リスニング・テストの作り方
2006年9月30日
2006年9月30日
![]() 「英語教育」2006年10月号(大修館) → 目次はこちら → 定期購読はこちら From "The English Teachers' Magazine" October 2006 Vol. 55 No. 8 (Taishukan) 朝尾幸次郎 Asao Kojiro ほんの十数年前まで、音声の録音・編集は大変な作業でした。正確な制御が必要なため、テープレコーダーはオープンリールの専用器を使いました。録音を聞きながら、削除したり、つなぎあわせたりする位置をみつけると、マーカーでテープに印をつけます。重ねあわせたテープをハサミで斜めに切り取り、専用の粘着テープでつなぎあわせます。切り取る位置を誤るととりかえしがつきません。いちばん緊張する作業です。作業場はちょっとしたスタジオのようでした。 パソコンが現れて状況は一変しました。特別な機材なしに、だれもがプロ並の録音・編集ができるようになりました。リスニング・テストはだれでも作れる時代になったのです。 パソコンを使ったリスニング・テスト作成のポイントは《音声編集ソフトによる録音・編集》と《音源のじょうずな利用法》の2点です。紙面で説明しきれない部分の解説を次に用意しておきました。この記事とあわせてご利用ください。 http://www.eng.ritsumei.ac.jp/asao/etm/200610/ 機材とソフトウェアALT などに録音をしてもらう場合にはマイクが必要です。パソコン用のマイクをパソコンショップで買い求めます。千円程度です。 録音・編集のポイントとなるのが音声編集ソフトです。ここではAudacityというフリーソフトを例に解説します。高品質で使いやすく、MP3 というファイル形式を扱える、すぐれたソフトです。ソフトウェアの入手方法、使い方は上の Web ページでごらんください。音声の録音と保存ここではWindowsでの利用を例に解説します。まず、マイクをパソコンのマイク入力コネクターにつなぎます。次に録音レベルを設定します。[スタート]→[コントロールパネル]→[サウンドとオーディオデバイス]と進み[音声]タブから[音声録音]の音量ボタンを押します。《録音コントロール》というウィンドウが開きます。ここでマイクの音量をやや高めに設定しておきます。もし、《録音コントロール》ウィンドウに[マイク]という項目がみつからなければ、[オプション]→[プロパティ]と進んで、[マイク]にチェックを入れると、[マイク]という項目が現れます。次にAudacity(または他の録音・編集ソフト)を起動します。ウィンドウ中央の入力ソースを指定する部分で「マイク」を選びます。●ボタンをクリックすると録音が始まります。マイクに向かって話してみてください。録音されているかどうかは、ウィンドウに現れる音声波形で確認できます。 その際、録音レベルに注意します。次頁の図(省略)のように一番大きな声でも上下の境界にぶつからないようにします。波形が小さいと録音レベルが低いということです。もっと大きく話すか、録音レベルを上げます。録音を停止するには、■ボタンを押します。テープレコーダーと同じ感覚です。 編集の前に音声ファイルを保存します。[ファイル]→[別名で書き出し]と進み、listening.wav のようにファイル名をつけて保存します。ファイル名の最後の「.wav」はつけなくてもかまいません。このwavというのはWindows標準の音声ファイル形式です。この wav 形式はファイルサイズが大きくなるという欠点があります。 音質を落とさずにファイルサイズを小さくするには MP3 形式で保存するのがいいでしょう。[ファイル]→[MP3ファイルの書き出し]を選ぶと MP3 形式で保存できます。MP3 ファイルを扱うには Audacity をインストールしたフォルダ(通常、C:\Program Files\Audacity)に lame _ enc.dll というファイルを置いておきます。この手順は冒頭に紹介したWebページをごらんください。ファイルをCD‐Rに保存し、MP3対応のCDラジカセを使えば、教室でCDラジカセから音声を流すことができます。 録音、編集のポイント(1) 録音するとき、言いまちがえても、最初からやり直さなくてよいまちがったら、そこで2、3秒、時間を置き、まちがった文の冒頭から読み始めます。まちがった部分は後の編集で削除すればよいのです。 (2) 編集機能を徹底利用する 音声ファイルの編集はワープロでテキストを編集するのと同じ操作です。音声を再生しながら、編集する部分をみつけます。音声波形から正確に場所を特定することができます。わかりにくい場合には「ビュー」から「拡大」を選ぶと、細かく見ることができます。波形の上をマウスでなぞり、範囲指定します。あとは編集メニューから「切り取り」「コピー」「ペースト」で作業します。 マイクから録音すると一般に最初と最後に無音の部分ができてしまいます。この部分を範囲指定し、Delete キーを押すか、[編集]から[切り取り]を選んで削除します。同じ文を繰り返して聞かせる場合、あらかじめナレーターに2回読んで録音してもらう必要はありません。必要な音声の範囲をコピーしてペーストすればいいのです。ディクテーションを行ったり、空白部分に表現を書き取らせたりする場合は、あらかじめポーズを入れておくと便利です。完全な無音の部分を作るには範囲指定をしておいて[制作]→[無音]を選びます。録音するときナレーターは全員そろっている必要はありません。吹き込む人の日程があわなくても、別々に録音しておき、あとで編集すればよいのです。日本語のナレーションも別に作っておき、あとから入れれば簡単です。 (3) 元の音声ファイルは別に保存しておく こうしておくと編集の際、誤って一部を削除しても元のファイルから復旧できます。