙しいときに興味のない記事を無理して読むのは時間の無駄だし、構えてしまって「気合を入れて読む」ようでは長続きしない。英文読解というよりは、どれだけ自分の興味のある情報を取れるかという雑誌本来の使い方をするのがいい。 筆者の奨める読み方は、まず最初にカバーを見た後、ぱらぱらとページをめくり、他にどのような記事があるのかざっと目を通す。目次やそこにある写真等をざっと見る。こうすることによって、世間で話題になっている事、世相を読むキーワード等が潜在的に頭の中に残っていく。そして、読みたい記事から読んでいく。長い記事に抵抗のある人は、短めの記事から読むか、記事の中にある絵、写真、チャート等の説明を読むだけでもいい。それでもっと詳しく知りたい情報があれば本文をじっくり読めばいい。 このようにしてより多くの記事に少しずつでも目を通すほうが、限られた分量の文章を時間をかけて「精読」するよりはよっぽどためになる。大切なことは、自分の苦にならない形で広く浅く雑誌に親しみ、継続することであり、自らにプレッシャーを与えて息切れしないようにすることだ。 時流のキーワードを読み取ると言っても、この手の雑誌に限らずどのメディアでも同じだが、ある程度の知識体系がないと、読んで(あるいは聴いて、見て)も楽しめないのは事実だ。また特に現代のように情報過多で、すぐに情報が古くなり、また常に膨大な新しい情報が生まれていると、少し前の「雑誌や新聞を読むためのキーワード集」といった類の本等はすぐに古くなる。「鶏が先か、卵が先か」の議論ではないが、雑誌を読んで楽しむためには理解するために最低限必要なキーワードを知っている必要があるし、また、そういうキーワードを仕入れるためには、やはりその手の雑誌を日頃から読むことが必要なのだ(ちなみに統計的に使われる頻度の高い表現がキーワードかというと、必ずしもそうではない)。さて、日頃から継続して読むことの意義を、具体的な例を使って考えてみよう。今のビジネスはインターネット抜きには語れないのはご存知の通り。そこでビジネスとインターネットという切り口で、2つの言葉を例に見てみよう。 VoIP (Voice over Internet Protocol):電気通信業界の力関係をくつがえす可能性のある技術であり、極めて重要なキーワードだ。この言葉が最初に Time で使われたのは2003年12月8日。“... voice-over-Internet protocol (VoIP) technology, which allows the transport of voice, data and video over the same network.”「音声、データ、画像情報を同じネットワークを通じて伝達する技術」この当時はまだ消費者にはなじみが薄く、この説明は間違いではないが、一般の人にはあまりピンと来ないだろう。記事を書いている本人も充分にその技術のポテンシャルを理解していなかったのかもしれない。 それに比べ、1年8か月後の2005年8月10日の記事では「インターネットを利用した超格安の電話サービス」と、消費者により解りやすい説明になっている。“... VoIP—short for voice over Internet protocol, the dirt-cheap phone service that lets users make calls via their cable or DSL modems.” 実際は、電話の機能は単に VoIP 技術の応用手段の1つに過ぎず、他にも様々な用途がある。つまり VoIP を「電話サービス」に限るのは厳密には正しくないのだ。しかし、一般の人には「電話」以外の部分は直接関係がないので、それで通用してしまうわけで、「既存の電話会社の存続を脅かすインターネットを使った格安の電話サービス」という解釈で問題ないわけだ。キーワードもこのように徐々に元の意味から変わっていくことがある。 もっとも最近(2006年5月22日)は、単に “... making VoIP (Voice over Internet Protocol)phone calls” とだけして VoIP に関する詳しい説明はしていないことが多い。今となっては既知の言葉という扱いなのだろう。 spyware:この言葉が最初にTimeに出てきたのは2001年だが、以下は2002年10月7日のもの。“Spyware is any kind of program installed in your computer without your consent to gather information about you or your organization. A typical piece of spyware will watch over your shoulder while you browse the Web, record your mouse clicks and broadcast all that information back to another computer (ostensibly for marketing purposes).”「(マーケティングの名目で)利用者の気づかぬうちに、どういうウェブ・サイトで何をしているか一挙手一投足を記録し、その情報を他のコンピューターに送るプログラム」という詳しい説明をこの時点ではしている。