娘たちを変えたニューヨークへの旅
2006年7月31日
2006年7月31日
![]() 「英語教育」2006年8月号(大修館) → 目次はこちら → 定期購読はこちら From "The English Teachers' Magazine" August 2006 Vol. 55 No. 5 (Taishukan) タケカワユキヒデ Takekawa Yukihide あれは、6年前の夏休みだった。 僕は、娘を3人連れてニューヨークへ行った。 僕には4人、娘がいるのだが、そのうち長女を除いた、次女、三女、四女を連れての旅行だった。 その時、それぞれが別々の壁にぶつかっていた。 次女は、大学を2年で休学して、写真の専門学校に通い始めて1年目。三女は、小学校4年でインターナショナルスクールへ転校して6年目の中学3年生。四女は、小学校2年にやはり同じ、インターナショナルスクールへ行って6年目の中学1年生。 次女の大学の専攻は、スペイン語。 2年の夏休みに短期留学でスペインを訪れた彼女だったが、帰って来てからは、スペイン語を日本で勉強することの意味を見失っていた。そのことを相談された僕と妻は、気持ちを変えるために、大学を休学して、彼女が興味を持っていた写真の専門学校に通うことを薦めた。 彼女は、毎日、写真の技術を取得するために忙しくしていて、一見、生き生きとしていたのだが、それでも、自分の将来がみえないことには変わりがなかった。 三女はあせっていた。 中3から、海外の大学入学をめざす、受験校的な別のインターナショナルスクールに学校を変えたのだが、英語も勉強も思うようにいかない。 生来の明るさで、とりあえず乗り切っているものの、どうも、全てに自信が持てなかった。 四女は寂しかった。 今まで、ずっと同じ学校に通っていた三女が別の学校に移ってしまい、心の中に穴がポッカリ空いたようだった。何をしていてもイライラしてしまう。 そんな3人を見て心配していた僕は、それぞれに何か、新しい経験が必要だと感じていた。 ニューヨークに連れて行こう。 突然僕はそう思った。 どこまでも途切れない、ニューヨークの摩天楼と、世界中からやって来て、チャンスを狙っているアーティストたちを、見せてやりたいと思った。 ニューヨークには光の部分と闇の部分がある。 ニューヨークの闇の部分は知っていた方がいいが、触れる必要はない。しかし、光の部分は、知っているだけじゃわからない。実際に行って、その人たちと同じ空気を吸わないと、夢に向かって進もうとしている人たちの気持ちはわからない。 僕は、そのエネルギーが、何かの形で娘たちに力を与えてくれると確信していた。 すぐに、ニューヨークに住んでいる音楽仲間に連絡をとった。滞在期間は1週間。それぞれの娘に、限られた時間内でできるだけ多くのことを体験させるよう、セッティングをお願いした。 次女は、ニューヨーク在住の日本人カメラマンに会えることになった。三女と四女はジャズヴォーカルのレッスン。そして、3人一緒にヒップホップのダンスレッスン。さらに、ジャズを聞きに行ったり、ミュージカルを2つ観に行く手配をしてもらった。 僕の思惑はあたった。 嵐のようなニューヨークの旅から帰ってくると、みんな見違えたように生き生きとし始めた。 次女は、その秋に東京女子大の文化人類学3年への編入試験をパスして、学者への道を歩み始め、三女は、自信をもって新しいインターナショナルスクールに通うようになり、四女は、1人で学校に通う元気が出ていた。 今年、大学院2年の次女は、初めて学会で研究を発表をした。三女は、ミュージカルに出演。四女はシンガーソングライターとして虎視眈々とデビューを狙っている。 全て、あのニューヨークの旅のおかげだと思っている。 |
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「英語教育」2006年8月号 |
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