たとえば私は、listening.mp3 というファイルを編集する場合、オリジナルのファイルという意味で listening _ org.mp3 というふうにファイルを別に保存してから作業をしています。 音源の利用音声はマイクから録音する以外に、すでにある音源を利用することもできます。そのひとつは教科書付属の CD、もうひとつはインターネット上に公開されている音声ファイルです。教科書付属のCDを音源として使うには、そのレッスンや会話をパソコンで扱える音声ファイル形式に変換しなければなりません。変換する音声ファイル形式はMP3が便利です。CDの音声・音楽をMP3ファイルに変換するにはApple社が無料で配布している iTunes、Microsoft 社が無料で配布している Windows Media Player(ただし、Ver.10)、あるいはインターネット上に公開されている無料ソフトを使うことができます。 ここではiTunesによる変換方法を紹介します。iPod をお使いの方はたいてい iTunes をインストールしておられることでしょう。iTunes を起動したら、[編集]→[設定]と進み、[詳細]タブから[インポート]タブを開きます。「インポート方法」で「MP3 エンコーダ」を選びます。《OK》をクリックして設定を保存します。「インポート中に曲を再生する」からチェックをはずしておくと高速に変換できます。CD を入れると、内容が表示されます。目的の音源にチェックを入れ、ウィンドウ右上の「インポート」ボタンを押すとMP3への変換が始まります。変換されたファイルは「マイドキュメント」→「マイミュージック」→「iTunes」→「iTunes Music」に保存されています。あとはAudacityを使ってファイルを編集します。 インターネット上には数多くの音源が公開されています。これらの音源は音声ファイルをそのまま取り出せるものと取り出しに工夫が必要なものがあります。たとえば、ESLgold.net には、 "Tell me about your father. What kind of person is he?" "Well, he's very friendly, smart and funny." のようなやさしい英語の会話がMP3ファイルで公開されています。 http://www.eslgold.net/speaking/describing_people.html これらは Click Here for Audio というリンクを右クリックすると、ファイルを直接、保存できます。 工夫が必要なのはストリーミングという方法で公開される音声ファイルです。ストリーミングというのはファイル全体の転送が終わるのを待たずに、受信しながら再生していく方法です。リスニング教材のサイトとしてよく知られた Randall's ESL Cyber Listening Lab で公開されているファイルはすべてこの形式です。 http://www.esl-lab.com/ パソコンでは音声はサウンドボードという装置が処理しており、パソコンのスピーカーから流れる音声はすべてここを経由しています。つまり、サウンドボードを経由する音声を「横取り」して録音に流せばファイルに保存することができるのです。ストリーミングで提供される音源をファイルとして保存するにはこの方法が簡単・確実です。 [スタート]→[コントロールパネル]→[サウンドとオーディオデバイス]と進み、[音声]タブを開き、「音声録音」の「音量」ボタンを押します。「録音コントロール」というウィンドウが開きます。[オプション]→[プロパティ]と進み、「表示するコントロール」を見てください。ここで《Mono Out》《モノラルミキサー》《ステレオ出力》といった項目を探してください。この名前はサウンドボードにより違いがあります。「出力先」と思われる項目にチェックを入れ、[OK]ボタンを押します。これでサウンドボードを経由する音声を録音に流すことができます。Audacity を起動するとウィンドウ中央部に入力ソースを指定するプルダウンメニューが見えます。上で指定した出力先(Audacity から見れば入力先)をメニューから選びます。録音ボタン ●を押し、ブラウザからストリーミングの音声を再生します。Audacity に音声波形が現れ、録音されているのがわかります。リスニング・テストに利用できる音源の一覧は冒頭に紹介したWebページにサイトをまとめています。 インターネット上の音源は著作権に注意して利用しなければなりません。公開されているとはいえ、著作権のあるものです。音源を生徒に再配布したりはできません。ただし、教室のなかで教育目的に利用する場合には合理的な範囲で利用が許されています。あくまでも教室内の教育目的に限定した、節度ある利用を心がけなければなりません。 授業での利用Audacity などの音声録音・編集ソフトはリスニング・テスト作成だけでなく、授業でも意外な威力を発揮します。生徒にマイクに向かって英語を話させてみてください。コンピュータだとすぐに再生して音声を聞くことができます。発音に満足しなければ、[編集]から[録音をアンドゥ]を選んで消去し、もう一度、録音をやり直すことができます。生徒は満足のいくまで繰り返し自分から発音を練習します。生徒一人ひとりの短い発表をCD‐Rに録音すれば、「音声による英語作品集」ができあがります。物語を素材に役を割り当てて録音すれば、ラジオ放送のような朗読劇を作ることができます。 |
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「英語教育」2006年10月号 |
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