まだ一般読者にはなじみが薄かったからだろう。 spywareによる被害(コンピューターのスピードが遅くなる等の問題)も増えてきたこともあり、2年8か月後の2005年5月27日には以下のような説明があった。“Spyware—programs that covertly send information about your Web activities to third parties—is often a big reason a computer is acting sluggish.”「こっそりと貴方のウェブの利用情報を第三者に送るプログラムで、よくコンピューターが遅くなるのはこのせい」と、短く、消費者にピンとくる説明だ。最近では2006年5月8日の記事に使われているが、そこでは意味の説明は全くない。既に読者は知っているという前提なのだ。 このように普段から継続して読むことで、新語が説明付きで紹介され、キーワードとなり、知識体系の一部となり、やがてなじみの言葉(household name)となっていく過程を実感できる。 インターネット版を読む:プリント版よりも先に雑誌の内容を知り、ウェブ・サイトからのみ得られる情報も利用する定期購読者はインターネットで登録(無料)すれば手元にプリント版が届く数日前に電子メールでAhead of TIMEが送られてくる。そしてウェブサイトを通して最新号の内容を読める。またウェブ・サイトでは、週に1回発行の雑誌と違い、リアルタイム(即時)に近く情報がアップデートされているし、ウェブでしか読めない情報もある。その手の記事に関しては、NewsweekはMSNBCと、Timeは同じTime Warnerの傘下であるCNN.comとの連携でニュース・ソースの幅を広げている。 Time.comにはPhoto Galleriesといった視覚に訴えるもの(例えば8月後半に追加された“Candidate Hillary”と題したスライド・ショーは、将来の大統領候補とされているHillary Clinton上院議員の多忙なスケジュールを追った記録写真がある) や、Most E-mailed Storiesのように、今皆がどういう話題を知人・友人と共有しているのかを知るのに便利なものもあり、世相を読むのに使える。 Time.comのQuotes of the Dayには今話題になっている事に関するある人(大抵の場合社会的影響力の大きい人)の発言が選ばれていて、しかもパンチのある、どこかで使えそうな表現が多い。また本人の写真もあるので印象にも残る。 例を挙げてみよう。2006年8月21日のQuotes of the Dayの1つに、Homeland Security Adviser(国土安全保障担当大統領補佐官)のFrances Fragos Townsendが自分の仕事を表現した言葉だ。 “I go to bed worried. I wake up worried.”「寝る時も心配でいろいろと考えてしまうし、起きた時も心配でいろいろと考えてしまう」 いかにプレッシャーの大きい仕事であるかこの短い表現からひしひしと伝わってくる。国の安全を背負っている人とは比べられないとしても、程度の差こそあれ同じような心境になった人はいるだろう。慣用表現ではないし、きわめて簡単な表現だが、何度も口に出してリズム感を味わいたい。 インターネットでアーカイヴを利用するいずれの雑誌も定期購読者は無料でアーカイヴを利用できる。リサーチをする時や、以前読んだ記事を探すのに便利だ。この検索機能があるだけでも、定期購読する価値はあるというもの。Timeであれば1923年以降のカバーと記事に関してキーワード検索ができる。Newsweekは1993年以降の検索ができ、ウェブ独自の記事(web exclusive)も含まれている。Time.comのArchiveは検索の結果も読みやすいし、個々の記事もプリントアウトしやすいフォーマットに直すことができる。授業に使うときにも便利だ。また、検索した記事が載っていた号がどういうカバーだったかを見れるようにview coverのオプションもある。過去に読んだ記事とカバーのイメージは一緒に頭に残っていることが多いので、これは結構便利だ。 インタビュー記事からネイティヴの表現を学ぶ「生きた英語」を学ぶのにはインタビュー記事が最適だ。自分はこういう言い方ができるかどうかと自問しながら読むといい。例えば手元にあったTime(8/21/06号)の“Interview: 10 Questions for Francis Ford Coppola”はたった1ページの記事だが、使えそうな表現が豊富にあった。その中の1つに自著『インパクトのある英語』(研究社)でも紹介したbe hitting one's head against the wall(無駄な努力をしている)もあった。また、慣用表現ではないが、Coppola監督の“Every work of art is unique.”「そもそも芸術作品というものは一つ一つがユニーク(他には無いもの)である」という発言など、丸覚えしてどこかで使えそうだ。口からすらすら出てくるようにしたい。ある程度意識してインタビュー記事を選んで読んでいれば、表現力、聴解力の上達の助けになる。 |
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